令和4年度の主な工事
隅部の検討
今回の工事は、主に屋根の瓦の葺き替えの予定です。建物を支える柱や梁などは健全な状態であり、修理の必要はないと考えています。ただ、屋根を支える部材(「組物(くみもの)」といいます)のうち、大斗と呼ばれる部材に潰れなどが見られます。これは、五重塔という巨大な建物の重量を長年にわたって支え続けていることによるものと思われます。現在、その部分の修理が必要か、詳細な調査を行っているところです。
修理前調査、記録
調査工事から引き続き、破損状況の調査や実測調査などを行い、実測データの整理や写真記録をとります。
巨大建築物を支えるため、内部のほとんどが構造材で占められています。調査は狭い空間での作業となります。調査は素屋根建設後、引き続きさらに詳しく行っていきます。
修理前写真撮影
修理前の五重塔の姿を記録するため、写真撮影を行います。外部の撮影、内部の撮影、さらに五重塔は約51メートルと大きいため、ドローンによる空撮も行いました(一番上の写真など興福寺全体が写っている写真はドローンで撮影したものです)。
五重塔には初層以外に床はありません。そして暗くて狭いので、内部の撮影では撮影機材を準備するのも大変です。
工事の準備
工事を行う前には各種調査や写真撮影のために、作業環境を整える必要があります。初層以外の階は、通常人が出入りしないため、埃や鳥の糞が大量に積もっている状況でした。そのままでは痕跡調査が行えず、また、修理工事の作業の際の安全上の観点より、埃や鳥の糞の掃除を行いました。600年前の埃や鳥の糞もあるかもしれないと思いながら職員総出で掃除したところ、鳥の糞はおよそ3トンもありました。
高所作業
興福寺五重塔は、約51メートルの高さがあります。修理をする前に、建物の各部分の調査を行っていますが、時には最上層の高欄(塔の各層の周りに作られた手すりのついた床)や、命綱をつけて屋根の上で調査をすることもあります。地上ではそれほど風がない日でも、最上層ではかなり風が強く吹くことがあります。このため、屋根の軒を支える木材(「垂木(たるき)」といいます)が風によって削り取られているような箇所があります(「風蝕(ふうしょく)」といいます)。なお、興福寺は平城京を見下ろす高台にあるため、五重塔の上からは奈良の町の景色が良く見えます。