奈良盆地では、「野神」は農業の守護神と考えられており、榎(えのき)などの大木のある塚に祀られてきました。県内には現在約30カ所の野神行事がありますが、「石見のノガミサン」はその一つであり、毎年5月5日に雨乞いと五穀豊穣を祈願し、一年間の無病息災を願って行われています。また、端午の節句の行事なので男子の通過儀礼の側面もあるとされています。 石見の中心部から南東の方角に池があり、その近くの田んぼの端に「ノガミサンの塚」があります。塚はほぼ方形でこんもりとした森となっており、その中央に覆屋付きの祠(ほこら)が南向きに据えられています。
行事は15歳の男子(オヤ)と14歳の男子(コ)が中心となって行い、オヤの指揮のもとで進められます。 行事前日の5月4日に、氏神の鏡作神社の境内で蛇(じゃ)を作ります。蛇は稲わらで芯を作り、杉葉を芯に挿して蛇体らしく見せ、大きく開かせた口には赤布で丸く作った玉をくわえさせたもので、長さは3mにも及びます。「野神」の御神体は「ミーサン」と言われており、水をつかさどる巳(蛇)さんとされています。 5月5日には、朝6時頃からオヤとコ、その他関係者がはしごの上に蛇を乗せて、神社から「ノガミサンの塚」まで担いでいきます。現在は塚までの道中も慎ましいものですが、かつては勇ましい掛け声と共に、暴れながら担いでいました。塚に到着後、蛇の頭を東向きに祠の前に置き、灯明(とうみょう)をあげ、小豆餅や神酒、山海の幸などを供えて、一連の行事が終了します。 かつては村の各戸から集めた寄付金のお返しとして、行事後に一時間ほどかけ、子どもたちが準備した餅を村中に配っていました。現在は寄付金を集めていないため餅の配布は行わず、みんなで公民館に集まり、たけのこご飯を食べながら談笑します。
以前は10人を超える子どもが行事に参加していましたが、少子化の影響で年々参加者が減ってきています。そこで、昔は旧村地域のみで行事を行っていましたが、今は旧村以外を含めた自治体全体の行事として、女子や大人たちも一緒に行っています。また、一人でも多くの子どもに参加してもらうため、自治会の全ての班に回覧板を回して参加者を募り、当日参加してくれた子どもたちにお菓子を配るなど、行事を楽しんでもらえるような工夫も凝らしています。 一時は大人だけで行っていたこともありましたが、「ノガミサン」は子どもが参加してこその行事です。これからも、より多くの子どもたちに参加してもらうべく、地域の皆さんと協力しながら活動を続けていきます。
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