県政運営の基本方針
本日、令和7年度予算案をはじめ、令和6年度補正予算案等の議案を提出して、県議会のご審議をお願いするに当たり、議員各位をはじめ、県民の皆様のご理解とご協力を賜りたく、所信を申し上げます。
県政に取り組む私の基本的な考えは、奈良県のもつ可能性を最大限に引き出し、県民が暮らしの豊かさを実感できる奈良県にしていくことです。
奈良県には、世界に誇る歴史文化遺産、豊かな自然や景観、大都市近郊ならではの利便性など多くの魅力がありますが、一方で、仕事と子育ての両立のしにくさ、道路等のインフラ整備の遅れといった早急に改善していかなければならない課題も多くあります。
そのため、知事就任以来、徹底した行財政改革に取り組むとともに、「私立高校の授業料の実質無償化」や「保育士の処遇改善」、さらには「ならの道リフレッシュプロジェクト」などの様々な新規事業に取り組み、県民が将来にわたりこの奈良県で幸せに暮らしていける、そんな県づくりの種まきを行ってまいりました。
まいた種が花を咲かせ、実をつけるには、時間が必要ですが、任期である4年間で、できる限り成果を出せるよう、しっかりと取組を加速化させてまいります。
なお、限りある予算や人員で、取組を進めていくため、新年度予算の編成過程においても、既存事業の見直し等の行財政改革に、引き続き取り組んだところです。
このような考え方のもと、編成いたしました新年度予算案は、一般会計総額では5,636億5,700万円、前年度の当初予算に比べて3.6%の増となりました。
また、本県の財政運営の指標としております、交付税措置のない県債残高と県税収入額との比率は2.6倍と、昨年度より改善するなど財政の健全性を維持しています。
この新年度予算案と併せて、国の補正予算を積極的に活用し、令和6年度一般会計補正予算案第6号、127億円余を計上いたしました。
以下、予算案の主な内容につきまして、私が就任にあたって県民のみなさんに約束した「3つの責任」に沿って、新年度重点的に取り組む項目を簡潔にご説明申し上げます。
主要施策
1 県民や事業者の安心と暮らしへの責任
1点目は、県民や事業者の安心と暮らしへの責任です。
まずは県民の命と財産を守るための防災力の強化についてです。
阪神・淡路大震災から三十年の節目を迎え、改めて、日本一災害に強い奈良県を目指し、「奈良県地域防災計画」に基づき、自助・共助の推進や、防災活動体制の整備・充実、自主防犯・防災リーダーの育成等に取り組みます。
また、大規模災害発生時の応急対策強化を図るため、広域防災拠点等を活用した受援体制の検討を行うとともに、五條市の県有地における南部中核拠点の整備を推進いたします。
さらに、消防防災ヘリコプターの更新や近畿圏の緊急消防援助隊も参加する近畿府県合同防災訓練を実施するほか、消防学校移転整備を推進するなど、消防力の向上にも取り組みます。
そのほか、県下全域の土砂災害対策、河川の洪水対策など、防災・減災対策を引き続き推進いたします。
次に、発達障害のある子ども等への支援についてです。発達障害のある子どもやその家族はもとより、グレーゾーンの子どもにも寄り添った早期発見・早期支援を進めてまいります。
このため、発達障害の診断を行う医師の確保・育成を図るとともに、発達障害児支援の質の向上に取り組む市町村への支援や、関係機関のネットワークづくり等に取り組みます。
次に、高齢者にやさしい奈良県づくりについてです。高齢者がいつまでも健康で生きがいを持って地域の中で暮らし続けられるよう、介護予防の実施主体である市町村に対し、先進事例の紹介や個別支援を実施するとともに、市町村が行う要介護認定と介護給付の適正化を支援し、介護保険制度の持続可能性の確保を図ります。
さらに、介護人材の不足に対応するため、事業所が行う介護ロボットやICT機器の導入を支援するほか、外国人材の登用を促進します。
西和地域における重症急性期拠点病院としての役割を担う西和医療センターの移転整備も進めます。令和13年度中の開院に向け、用地調査や設計などに取り組みます。
なお、多額の赤字を抱える県立病院機構に対しては、経営を安定化させるため、県から長期貸付を行うとともに、引き続き、早期の黒字化を目指す県立病院機構の取組を支援します。
2 奈良県の子ども、若者の未来への責任
2点目は奈良県の子ども、若者の未来への責任です。
こどもをまんなかにおき、社会全体で子育てを支援するあたたかい県民性をはぐくむことを目指し、「奈良県こどもまんなか未来戦略」に基づき、こども・子育て施策を総合的に推進いたします。
まず、保育所等の待機児童の解消に向け、不足する保育士を確保するため、引き続き、民間保育所等に勤務する保育士の給与加算に取り組む市町村を支援するなど、保育士の処遇改善に努めます。
また、家族の介護や世話などを日常的に行っているヤングケアラーへの支援として、新たにヤングケアラー・コーディネーターを配置するなど、市町村等関係機関と連携して、早期に発見・把握し、支援につなげる体制の充実を図ります。
