平成23年度 奈良県自然環境保全審議会 議事概要

平成23年度 奈良県自然環境保全審議会 議事概要

 

 

1 日 時    平成24年2月3日(金)午後1時30分~

2 場 所    中小企業会館 4階 大会議室

3 開 会 

自然環境課課長補佐から、委員総数23名中18名出席、奈良県自然環境保全条例第15条第2項の規定
    により審議会は有効に成立していることを報告

 

4 審議会の公開・非公開について

「奈良県自然環境保全審議会の会議の公開等の取扱い」で原則公開と規定されており、審議会の議決とし
       ても、公開することで特に異議なし

 

5 会長選任

   会長              前田 喜四雄 委員

   会長職務代理者    相馬 秀廣   委員

 

6 議事

   (1)部会に属する委員の指名

      会長より各委員の3部会への所属を指名

      会長より会議録署名人として会長職務代理者の相馬委員を指名

 

   (2)報告事項について

        ・自然保護部会決議について

      ・鳥獣部会決議について

      ・温泉部会決議について

         各部会の決議について事務局から報告

  

   以下、主な意見

 

委員)

十津川村では最近ツキノワグマが大変多く出没している。絶滅寸前種ということで学習放獣をするが、増えてきているように思う。山に住む者にしてみると本当に怖いという事情を理解して頂きたい。

 

事務局)

ツキノワグマは個体数が400頭以下になるとほぼ絶滅するといわれているが、奈良県では400頭より多く生息しているという調査結果が出ていないという状況がある。保護管理計画を策定しており、従前は殺処分という選択肢がとれない計画内容だったが、3回目または前回の学習放獣から1年未満にまた捕まった個体は殺処分できると変えている。今まで十数頭捕まえているが2回捕まっているのは1頭のみである。

 

委員)

個体数調査をどのようにしているのか。

 

事務局)

個体数の調査については、一昨年とその10年前に調査している。ヘアトラップ調査と痕跡調査などにより行っている。狩猟者にお願いし、ねぐら、糞や樹木の剥皮などの痕跡情報と目撃情報を得ている。これらにより個体数を推測しているが、マックスが400頭でミニマムが80頭といった精度でしか求められていない。奈良県のクマは紀伊半島の独立した地域個体群ということで、京都や兵庫等のクマとは別の個体群で行き来はないとされている。

 

委員)

GPSをつけて行動範囲を推定するといったことも紀伊半島では行われているのか。

 

事務局)

捕獲個体については全頭マイクロチップと電波発信機イヤータックを装着している。ただそれは追跡するという目的の発信機ではなく、地元の方にご了解いただけるように、また近くに来た場合に周波数で拾えるようにするためである。

 

委員)

我々山の民からすれば、山で被害があると、人間とクマのどちらが大切ですかという思いである。せっかくかかったものをお仕置きして逃がさなくてもいいのではないかと思う。私とすれば殺して頂きたい。しかし、様々な事情があるのはわかる。あとは決断だけだろうと思っているのでよろしくお願いしておく。

 

委員)

私のところではイノシシとシカの害が非常に多く、農業が出来ない状況になっている。議論がもう少し管理のきつい方向になるのかと思っているが、実態の数に対する考え方を教えていただけるか。

 

事務局)

今保護管理計画で個体数調整しているのは、ニホンジカとイノシシである。ニホンジカは平成21年現在、県内で47,000頭と推計されている。適正生息数を6,700頭と設定し、それに導くために狩猟者の確保・育成等、また一昨年からは県の報奨金制度も実施しており来年からはさらに拡充する予定をしている。一方でイノシシについては一度に4頭から6頭まで産むというように多産であり、仮に今年度の生息数がある程度絞り込めても、また翌年子供が生まれると大きく増えるため、生息数が掴めないという状況である。したがって、イノシシは捕獲というところにはあまり力を入れていないところである。一方で、イノシシはほぼ農業被害であるので、農地を守るための防護柵に力を入れている。一昨年度から国庫の補助事業も導入し、昨年度は県内で58キロ設置している。

 

委員)

ただ明日香村の現状だけ申し上げておく。明日香村ではイノシシが非常に沢山出ており、今年度から2年半ぐらいかけて、明日香村だけで20数キロの防護柵を設置しようとしている。桁が違うのではないかという思いでお聞きした。今後、議論させていただければと思う。

 

事務局)

農地を守るのは農業水産振興課で、イノシシやシカの個体数を管理する、要するに捕獲するのは森林整備課とすみわけをしており、連携をとってさせて頂いている。

 

委員)

ここ5年ぐらいで、どれくらい捕獲しているのかを教えて頂きたい。

 

事務局)

昨年の捕獲数が過去最高で5,561頭である。それまでが4,000頭弱だったが、そのときは毎年のモニタリングの感覚から減っていないという感覚で、5,600頭捕った時は増えてはいないように感じた。

 

委員)

昨年は未曾有の大水害があった。あちこちで崖崩れ等々、動物にとっての生息場所がかなりいためつけられている。こういう大水害が今回問題になるような動物にどのような影響を与えたかという意味のモニタリングが非常に重要だと思う。できれば実施して頂きたい。

 

委員)

例えばクマだと、実が不作の時には一気に出てくるということがあらわれる。山の手入れをしてキャパシティを与えてやらないと当然外に出てくるので、森作り山作りを本当にやっていかないといけないのではないかという気がするが。

 

事務局)

クマに限らず野生獣は、一般的に人工林が多くなって実のなる木がなくなったから人里に出てくるという話をよく聞く。しかし、何もここ数年で人工林が増えたわけではなく、人工林の面積はほとんど変わっていないので、それは少し違うのではないかと思っている。ではなぜ人里に出てくるのか。人里に獣たちが食べておいしいものがある、ねぐらになる状態になっている、人間が少なくなって高齢化して人里に行っても追いかけられない、怒られないと向こうも学習して、被害が増える。どれが確実かはわからないが、それらが相乗的に機能してこういう事態になっているのではないかと考えたりする。奈良県だけでの問題ではなく全国的にいえることではないかと思う。