条例制定の背景
奈良県は、優れた風土や景観が受け継がれており、高度経済成長時代には、これを守りつつ、主に大阪府のベッドタウンとして、住宅地の整備を中心に土地政策が展開されてきました。しかし、人口減少や高齢化が進行する中で、空き家や耕作放棄地などの管理不全土地が増加していることや、本県の持続的発展に向けて、高い効用の発揮が見込まれる土地の利用が低水準に留まっていることなど土地に関する新たな課題が顕在化しており、その対応が強く求められています。
我が国においては、土地が公共の利害に関係する特性を有しているにも関わらず、公共の利益のために土地を用いる意識が希薄化し、専ら土地の私有財産としての側面が強く意識されている状況にあります。また、現在の土地に関する法制度の多くは人口増加と経済成長が両立した時代に整備された規制を基調としたものであり、人口減少社会に移行した地方の実情に即したものとなっていません。
このような状況に対処するためには、本県の実情に即した土地の管理と利用のあり方について県民が理解し、土地所有者等その他の土地の管理と利用に関係するすべての者がそれぞれの責務を果たすとともに、相互の協力の下、各般の取り組みを進め、本県の優れた風土及び景観を維持し、及び向上させつつ、脱ベッドタウンを図り、経済の自立と地域の持続的な発展を実現していくことが必要です。
そのため、土地の適正な管理、合理的な利用及びより効果的な利用の県全域への浸透を促し、地域経済の持続的な発展及び県民が安心して快適に暮らすことができる地域社会の実現を図るため、「土地の適正な管理、合理的な利用及びより効果的な利用により地域経済の発展及び生活の向上を図る条例」を制定しました。
■土地の適正な管理、合理的な利用及びより効果的な利用により地域経済の発展及び生活の向上を図る条例
公布日:令和5年3月27日
施行日:令和5年4月1日
条例本文(pdf 276KB)
条例の概要
目的
奈良県において実現すべき土地の適正な管理、合理的な利用及びより効果的な利用の県全域への浸透を促し、地域経済の持続的な発展と県民が安心して快適に暮らすことができる地域社会の実現を図ります。
あるべき土地の管理と利用のすがた
本県の優れた風土と景観を維持向上するとともに、経済的自立の推進を図り、地域の持続的な発展に資するよう、実現すべき土地の管理と利用に関する3つの基本理念を定めました。
1.土地の適正な管理
周辺の住民の生命、身体、財産への危害の発生や周辺地域の生活環境等への悪影響の発生が防止されていること
2.土地の合理的な利用
地域の価値の維持及び向上、地域経済の持続的な発展や県民が安心して快適に暮らすことができる地域社会の実現に
資するよう、土地の所在する地域の諸条件に応じて、土地の効用が持続的に発揮されていること
3.土地のより効果的な利用
土地のより高い効用の発揮が見込まれる場合に、若者の雇用の創出、にぎわいの創出等を通じて地域の持続的な発展を
実現するため、土地所有者等及び近隣住民等の協力の下、土地の効用が更に発揮されていること
土地所有者等の責務
土地の管理及び利用における土地所有者等の責務を明確化しました。
・周辺住民の生命、身体及び財産への危害の発生や周辺地域の生活環境等への悪影響の発生を防止しなければならない。
・所有する土地に関する登記手続その他の権利関係及び所有権の境界の明確化に努めなければならない。
・地域の価値を維持・向上させるため、土地の効用を持続的に発揮するよう努めなければならない。
・県及び市町村が実施する土地の適正な管理等を実現するための施策に協力するよう努める。
土地の管理と利用に関する基本理念等を実現するための施策
あるべき土地の管理と利用のすがたを実現するために、今後進めていく施策を定めました。
1.「適正な管理」を確保するための施策
・土地所有者等が土地を適正に管理するため、管理水準について周知
・相談体制及び支援体制の整備 等
2.「合理的な利用」を拡大するための施策
・土地の区分に応じた生産性の向上に資する各種施策を推進 等
3.「より効果的な利用」を推進するための施策
・関係者の協力のもと「土地利用等地域計画」を策定し実施する仕組みの構築 等
4.各施策を支える取組
・土地に関する情報の収集、発信
・県民等の理解の増進
・人材の確保、育成
・施策の効果検証 等