奈良県障害のある人及びその家族等に生涯にわたりつながり続ける障害福祉の推進に関する条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 基本的施策(第七条―第十四条)
第三章 その他の措置(第十五条―第十八条)
附則
奈良県では、日本一福祉の進んだ地域を目指し、奈良県人と人及び人と社会がつながり支え合う地域福祉の推進に関する条例(令和四年三月奈良県条例第五十二号)第七条第一項において、県民の多様な地域生活課題の解決に資する仕組みの構築を図るため、包括的な支援体制の整備を促進することとしている。
こうした中、障害のある人が抱える困りごとは、障害の特性や生活環境により異なる上に、ライフステージが移行していく中で様々に変化するため、学校卒業から就職への移行などのつなぎ目で支援が途切れることがあり、再び必要な支援につなげることが難しくなるといった課題がある。
また、障害があるにも関わらず、そのことを本人や身近な人々が気づかないまま生きづらさを抱える人が存在するといった課題や、障害のある人の親亡き後の生活に対する家族等の不安などの課題もある。
このような現状を踏まえ、奈良県人と人及び人と社会がつながり支え合う地域福祉の推進に関する条例における包括的な支援体制を基本として、障害のある人やその家族等に生涯にわたって寄り添い、支援できる体制を充実させること、及び地域における障害のある人に関する理解の促進、生活支援の充実、生活環境の充実等の各分野における障害福祉施策を推進することにより、障害のある人が、地域社会において人々と関わり合いながら、自らの意思に基づいて自分の生き方を決定し、自分らしく豊かな人生を歩むことができる共生社会の実現を目指すものである。
ここに、障害のある人及びその家族等に生涯にわたりつながり続ける障害福祉の推進に関する基本理念を明らかにしてその方向性を示し、障害福祉に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、障害のある人及びその家族等を支援する障害福祉の推進に関し、基本理念を定め、県の責務、市町村及び関係機関等との連携及び協力について明らかにするとともに、障害福祉の推進に関する施策の基本的な事項を定め、その施策を総合的かつ計画的に推進することにより、障害のある人が、自らの選択に基づき、希望する地域生活を送ることができるよう支援体制の充実を図り、もって全ての県民が、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら、安心して幸せに暮らすことができる地域社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
二 社会的障壁 障害のある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
三 家族等 障害のある人の家族及び障害のある人の生活を主として支える者をいう。
四 関係機関等 国その他の関係機関(市町村を除く。)及び障害福祉の推進に関する活動を行う民間の団体その他の関係者をいう。
(基本理念)
第三条 障害福祉の推進は、障害のある人及びその家族等が抱える課題が、障害の特性及び生活環境等により様々に異なること、ライフステージ(就学、就労その他の個人を取り巻く環境に応じて変化するそれぞれの人生の段階をいう。)に応じて変化していくことに鑑み、次に掲げる事項を基本として行わなければならない。
一 障害のある人及びその家族等に対し、生涯にわたって、つながり続けながら、必要な支援を途切れさせないこと。
二 県、市町村及び関係機関等が緊密な連携の下、障害のある人及びその家族等に対し、その抱える課題を包括的に把握して支えること。
三 障害のある人が、自らの意思に基づき、希望する生活を選択し、地域社会の一員として他の人々と関わり合いながら、生涯にわたって安心して幸せに暮らすことができるよう、障害のある人及びその家族等を支えること。
(県の責務)
第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市町村及び関係機関等と連携し、障害福祉の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。
(市町村及び関係機関等との連携及び協力)
第五条 県は、市町村及び関係機関等が障害福祉に関し重要な役割を有していることに鑑み、障害福祉の推進に関する施策を実施するに当たっては、それぞれの適切な役割分担を踏まえ、連携し、及び協力するものとする。
2 県は、障害福祉の推進に関する施策の実施に必要な情報について、収集及び分析に努めるとともに、市町村及び関係機関等に対して、適切に提供するものとする。
(県民及び事業者の役割)
第六条 県民及び事業者は、基本理念にのっとり、障害のある人が希望する地域生活の実現について関心と理解を深め、県、市町村及び関係機関等が実施する障害福祉の推進に協力するよう努めるものとする。
第二章 基本的施策
(包括的かつ継続的な支援体制の充実)
