意見書第9号
女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求める意見書
国連で1979年に採択された女性差別撤廃条約は、ジェンダー平等を実現するための最も重要な国際基準であり、日本は1985年に批准している。その後、女性差別撤廃条約の実効性を担保するために、付属の条約として1999年に国連で採択されたのが「選択議定書」である。選択議定書を批准すれば、条約上の権利を侵害され、性差別を受けたにもかかわらず国内で救済されなかった人が、国連の女性差別撤廃委員会に「個人通報」することが可能になる。通報をうけた委員会は、それが条約上の違反に当たると認定すれば当事国に対して見解を出し、勧告することができる。このことは、法改正や司法の判断への影響を通じて、女性差別撤廃条約の内容が確実に、私たちの暮らしに届く契機になる。
しかし、現在、女性差別撤廃条約の締約国189か国中115か国が選択議定書を批准している中で、日本はまだ批准していない。
国は、第5次男女共同参画基本法において「女子差別撤廃条約の選択議定書については、諸課題の整理を含め、早期締結について真剣な検討を進める」としているが、すでに20年余り「検討」以上の進展がなく、このままでは日本のジェンダー不平等は改善されない。
こうした中、各国の男女間格差を示すジェンダー・ギャップ指数について、初めて公表された2006年以来、日本は0.65前後で推移しており、完全な平等を示す1.0に向かう傾向が全く見られない。当時80位だった世界ランクは下がり続け、2023年には146か国中125位で過去最低となった。このことは、この20年近く、男女の格差をなくすための有効な策が講じられなかったことを示している。
女性差別撤廃条約選択議定書の批准は、この現状を変え、女性の権利を国際基準にする重要な第一歩である。女性差別撤廃委員会は、これまで日本政府に対して選択議定書の批准を繰り返し求めてきた。
女性差別撤廃条約の締約国は、自国の条約実施状況を報告する義務があるが、今年10月には、日本政府の報告に対して8年ぶりに女性差別撤廃委員会の審議が行われる。日本が「ジェンダー平等後進国」である現状に鑑み、これを契機として、この審議までに選択議定書の批准を実現すべきである。
よって、国会及び政府においては、女性差別撤廃条約選択議定書を速やかに批准するよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年7月3日
奈良県議会議長 中野 雅史
衆議院議長 殿
参議院議長 殿
内閣総理大臣 殿
内閣官房長官 殿
総務大臣 殿
法務大臣 殿
外務大臣 殿
女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求める意見書