建造物について
建造物は、保存修理を専門にあつかう機関を設置して、技術者・技能者を定数化して事業を実施しています。今日まで指定件数の約7割は根本修理され、今後も継続的に実施する必要があります。また、根本修理を終えた建造物を末永く保存・活用するには、適切な日常管理が重要であり、保護行政の側から指導・助言が不可欠であると考えています。加えて、社会情勢の変化に伴い、熟練技術者の不足や修復材料の確保が大きな問題として新たに浮かびあがり、また、火災や震災に対する備えも重要な課題であり、これら種々の対策の充実を目指して事業を進めています。
美術工芸品について
美術工芸品は、保存修理や防火・防犯、虫害対策等の事業が進められてきましたが、近年は、修理後年数を経て再度の修理を迎える物件が多く、初期に建設された収蔵庫は改修の時期にきているものが少なくありません。虫害対策においても、環境への配慮からガス燻蒸に代わる対策がとられるなど、保存のあり方も新たな段階に入ってきています。一方、活用面では、公開の促進により展覧会への出品等が活発に行われ、保存への影響を考慮したバランスのとれた管理が求められています。
民俗文化財について
民俗文化財は、その中心をなすのは祭礼・年中行事や民俗芸能ですが、近年、民俗技術や民具(有形民俗文化財)の保存にも注意が払われるようになりました。祭礼や民俗芸能についての全県調査の結果を受け、具体的な伝承活動の助けとなる方法を地元とともに探っています。日常生活の急激な変化に伴って変移するものは記録し、伝承すべきものは将来に正しく伝えていく。今後とも保護施策が必要とされる分野です。
史跡・名勝・天然記念物について
史跡・名勝・天然記念物の保存管理については、後世に伝えてゆくための保存管理が必要とされ、環境整備事業が進められています。また、地域の資産として、地域自らがその適切な活用を目指した整備等の要望が増加しています。これに伴って史跡地内等での住宅の増改築以外に、これら整備に伴う現状変更が目立ってきています。
埋蔵文化財の発掘調査について
埋蔵文化財の発掘調査は、各種開発事業に伴い実施している緊急調査が大半を占めますが、それぞれの埋蔵文化財の特質を把握し、確認するため、今後も着実に続けていくべき事業です。
文化財の防犯・防火・防災について
文化財の防犯・防火・防災については、継続的な取組が重要となります。文化財所有者や警察、消防、行政機関等が集まる「文化財防犯・防火・防災関係者連絡会議」により、引き続き関係者の意識向上と連携の強化を進めていきます。