令和5年6月定例県議会 知事の県政に関する所信と提出議案説明要旨(令和5年6月16日)

知事の県政に関する所信

 今回提案しております議案の説明に入る前に、知事就任後初めての定例県議会でありますので、県政に取り組む私の基本的な考え方を申し上げたいと思います。

 私は、去る4月の知事選挙におきまして、より良い奈良を創るため、県政の変革を訴え、多くの県民の皆さまからご支持をいただきました。この県民の皆さまからの付託に一つ一つ答えを出していくことが、私に課せられた使命であります。全力を尽くしてまいります。

 奈良県には世界に誇る自然、歴史文化があります。そして、伝統とも結びついた、魅力あふれる食と農があります。また、奈良県は人材の宝庫です。

 しかし、こうした奈良県の素晴らしい可能性は、残念ながら、まだ十分には活かされておりません。奈良県のもつ限りない可能性を最大限に引き出し、素晴らしいポテンシャルに見合う、誇りある奈良県にしていかなければなりません。そのために、戦後初めての民間出身の公選知事として、民間の知恵と力を取り込みながら、県民にとって当たり前の感覚を大切に、県政を大きく変えてまいります。

徹底した行財政改革

 まずは、徹底した行財政改革に取り組みます。

 ハード整備中心の大型公共事業に頼っていては、この地域の本当の可能性を引き出すことはできません。むしろ将来に大きな負担を残すことにもなりかねません。今こそ、県民目線で一度立ち止まり、見直すことが必要です。知事就任以来、このことを最優先に、令和5年度予算の執行について慎重に検討を行い、議員各位や関係市町村にご説明申し上げたうえ、先般、結果を公表いたしました。予算額で約70億円、総事業費ベースで約4,730億円の見直しです。引き続き、議員各位をはじめ関係者への真摯な説明に努めつつ、県民目線に立った予算の使い方の見直しを徹底して行い、県の施策や事務事業の再構築に取り組んでまいります。

新しい、誇りある奈良県をつくるための「三つの責任」

 その上で、新しい、誇りある奈良県をつくるため、私は、特に以下の三つの責任を果たしてまいります。

 第一は、県民や事業者の安心と暮らしへの責任です。

 まずは、足下の物価高騰対策です。歯止めのかからない物価高騰に負けない県民や事業者の所得向上、生活や経営の安定等が図られるよう、国の交付金を積極的に活用して、強力な支援策を実施します。

 福祉では、支援が未だ行き届かない分野への対応を検討します。ヤングケアラー、不妊治療、発達障害の子どもへの支援の強化に向けた取組に早急に着手します。高齢者や障害者の方々が安心して、誇り高く、生き生きと暮らしていけるよう、民間で取組を展開されている方々との連携を強化して、施策を展開します。

 県立系病院の整備・拡充を引き続き進めるとともに、システム設備の規模の効率化や病院間の情報連携など、県民の皆さまの安心につながる持続可能な医療提供体制の確保を目指します。

 県民の生命・財産を守るため、線状降水帯による大雨等に備え、治水対策や土砂災害対策を推進します。また、身近な生活道路の安全・安心の確保も市町村と協力して進めてまいります。

 第二は、奈良県の子ども、若者の未来への責任です。

 経済的な理由で子どもの健康が損なわれることがあってはなりません。子ども医療費助成の拡充や、ひとり親家庭等の方がお悩みごとや困りごとをスマホで入力すれば、支援の手続きにつながる子育て支援アプリの構築など、子育て支援の充実と利用者目線に立った施策に取り組みます。

 保育・教育は奈良県の未来への投資です。

 すでに無償化されている3歳から5歳児の保育・幼児教育に加え、0歳から2歳児についても、保護者の負担の軽減に努めます。また、実態調査の結果も踏まえ、有識者の意見も聞きながら、保育士の処遇改善に向けた思い切った措置を検討します。

