2024年9月号
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vol.51
美しく質の高い吉野桧(ひのき)で長く愛される椅子(いす)を
株式会社維鶴木工
代表取締役
藤川 拓馬(ふじかわたくま)さん
吉野桧に導かれて
父が大工で物作りの仕事に就きたいと思い、木工を手掛ける大阪の企業に就職しました。独立を考えていたころ、木に囲まれた場所に住みたいと思い、近畿圏内を見て回りました。吉野を訪れた時に見た美しい吉野桧に一目ぼれしました。私は「日本らしい家具をつくる」という目標のために国産の木を使いたいと思っていたので、吉野に素晴らしい桧があることに感動しました。吉野桧は強度と柔軟性を兼ね備えており、木目が詰まっていて美しいことが特徴です。最初は桜井で工房を開きましたが、吉野を訪れるたびに地元の生産者さんが歓迎してくれ、温かい村の雰囲気にもひかれました。皆さんの応援に背中を押され、東吉野村への移住を決意しました。地域の行事にも家族で参加し、すっかりなじんで村での生活を満喫しています。
愛着が湧く自作キット
椅子は「小さな建築」と言われるほど作ることが難しい家具です。動かすことが多く、体を預ける家具なので軽さと強度の両方を備えていなければなりません。また、椅子は日本に明治期以降に入ってきた家具で、「日本らしい椅子」として確立したものがありません。そこで椅子にこだわるようになりました。私たちの夢は愛され続ける椅子を作ることです。名作と言われる椅子は機能的で美しく、価格のバランスも取れています。そんな椅子を模索する中で、日本とよく似た木の文化が根付いている北欧のデザインを取り入れた「Do kit yourself」のスツールにたどり着きました。日本では古来、家具に限らずさまざまな道具を修理して使い続けてきました。椅子も手入れしながら愛用してもらうには、作る過程から知ってもらう必要があると思い、DIYの椅子制作キットにしました。自分自身で椅子を作り、壊れた時も修理することで長く大切に使ってほしいです。
暮らし方から提案を
弊社には現在、私の他に2人の職人がいますが、木工に携わる人を増やしていきたいです。吉野桧の良さを伝えるため、弊社の椅子を広めていくため、次の世代へつなげていくためにも仲間が必要だと考え、会社組織にしました。今後、木工や家具だけでなく、暮らし方も提案していくために林業や宿、レストランなどの事業展開も考えています。
東吉野村には昔ながらの丁寧な日本らしい暮らしが残っており、継承していきたいと感じました。日本らしい暮らしをつないでいくために、せっけん置きやまな板など木を使った日本の道具の生産・販売も手掛け始めました。他にもさまざまなアイデアがあり、プロジェクトを実現するのが楽しみです。
株式会社維鶴木工
所
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東吉野村瀧野507 |
電話
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0746-44-9540 |
URL |
izr.jp |
「森を伝える、人と木を繋ぐ」吉野の木のものづくり、ワークショップや講演なども行っています。