意見書第4号
防災・減災、国土強靱化対策の継続と拡充を求める意見書
元日に発生した令和6年能登半島地震は最大震度7を観測し各地に甚大な被害をもたらした。
この地震により尊い人命と多くの家屋が失われたが、救援救助における初動において、道路が寸断されたことにより半島地域という地理的な事情もあり、迅速な復旧作業や支援物資の輸送が必要であるにもかかわらず、長期間にわたり被災者が孤立し不自由な生活を余儀なくされた。
近い将来、高い確率で南海トラフ地震が発生すると予測されている中、奈良県においても他人事ではなく、南海トラフ地震など大規模自然災害が発生すれば、能登地方と同様に県南部地域等では土砂の崩落等による道路をはじめとするライフラインの寸断によって救援救助活動が長期化することが心配されている。加えて、本県平野部には奈良盆地東縁断層帯等が存在し、大地震発生に伴う被害も心配されている。
また、令和5年12月に吉野郡下北山村の国道169号において、2名が死傷する斜面崩壊が発生し長期に渡って通行止めとなる等、南部・東部地域を中心に、依然として災害に脆弱な道路が多数存在し、頻繁に通行規制を実施せざるを得ない状況にある。
現在、令和7年度までを実施期間とする防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策により、災害リスクや地域の状況等に応じてハード対策とソフト対策の両面から着実に実施してきたところであるが、本県においては、対策が必要とされる箇所は今なお多数存在するため、引き続き継続的に防災・減災、国土強靭化対策を効果的かつ集中的に取り組んでいかなければならない。
加えて、地方においては、地域住民の安全・安心を確保し国土強靱化対策を担う建設業等の体制整備も必要不可欠である。
よって、国におかれては、次の事項について、措置されるよう強く要望する。
一 防災・減災、国土強靭化5か年加速化対策期間が終わった後も、昨今の甚大な被害をもたらす地震や豪雨災害等の状況
を踏まえ、継続的かつ集中的に防災・減災、国土強靱化の取組を進めるため、必要な事業規模を十分確保した国土強靱化
実施中期計画を令和6年内の早期に策定すること。
二 道路、電気、通信、上下水道等のライフラインの寸断等能登半島地震による甚大な被害に鑑み、国土強靱化実施中期
計画の策定にあたっては、国土強靱化の対象事業を拡大するとともに、さらなる耐震化の推進や災害時における代替路線
の整備を計画的かつ加速して行うこと。また、資材価格の高騰及び賃金水準の上昇も踏まえ、5か年加速化対策を上回る
予算の確保等、対策の抜本的強化を図ること。なお、その配分に当たっては、社会資本整備の遅れがみられる地域に十分
配慮すること。
三 令和6年度末に期限を迎える緊急浚渫推進事業債、令和7年度末に期限を迎える緊急防災・減災事業債、緊急自然災害
防止対策事業債については、延長するとともに、地方の実情に沿った、より活用しやすい地方債制度にする等、地方財政
措置を拡充すること。
四 建設業における労働環境の改善を進め、人材の確保及び育成並びに次世代への技術力の継承に向けた環境整備に積極的
に取り組むこと。
五 社会資本の適切な整備及び管理に加え、激甚化・頻発化する大規模自然災害に即応するため、国の地方整備局を含め、
現場に必要な人員の確保並びに体制の維持及び充実を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年7月3日
奈良県議会議長 中野 雅史
衆議院議長 殿
参議院議長 殿
内閣総理大臣 殿
内閣官房長官 殿
総務大臣 殿
財務大臣 殿
国土交通大臣 殿
国土強靱化担当大臣 殿
内閣府特命担当大臣(防災) 殿
防災・減災、国土強靱化対策の継続と拡充を求める意見書