 教育については、年度内を目途に、高校授業料の無償化の制度設計を検討します。同時に、疲弊する教育現場を改善するため、公立小・中・高等学校の教員の業務のあり方を整理した上で、サポートスタッフの配置等を検討します。

 第三は、豊かで活力ある奈良県を創る責任です。

 奈良県は、未だ、十分な経済・産業の発展を実現できておりません。社会や経済の構造が大きく変化する中、県の施策がこれまでの延長線上にあっては、こうした状況からの脱却を望むべくもありません。工業、商業、観光、農林業等の各分野で、これまでにない新しい取組が必要です。事業者の意見や要望をきめ細かに聴き取り、他府県の先進的な取組も参考にして、奈良県の弱点を補い、強みを活かす斬新な政策を展開します。

 大阪など都市部の企業の成長意欲を奈良と結びつけ、活力ある企業を県内に誘致します。産学官の連携を県が橋渡しし、足らざるところを補い、伴走することで、県内に革新的な企業を育てるシステムを構築します。これにより、県内での新規産業や新興企業の創出、県内企業の新たな事業展開を強力に支援します。 

 2025年大阪・関西万博は、世界的に関西が注目される絶好の機会です。県庁においても万全の体制を構築しつつ、大阪府等との連携、奈良県内への旅行を検討されている方が、興味・関心のあるキーワードを入力するだけでおすすめの奈良旅のプランが表示されるアプリの開発により、国内外の多くの観光客を奈良に誘い、北部・中部のみならず、南部・東部地域をはじめとする奥深い奈良への誘客を図ります。また、観光地としての魅力向上に向けた取組を抜本的に強化すると共に、より効果的な広報、宣伝を行っていくため、庁内横断的な体制を構築し、民間の知恵とアイデアを取り込みながら、新たな戦略を策定します。

これまで述べた取組をしっかり進めるために

 こうした関西圏と連携した取組を進めるにあたり、関西広域連合は大きな意義があると考えます。現在、奈良県は一部の分野に限定して加入していますが、その他にも広域で取り組んだ方が効率的な分野が多いと考えられます。関西広域連合への全面加入を目指して、所要の手続きを進めてまいります。

 また、企業誘致や観光振興を見据え、県発展の基盤となる道路をより良くするため、県管理道路の計画的な整備はもとより、京奈和自動車道の早期全線開通を国に働きかけてまいります。

 これらの取組をしっかりと進め、県民の皆さまの幸福の増進、奈良県の発展を実現するには、県庁という職場が、健康を基本的価値とし、自由闊達で風通しが良く、創造的で生産的な環境でなければなりません。しかし、これまでの県庁は、過労自殺事案が発生し、メンタルヘルス不調による長期病休者の割合が全国トップクラスであり、中途退職者の割合が高く、採用試験の倍率が顕著に低いという状況です。こうした状況を抜本的に改善するため、先般、庁内に全部局長等をメンバーとする「県庁の働き方・職場環境改革推進会議」を設置しました。県庁の職員が健康でいきいきと職務に従事することが、県民の皆さまの幸福や奈良県の発展につながることは明らかです。働き方や職場環境の改善に向けた改革にしっかりと取り組んでまいります。

新たな道筋を創り上げる

 ただいま、県政に取り組む私の基本的な考えを申し上げました。県政の大きな変革にあたりましては、ときには、ご不安や戸惑いもあるかと存じますので、県政運営にあたり、引き続き、オープンに、庁内外における対話と議論を大切にしていきたいと思います。ただし、現下の奈良県の状況と本来この地域が持つ可能性に鑑みれば、これまでの政策や制度に徒に固執するのではなく、多少の混乱はあっても、新たな道筋を創り上げていくことが大切であると考えます。議員各位はじめ県民の皆さまのご理解とご協力をいただき、早急に着実に遂行していきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

提出議案説明要旨

  次に、今回提案している議案について、その概要をご説明いたします。

 まず、議第54号は、令和5年度の一般会計補正予算案です。

 今回の補正予算案においては、物価高騰への対応や子ども・子育て支援など県民の生活と事業者を支援するとともに、安心・安全の確保等に重点的に取り組むため、合わせて148億1千7百万円余を追加計上いたしました。

