奈良のむかしばなし

県民だより奈良
2024年12月号

奈良のむかしばなし
長谷寺の天狗杉
文・山崎しげ子
 「隠国(こもりく)の泊瀬(はつせ)の山は あやにうら麗(ぐわ)し」。初瀬の山は本当に素晴らしい、と『日本書紀』で時の雄略天皇は手放しで褒(ほ)めたたえている。
 その麗しい初瀬山の中腹に長谷寺は建つ。今回は、そんな長谷寺に棲んでいた、悪戯好きの天狗のお話。
*  *  *
 江戸時代、長谷寺の第十四世能化(のうけ)(住職)英岳(えいがく)の、まだ小僧時代のこと。英岳は、夕方になると長い登廊(のぼりろう)に吊るされた多くの燈籠(とうろう)に灯をつけて回り、残った油を自分の行燈(あんどん)に注いでは勉学に励んでいた。
 その登廊の周辺に大杉が茂り、天狗が棲んでいた。天狗は、あろうことか、英岳がつけてまわった登廊の燈籠の灯を消したり、油皿をひっくり返したりと、悪戯ばかり。
 怒った英岳は、「よし、わしが将来、能化となったら、天狗の棲む杉の木を一本残らず伐ってやる」と言い、勉学に励み、やがて能化となった。
 ある時、お寺の建物の修理のため、用材として杉の木を伐ることに。
 木こりが杉の木の最後の一本を伐ろうとしたとき、英岳は「私が能化になれたのも、天狗の悪戯のおかげ」と、一本の杉を天狗の棲みかとして残した。それが今も残る「天狗杉」。
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 長谷寺の長い登廊。399段の石段が下中上の三廊に折れ、その下登廊を登り切った右側に聳(そび)えるのが「天狗杉」。その大きさに圧倒される。
 登廊を登りきると、本堂。ご本尊は約10mの十一面観世音菩薩立像。奈良時代の開山、徳道上人(とくどうしょうにん)の造立。
 この観音様、霊験ことにあらたかと評判となり、平安時代以降、公家、貴族から庶民まで多くの人々から信仰され、今も参拝者は絶えない。ただ、今のお像は室町時代の作。
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 「花の御寺(みてら)」としても有名な長谷寺。冬も趣き深い。冬に咲く赤や薄紅色の牡丹が可憐。雪の日、本堂の舞台からの眺めも格別で、眼下の広大な境内の諸堂が一面、雪に覆われ、白一色。目を上げれば、雪の与喜山の連なりの前に、雪を被った天狗杉が天を衝いてすっくと立つ。まさに冒頭の「あやにうら麗し」の世界に誘い込まれる。
仙女
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桜井市の魅力を隅々まで堪能!
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長谷寺(桜井市初瀬731-1)
アクセス 近鉄大阪線長谷寺駅下車、徒歩15分
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