第七条 県は、障害のある人及びその家族等が抱える課題の解決を図るため、障害のある人及びその家族等に対し、生涯にわたってつながり続け、状況の把握、相談、情報の提供、助言その他の支援を包括的かつ継続的に行う体制の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県、市町村及び関係機関等が相互に連携を図りながら協力することにより、障害のある人及びその家族等の地域生活における支援の効果的な推進が図られることに鑑み、これらの者の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、障害のある人及びその家族等に対する支援を包括的かつ継続的に行う人材を育成するため、研修の実施、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。
(障害及び障害のある人に関する理解の促進)
第八条 県は、障害のある人が、地域社会の一員として他の人々と関わり合いながら、希望する地域生活を送ることができるよう、障害及び障害のある人について、県民及び事業者の関心と理解を深めるための知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。
(生活支援の充実)
第九条 県は、障害のある人が自らの選択に基づき、希望する地域生活を送ることができるよう、福祉サービスの充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
(生活環境の充実)
第十条 県は、障害のある人が自らの選択に基づき、希望する住居で生活することができるよう、住宅環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、障害のある人が地域において生活上の不便を受けないよう、移動手段の確保、障害のある人が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
3 県は、障害のある人が地域において安全にかつ安心して生活を営むことができるよう、障害のある人の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、防災及び防犯その他の必要な施策を講ずるものとする。
(保健医療の充実)
第十一条 県は、障害のある人が地域において安心して生活することができるよう、医療提供体制の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、障害を早期に発見し、早期に治療又は療育を受けることができるよう、必要な施策を講ずるものとする。
(教育の充実)
第十二条 県は、障害のある人が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、教育環境を整備するとともに、共生社会の実現に向けたインクルーシブ教育(障害のある人とない人がともに学ぶ仕組みをいう。)の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
(就労の促進)
第十三条 県は、障害のある人が希望と適性に応じて職業を選択し、自らの能力を発揮して、安心して働き続けることができるよう、就労の機会の創出、職場への定着の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、障害者就労施設(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号。以下「障害者総合支援法」という。)に基づく就労継続支援その他就労関係の事業を実施する施設をいう。)において、就労する障害のある人の地域生活を支えるため、当該施設からの物品及び役務の調達の推進その他工賃の水準を高めるための施策を講ずるものとする。
(社会参加の促進)
第十四条 県は、障害のある人が地域においてスポーツ活動、文化活動、余暇活動等を充実させることができるよう、社会参加の機会の創出その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、障害のある人が情報の取得、意思の表示及び意思の疎通を円滑に行うことができるよう、障害のある人とない人の意思疎通の支援を行う者の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。
第三章 その他の措置
(障害福祉関連施設の活用の促進)
第十五条 県は、奈良県障害者総合支援センターその他の障害福祉に関連する県の施設を前章に定める施策を推進する拠点として活用し、効果的な運営を図るものとする。(奈良県障害者計画に定める事項)
第十六条 知事は、この条例の趣旨を踏まえ、障害者計画(障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第二項により規定する都道府県障害者計画、障害者総合支援法第八十九条第一項により規定する都道府県障害福祉計画及び児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十三条の二十二第一項により規定する都道府県障害児福祉計画をいう。以下同じ。)において、前章に定める施策に関する事項であって、当該障害者計画に必要な事項を定めるものとする。
2 知事は、障害者計画を定めたときは、これを公表しなければならない。
3 前項の規定は、障害者計画の変更に準用する。
(実施状況の公表)
第十七条 知事は、毎年度一回、障害者計画に基づき県が講じた施策の実施状況をとりまとめ、公表するものとする。
(財政上の措置)
第十八条 県は、基本理念に基づき障害福祉の推進に関する施策を実施するため、効果的かつ効率的に財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
この条例は、令和五年四月一日から施行する。