奈良祭時記

県民だより奈良
2022年12月号

奈良祭時記
【vol.28】
平尾のオンダ
宇陀市大宇陀平尾の水分(みくまり)神社で毎年1月18日の夜に五穀豊穣・子孫繁栄を祈願して行われます。現氏子総代 北浦さんと前氏子総代 奥野さんにお話を伺いました。
平尾のオンダ
撮影:野本暉房
宇陀市水分神社
年の初めに願いを込めて
 オンダは「御田植祭」とも呼ばれる、一年の初めに稲作の過程を模擬的に演じ、その年の豊作を祈る神事です。「平尾のオンダ」は県内約60カ所に伝承されているオンダの中でも特に古い形を残しており、平成4年に奈良県無形民俗文化財に指定されました。また地域には天保15(1844)年に記された現在の台詞とほとんど変わらない詞章(ししょう)(指南書)が伝わっており、江戸時代にはすでに地域の人々によって演じられていたことが分かります。
素朴でユーモアに富んだ行事
 1月18日の午前、地域の人々が神社の境内に特設の舞台をつくり、同日の夜、本殿での神事などを経て本番を迎えます。宇陀川を挟んだ東西の地区の宮講から一人ずつ選ばれる大頭(だいとう)と小頭(しょうとう)、そして小学生5人が務める早乙女(しょとめ)が祭りの主役です。
 「平尾のオンダ」は古風な台詞と所作による農作業の丁寧な描写が特徴です。舞台上で太夫役の大頭が鍬(くわ)を振り抑揚をつけて台詞を語る「鍬初め」からはじまり、苗代づくり・種まき・水入れ・カラスを追い払う仕草などの稲作の所作が行われます。大頭の口上には囃し方と呼ばれる舞台を取り巻く聴衆が合いの手を入れ、神社は和やかな雰囲気に包まれます。
 田植えが終われば、「平尾のオンダ」のもう一つの特徴であるご神体「若宮さん」が登場します。全身にこよりを巻きつけた翁面の人形で、体の具合が悪い部分と同じ箇所のこよりをいただくと患部が治ると伝わっており、こよりを持ち帰る人でにぎわいます。
 最後に鍬を担いだ大頭を先頭に、苗を持ち笠を背負った早乙女・小頭の順に並び、ぐるぐると舞台をまわる「追苗取り」を行って終了します。
伝統の舞

若宮さんのこよりを持ち帰る人々

継承への熱い思い
 少子高齢化の影響で氏子が減少傾向にあるため、今後の継続が大きな課題です。そこで、氏子が着用する衣装を手間のかかる和服から簡易な礼服へ変更する、早乙女役を小学生男子だけでなく女子も演じるなど、さまざまな改革を実施しています。
 オンダは地域に根差し、大切に受け継がれてきた祭りです。先人たちが苦難の中でも守り、つないできた思いは、私たちの手で継承していかなければなりません。今後も、この格式ある伝統を次の世代に伝える活動を続けていきたいと思います。
北浦さん、奥野さん

左から北浦さん、奥野さん

平尾のオンダ
1月18日
水分神社
宇陀市大宇陀平尾
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