「曽爾の獅子舞」が、この地で舞われるようになったのは今から約300年前のこと。大字長野に伝わる当屋文書に享保3(1718)年「御神楽獅子舞当年乃五穀成就村安全のため(中略)於神前の舞申し候」とあることから、俗説として大字長野が伊勢国で習ってきた伊勢大神楽(いせだいかぐら)を他の地域に伝えたことがはじまりとされています。以来、「曽爾の獅子舞」は、現在奉舞会と称して構成されている長野、今井、伊賀見の三大字がそれぞれ複数の演目を口承のみで受け継いできました。伊勢大神楽の原点に近い形で残されたアクロバティックな舞や所作の美しさ、種類の豊富さなどが評価され、昭和54(1979)年には県の無形民俗文化財に指定されています。
「曽爾の獅子舞」は門僕神社で毎年スポーツの日の前日の日曜日に行われる秋祭りで奉納されます。練習は9月初旬から奉舞会ごとに子どもたちも交えて行われ、現在継承されている長野8演目、今井4演目、伊賀見11演目の所作を、年長者や経験者が一挙手一投足に至るまでマンツーマンで伝授していきます。厳しい練習の成果は、まず、祭り前日の荒神祓(こうじんばら)いで地域の人々に披露。祭り当日は神饌(しんせん)を献上する「スコあげ」の後、神社境内で長野の「獅子踊り」、今井の「参神楽」、伊賀見の「接ぎ獅子」といった「曽爾の獅子舞」を代表する演目を中心にその年の演目を奉納します。神事の後、郷土芸能発表会として獅子舞が披露されます。
現在、少子高齢化によりメンバーが減少していますが、昔から曽爾で暮らす人だけでなく、祭りのために戻ってきてくれる転出者や移住者も含め獅子舞の継承に努めています。昨年の今井奉舞会は移住者が地元の方から教わりながら「参神楽」を披露しました。また近年は男子だけでなく女子の参加も可能になっています。コロナ禍で4年間祭りが中止となったことにより、披露できない演目があったり、獅子舞を見て自然に所作を覚えていた子どもたちにどう伝えていくかなどの課題がありますが、曽爾村郷土芸能を守る会として奉舞会が力を合わせ、伝統を絶やさないよう取り組んでいきます。
曽爾村郷土芸能を守る会 今井奉舞会・髙松和弘さん 伊賀見奉舞会・木治準宝さん 長野奉舞会・植田和寛さん にお話しを伺いました。
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