女性の就労支援では、年齢や性別に関係なく、誰もが働きやすい社会を推進するため、県内企業、市町村、教育現場のトップに向けたセミナーを行うなど、ジェンダーギャップの解消等に取り組みます。
このほか、若者に向けた結婚や子育て等を学ぶ機会の提供や、高校生の県内企業訪問の実施など、早い時期からライフデザインを考えられるよう、引き続き取り組みます。
次に、不妊治療に対する支援についてです。不妊に悩む夫婦等の経済的・精神的な負担を軽減し、妊娠を望むすべての方が、積極的に治療に取り組むことができるよう、不妊治療費助成を行う市町村を支援いたします。
私立高校授業料の実質無償化では、本県で育つ子どもたちが、それぞれの家庭の経済的な事情を気にすることなく、自らが希望する進路を選択できるよう、年収の目安が910万円未満の世帯に対する授業料等への支援を大幅に引き上げ、実質的な無償化を実施してきました。新年度からは、年収の目安が910万円以上の世帯について、「扶養する23歳未満の子が3人以上の世帯」から「2人以上の世帯」に支援対象を拡大し、さらなる充実を図ってまいります。
次に、子どもたちを支える学校現場の環境改善についてです。「県立高校トイレピッカピカ5か年計画」に基づき、全ての県立髙校におけるトイレの洋式化や乾式化を進めるとともに、熱中症対策として特別教室や体育館における空調設備の整備を進めてまいります。
3 豊かで活力ある奈良県を創る責任
3点目は、豊かで活力ある奈良県を創る責任です。
まずは、脱炭素社会の実現についてです。2050年の脱炭素社会の構築に向け、昨年六月に「奈良県脱炭素・水素社会推進本部」を設置し、全庁一体となって、エネルギー施策、産業施策等を進めていくことにいたしました。さらに、中長期的に取り組む指針として「奈良県脱炭素戦略」を策定し、エネルギーを「つくる」、「ためる」、「かしこくつかう」という温室効果ガス排出削減を図る取組と、森林による二酸化炭素吸収量を増やす取組を、総合的かつ計画的に推進してまいります。
具体的には、今後進展する水素の利活用を視野に入れ、水素製造拠点の整備や工業団地の脱炭素化、小水力発電などのリーディングプロジェクトを推進していくとともに、県民の行動変容を促進するため、各種啓発イベントやセミナーの開催等に取り組みます。
また、引き続き、奈良県フォレスターの市町村への配置を進めるとともに、管理されずに放置された森林の間伐や植栽等による再整備や、県産材の利用促進等を着実に進めてまいります。
次に、本県が有する潜在力に見合った経済成長を実現するため、企業のニーズや課題を起点にこれまで進めてきた「新しい産業政策のパッケージ」をさらに発展させ、「産業政策のパッケージ2025」としてとりまとめました。
企業からは、人材確保難や人手不足に対する切実な声を伺っており、学生と企業をより深く強くつなげる取組に加え、定年後のキャリアチェンジ支援や本県への移住促進施策の一層の強化、さらには外国人材の呼び込みや定着促進など、人材確保の抜本的強化に取り組みます。
また、県内での投資を一層加速させるため、不足する産業用地の確保を進めるとともに、企業や宿泊施設の誘致に向けた支援を行います。
さらに、物流用ドローンなど次世代技術の活用を促進するとともに、奈良県独自のSDGs企業認証制度の運用を開始します。
このほか、顧客情報マネジメントシステムを活用した企業との関係構築や積極的な情報発信、海外展開や事業承継への支援、産学官と連携したスタートアップの創出などに取り組みます。
大和平野中央の県有地活用については、川西町での世界トップレベルのサッカー選手を育成するバルセロナレジデンスアカデミーの誘致や、三宅町における学生寮を中心とした交流拠点「ヤング・イノベーション・レジデンス構想」の推進、田原本町での運転免許センターの整備などに取り組んでまいります。
次に、観光の振興では、奈良県観光の長年の課題である「安い」、「浅い」、「狭い」から脱却し、「産業としての観光」の成長を目指すため、昨年5月に「奈良県観光戦略本部」を設置し、多くの意見をいただきました。今後、観光データの利活用などを進め、民間企業との連携を図ることで、観光の目的地としての一層の魅力の向上に努めてまいります。
具体的には、県内それぞれの地域に焦点を当て、観光資源の掘り起こしや高付加価値化により、観光客の滞在時間を延ばす工夫を行うとともに、観光ガイドなど地域における観光人材の更なる育成に取り組みます。
また、大阪・関西万博を契機に本県への海外からの宿泊誘客を一層促進するため、多くの外国人観光客が利用する旅行予約サイトを活用し、本県の観光資源や宿泊施設の魅力、万博会場から本県へのアクセスの良さなどのプロモーションに取り組みます。
