意見書第12号

意見書第12号

 

       訪問介護事業の基本報酬引き下げを見直し、介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを求める意見書

 

 3年に一度の介護報酬の改定で、訪問介護の基本報酬が4月から引き下げられ、訪問介護事業所の休止・廃止があいつぎ、サービスの空白地域が広がっている。身体介護、生活援助など訪問介護は、とりわけ独居の高齢者をはじめ、要介護者や家族の在宅での生活をささえるうえで欠かせないサービスである。このままでは在宅介護が続けられず「介護崩壊」を招きかねない。

 厚生労働省は引き下げの理由として、訪問介護の利益率が他の介護サービスより高いことをあげているが、これはヘルパーが効率的に訪問できる高齢者の集合住宅併設型や都市部の大手事業所が利益率の「平均値」を引き上げているものであり、実態からかけ離れている。中山間地域においてはサービス対象者が点在して移動時間がかかることから利益率は極めて低い、あるいはマイナスとなっているのが実態である。また、政府は訪問介護の基本報酬を引き下げても、介護職員の処遇改善加算でカバーできるとしているが、すでに加算を受けている事業所は基本報酬引き下げ分で減収となり、その他の加算も算定要件が厳しいものが多く、基本報酬引き下げ分をカバーできない事業所が出ると予想される。

 また、訪問介護は特に人手不足が深刻である。ヘルパーの給与は令和4年度で常勤でも全産業平均を約8万円下回っており、ヘルパーの有効求人倍率は令和4年度で15.5倍と異常な高水準となっているが、ベースアップが確実に実行される保証はなく、他産業に比べて極めて低い給与の改善には、ほど遠い水準である。

 6月5日、衆議院厚生労働委員会は、「介護・障害福祉分野の人材の確保及び定着を促進するとともにサービス提供体制を整備するための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する件」を全会一致で決議した。その決議は自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党、日本共産党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会が共同で提案したものである。

 決議では、今年度の訪問介護の報酬引き下げの影響を速やかに検証し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講じるよう訴え、基本報酬を引き下げられた訪問介護の事業者らの意見も聞くべきと指摘している。

 よって政府においては、訪問介護事業の基本報酬引き下げを見直し、移動時間(あるいは距離)に応じた引き上げを行うとともに、国庫負担割合の引き上げで財源を確保し、訪問介護従事者の大幅な処遇改善ができるよう介護報酬を引き上げる再改定を早期におこなうよう強く求める。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

  令和6年10月8日

                                                     奈良県議会議長 中野 雅史

 

 衆議院議長 殿

 参議院議長 殿

 内閣総理大臣 殿

 内閣官房長官 殿

 財務大臣 殿

 厚生労働大臣 殿

 

  訪問介護事業の基本報酬引き下げを見直し、介護報酬引き上げの再改定を早急に行うことを求める意見書

 

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