意見書第11号

危機的状況にある自治体病院の存続に向けた財政支援を求める意見書

 

 自治体病院は、地域の民間医療機関では採算性の観点から担い難い救急、小児、周産期医療等の実施、さらには感染症や災害対応など、地域の医療提供体制の維持に不可欠な役割を果たしている。

 こうした自治体病院の責務を果たすため、多くの自治体は一般会計から多額の拠出金を負担しており、自治体病院は、現在の収支構造では行政の財政負担がなければ持続的な運営はできない。

 しかし、近年の人件費や物価の高騰により、自治体病院の運営に要する費用が大きく膨らむ一方で、現行の診療報酬はこうした実情に十分対応出来ておらず、令和7年9月に総務省が公表した令和6年度決算では、公立病院の8割以上が自治体からの繰出金を入れてもなお、経常収支が赤字となるなど、自治体の財政力を超えて経営環境は大きく悪化している。

 このままの状況が続けば、地域住民の生命や健康、さらには社会の安全・安心を支える公的基盤としての自治体病院の役割を果たしていくことは出来ず、今、まさに周辺市町村も含めた地域の医療提供体制は崩壊の危機に直面している。

 よって政府におかれては、地域の医療体制を守る自治体病院の経営改善を図ることは、国の責任において取り組むべき重要な課題と捉え、以下の事項について早急かつ具体的に対応するよう強く要望する。

 

一 診療報酬については、物価高騰や賃金等の上昇に適切に対応する仕組みを導入すること。

 

一 特に、令和8年度の診療報酬改定については、入院基本料の大幅な引き上げを行うこと。

 

一 自治体病院の経営の現状を考慮し、当面の経営上の危機を回避するためにも、令和8年度の診療報酬改定を待つこと

   なく、人件費や物価高騰など費用増に対応した、緊急的な財政支援を行うこと。

 

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

  令和7年12月15日

                              奈良県議会議長 田中 惟允

 

(提出先) 

 衆議院議長 殿

 参議院議長 殿

 内閣総理大臣 殿

 内閣官房長官 殿

 総務大臣 殿

 財務大臣 殿

 厚生労働大臣 殿

 

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