意見書第1号
農林水産物等の貿易自由化に関する慎重な対応についての意見書
新興国経済の急速な発展に伴い、我が国の経済はその地位を相対的に低下させつつあり、主要貿易国間で高いレベルの経済連携が進む中、韓国をはじめとしたアジア太平洋地域等の主要貿易国との今後の経済連携のあり方が問題となっている。
このような中、政府は、将来に向けての成長・発展基盤を再構築し、「強い経済」を実現するため、環太平洋経済連携協定(TPP)について、「関係国との協議を開始する」と明記した「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定し、今年6月を目途に交渉参加について結論を出すこととしている。
しかし、例外なき関税撤廃による貿易自由化をめざす同協定においては、参加後10年以内のすべての物品の関税撤廃が原則とされている。
とりわけ従事者の高齢化や担い手の減少、耕作放棄地の増加や水産資源の減少、価格の低迷など非常に厳しい状況に置かれている農林水産業にあっては、さらに大きな打撃を受ける強い懸念があることに加え、食料自給率の大幅な低下という食料の安全保障を脅かす重大な事態を招きかねず、国家の根幹にかかわるものである。
よって、国におかれては、同協定の交渉参加の是非を検討するに当たって、次のとおり慎重に対応されるよう強く要望する。
1 すべての産業分野にわたって、交渉参加により生じるメリット、デメリットについて十分に分析し、国会等で慎重に審議するとともに、国民に対しても詳細な情報提供を行い、十分な時間をかけて慎重に検討を進めること。
2 農業の多面的機能への配慮や食料安全保障の観点から、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内の農林水産業の振興などを損なわないよう対応すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成23年3月16日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
外務大臣
農林水産大臣
経済産業大臣