意見書第5号
消費者のための新たな訴訟制度の創設に関する意見書
全国の消費生活相談の件数は、平成22年度で約89万件と依然として高い水準が続いている。県内においては、同年度で約4,500件の相談が寄せられており、これらの消費者被害は被害金額が少額から高額のものまであり、高齢者と若年者に被害が発生する傾向がある。
一方、現在の訴訟制度の利用には、相応の費用・労力を要するところから、事業者に比べ情報力・交渉力で劣位にある消費者は、被害回復のための行動をとることが困難である。
そこで、消費者が有する法的請求権の実効性を確保する観点から、できる限り消費者の請求権を束ねて訴訟追行ができるようにすることを企図し、現在、消費者庁において、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の案が準備されている。
この制度案は、被害者である消費者が事業者の法的責任が確定した段階で特定適格消費者団体からの通知等に応じ被害回復を申し出ることで救済への道が開かれるという、消費者にとって労力の面でも費用の面でも、現行制度より負担が低減される画期的な制度である。また、事業者にとっても、多数の消費者との間の紛争を効率的に解決できるメリットがある。
これまでの消費者団体訴訟制度は、適格消費者団体に事業者の不当な行為に対する差止請求権を認めていたが、損害金等の請求権を認めていなかった。そのため、消費者被害の未然防止、拡大防止の効果は発揮されていたものの、消費者の被害救済には必ずしも結びつかないという課題を有していた。その課題に応える点からも、この制度案は評価できるものである。
よって、国におかれては、消費者庁及び消費者委員会設置法附則六項の趣旨にのっとり、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度について、平成24年通常国会の審議、議決を経て、早期にその創設を図るよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年3月23日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣府特命担当大臣(消費者)