空の色や周りの景色が昨日までとは違って「美しい」と思える時ってどんな時でしょうか。 「夕やけを見てもあまりうつくしいと思はなかったけれど、じをおぼえてほんとうにうつくしいと思うようになりました」とは、今から50年前に、四国のある識字(しきじ)学級の生徒さんが書かれた手紙の一節です。 識字学級では、子どもの頃にさまざまな理由で学校に行けず、文字の読み書きを学ぶ機会を失った大人の方が、文字を学ぶために学習を続けておられます。生活情報を得るためにも、また自分の気持ちや考えを伝え、人とつながるためにも、文字はとても大切です。この手紙の中では、道の看板に習った文字を見つけた時、病院の受付で初めて自分で書いた名前を呼んでもらった時などのうれしい気持ちが繰り返し書かれています。そして、手紙の最後は「十年ながいきをしたいと思います」という文で締められています。 一日を終えて、明日の新たな学びへの希望が「夕やけがうつくしい」の言葉からにじみ出てくるように感じます。そして、歳を重ねられた学級生さんの「学びたい」「生きたい」というメッセージに勇気や希望をもらっているような気がして、私は今日も夕焼けを眺めようと思います。
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