中央卸売市場の再整備では、奈良県民の食の安全・安心を確保する「市場エリア」と、地域の賑わいを創出する「賑わいエリア」を一体的に整備する方針のもと、市場機能の高機能化・効率化を図るため、老朽化が著しい現施設の建て替えなど、先行して「市場エリア」の整備を進めてまいります。
また、なら食と農の魅力創造国際大学校において、フードクリエイティブ学科を卒業後、県内で飲食店を開業または飲食店等に就業した方に対して、授業料の半額を還付する制度を創設することで、県内就業の促進を図ってまいります。
令和8年度の「飛鳥・藤原の宮都」の世界遺産登録に向けては、イコモス現地調査等に適切に対応するとともに、認知度の向上や登録に向けた機運醸成に取り組みます。
また、世界遺産登録後を見据え、来訪者の期待に応えることができるよう、受入環境の充実や説明力の強化など県庁一丸となって「飛鳥・藤原の宮都」の魅力向上に取り組んでまいります。
次に、令和13年に本県で開催する「国民スポーツ大会及び全国障害者スポーツ大会」の準備についてです。
スポーツは、子どもの人間形成に大きな影響を与えるとともに、健康長寿社会の実現や地域の活性化等に寄与するなど、多様な価値を有しています。こうした認識の下、大会後も多くの県民のスポーツ振興拠点となる、新アリーナや県立橿原公苑各施設の整備を推進するとともに、アスリートや指導者の更なる育成に取り組みます。また、市町村スポーツ施設の整備・改修が計画的かつ円滑に進むよう、支援制度を創設いたします。
南部・東部地域の振興にも更に取り組みます。県と市町村が地域課題解決に向けて連携・協働し、地域資源の活用による交流の拡大や、経済の好循環による持続可能な地域づくりを進めてまいります。
具体的には、産官学連携による魅力ある地域づくりを支援するとともに、豊かな自然環境を活かしたアウトドアアクティビティの普及やスポーツ合宿の誘致等を進め、南部・東部地域への誘客を促進します。
また、移住・定住を促進するため、奥大和移住定住交流センター「engawa」を拠点に移住相談や情報発信に取り組んでまいります。
4 3つの責任をしっかり果たすための施策
4点目は、3つの責任をしっかり果たすための施策です。
まずは、道路整備の加速化についてです。
道路は、県民生活や経済活動の基盤となる最も根幹的な社会資本の一つであり、その整備と維持管理は車の両輪と考えています。
このため、本県における道路整備は「奈良県道路整備基本計画」に基づいて進めており、立ち後れた道路整備を加速化するため、土地収用制度の積極的活用や埋蔵文化財調査の加速化、「選択と集中」による工事の加速化を図りつつ、地元から寄せられる小規模な改良要望にも機動的に対応してまいります。
また、利用者への快適な道路空間の提供を目指し、集中的な維持修繕を行う、「ならの道リフレッシュプロジェクト」においては、対象路線を拡充するとともに、市町村と連携しながら、通行に支障となる樹木の伐採等にも取り組んでまいります。
次に、リニア中央新幹線「奈良市附近駅」の早期確定等についてです。これまで空港や新幹線駅がなく、いわゆる「国土軸」から離れていた本県にとって、リニア中央新幹線は、県の新たな発展の基軸になるものです。
令和5年に東海旅客鉄道株式会社が、名古屋・大阪間について、駅位置及びルートを確定するための地質調査を開始し、環境影響評価に着手しました。
県としても、「奈良市附近駅」の位置及びルートが1日も早く確定し、その整備効果が広く県内全域に波及していくよう、東海旅客鉄道株式会社のほか、三重県、大阪府及び国と設置した「リニア中央新幹線三重・奈良・大阪建設促進連携会議」等を通じて、沿線県として着工に向けた準備に取り組んでまいります。
また、本年4月13日に開幕する大阪・関西万博では、次世代へ継承していきたい本県の豊かな自然や歴史、文化を、様々な催事を通じて国内外に発信したいと考えています。
さらに、万博の経済効果を県内全域にもたらすため、民間事業者や県内市町村などと連携し、クラフトフェアの展開やオープンファクトリーを推進するほか、大阪と奈良を結ぶデジタル周遊パス、観光WEBサービス「ならいこ」の活用による誘客の促進に取り組みます。
このほか、引き続き、県庁の働き方・職場環境の改革を進めるとともに、受験者にとって間口の広い職員採用試験や、戦略的なリクルート活動などにより、県庁を支える人材の確保に努めてまいります。
新年度予算案等における主な取組の概要は以上ですが、予算案提出と併せて、予算外議案として50の議案を提出しました。これらは主として、ただ今ご説明申し上げました予算案に関連して、当面必要とする条例の制定及び改正案等であり、個々の説明は省略させていただきます。
このほか、予算案の詳細につきましては、関係部局からの説明と予算概要など別途関係資料によりご承知いただきたいと存じます。
本日、提出いたしました各議案につきまして、議員各位のご賢察とご理解を賜り、よろしくご審議のうえ、ご議決いただきますよう、心からお願い申し上げます。