意見書第18号

意見書第18号

    身近な地域で安心して出産ができる助産所の存続を求める意見書

 2006年6月に成立した改正医療法第19条によって、助産所の開設者が嘱託する医師と病院(または診療所)を定める規定が強化された。改正は、出産の異常時等における母子の安全を確保することが趣旨である。しかし、現実には、産科医師や地域の産科標榜病院・診療所が不足する中、助産所が嘱託する医師や病院を個人で確保することは極めて困難である。問題は、本来機能すべき地域医療体制や周産期医療システムの整備が不十分であるために、妊産婦・新生児の救急時搬送体制が整っていないことにある。このまま法が施行されれば、2008年度以降、助産所は、新たな開業はもとより存続さえ困難になる。
 出産の8割は正常分娩であり、助産師が充分担えることは、日本の母子保健の歴史及び助産師を十分に活用しているオランダ、ニュージーランド、英国などで証明されている。現在、出産は病院や診療所が主流となっているが、助産所は妊産婦に寄り添った出産のみならず、その後の子育て支援を行う等、重要な役割を果たしており、身近な地域において、安心して出産できる助産所を失うことは、女性にとっても社会にとっても大きな損失である。
 よって、国におかれては、全国の助産所が閉鎖の危機に瀕している緊急事態、及び産科医師、助産師、産科標榜病院・診療所、助産所が不足し、「お産難民」が深刻化している現状に鑑み、次の事項について強く要望する。

1 改正「医療法」第19条に基づく同法施行規則第15条の2を再検討すること。
2 参議院厚生労働委員会の附帯決議(2006年6月13日)に基づき、国及び地方自治体が、責任を持って助産所の嘱託医・嘱託医療機関を確保すること。
3 各都道府県の総合周産期母子医療センター、各地域の中核病院や公的医療機関が、助産所や診療所からの緊急搬送を円滑に受け入れられるよう、適宜適切な支援を講ずること。
4 各都道府県における助産師養成枠の増加と、質の高い助産師教育を促進すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成19年10月5日

     奈 良 県 議 会
【提出先】
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