 以下その主なものについて、ご説明いたします。

 まずは、物価・エネルギー価格高騰対策です。

 国の交付金を活用し、従業員の賃金を引き上げた中小企業等に対し給付金を支給して賃上げを後押しすることや、デジタル地域通貨による県内消費の喚起を行うとともに、エネルギー・食料品価格等の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対して引き続き支援を行います。また、県有施設において電力調達の適正化を図るため、再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入等を一体的に進めてまいります。

 次に、子ども・子育て支援等の拡充については、食費等の高騰に直面し、影響を特に受ける低所得の子育て世帯に対し、生活支援特別給付金の支給を行うほか、子ども医療費助成について、市町村と連携し、所得制限の撤廃や対象年齢の拡充を行います。このほか、不妊治療の支援制度のあり方についての検討、発達障害者の支援体制の検討、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員等を行います。

 また、新型コロナウイルス感染症は、5月8日から感染症の法的位置づけが2類から5類に引き下げられましたが、重症者、死亡者を減らすことを最大目標として、県民の皆様や医療従事者等に混乱が生じないよう医療提供体制の確保にしっかりと対応してまいります。そのうえで、新型コロナウイルス感染症患者の医療費の公費負担、介護サービス事業所等に対するサービス継続のための支援や、感染症の発生動向の定点観測などを実施してまいります。

 公共事業については、国庫補助金等の交付見込みなどを踏まえつつ、新規箇所等について、所要額を計上し、防災・減災対策を加速してまいります。

 このほか、県立大学の施設整備を進めるとともに、未利用県有資産の有効活用にも努めてまいります。

 以上が今回の一般会計補正予算案の概要です。

 次に、議第55号から議第60号は、条例の改正等についての議案です。

 議第55号は、新型コロナウイルス感染症に係る防疫作業に従事する職員の特殊勤務手当を廃止する改正、議第56号は、地方税法の改正に伴い、自動車税の環境性能割の税率区分を見直す等の改正、議第57号は、畜舎特例法施行規則の改正に伴い、畜産業用車庫等について、畜舎等の敷地に関する安全上必要な制限の付加を追加する改正、議第58号は、道路交通法の改正に伴い、特定小型原動機付自転車の運転による交通の危険を防止するための講習手数料を追加する改正、議第59号は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に係る信号機等に関する基準を定める規則の改正に伴い、歩行者用青信号に従って道路を横断することができるものに特定小型原動機付自転車を追加する改正、議第60号は、今後、行政全般にわたり行財政改革を進めていくに当たり、組織の長たる知事としての覚悟と姿勢を示すため知事の退職手当を支給しないことにするため、新たに条例を制定するものです。

 議第61号は、本年度の県営土地改良事業等に対する市町村負担金の徴収、議第62号から議第64号は、請負契約の締結及び変更についての議案、議第65号は、県立高等学校及び特別支援学校の教育用機器の取得についての議案です。

 次に、報第1号から報第4号は、令和4年度一般会計、中央卸売市場事業費特別会計、水道用水供給事業費特別会計及び流域下水道事業費特別会計の予算繰越計算書の報告です。

 報第5号から報第16号は、公益財団法人奈良県人権センターなど県が出資している12の公社等の経営状況の報告です。

 報第17号から報第19号は、「奈良県障害者計画」に基づく手話の普及等に必要な施策などの実施状況について報告するものです。

 報第20号は、地方税法の改正に伴う奈良県税条例の改正などについて、報第21号は、関係法令の改正に伴い所要の規定整備を行うための条例の改正などについての専決処分の報告です。

 このほか、令和4年度議案、報第36号は、県債発行額の確定に伴う予算との過不足を調整するための一般会計補正予算についての専決処分の報告です。

 以上が今回提出した議案の概要です。

 どうぞ慎重にご審議のうえ、よろしくご議決またはご承認いただきますよう、お願いいたします。