意見書第20号
改正貸金業法の堅持及び多重債務対策の強化を求める意見書
深刻な多重債務問題解決のため、2010年6月18日に、改正貸金業法の焦点であった出資法の上限金利の引き下げ及び収入の3分の1を超える貸付の禁止(総量規制)等の完全施行がなされてから2年が経過した。
各地方自治体においても国の多重債務問題改善プログラムを踏まえ、関係機関との連携を強化し、多重債務者の相談や救済、そして生活再建を目指した施策を実施してきたところである。
その結果、日本弁護士会連合会の発表によると、5社以上の借り入れを有する多重債務者が法改正時の230万人から44万人に、自己破産者は17万人から10万人に激減したとあり、また、警察庁の発表によると、多重債務による自殺者が1,973人から998人に半減したとあるなど、同法改正は多重債務対策として大きな成果を上げている。
他方、消費者金融から借りられない人がいわゆるヤミ金業者から借り入れせざるを得ないという実態は未だ残っている。また、資金調達が制限された零細な中小企業者の需要を充たすためという理由で、再び金利引き上げや総量規制の緩和を求める動きもある。
しかし、高金利に頼らなくても生活できるセーフティネットの構築や総合的な生活・経営相談が出来る体制を更に充実させることが必要である。
よって、政府においては、改正貸金業法を堅持し、上限金利の引き上げや総量規制の緩和を行わないとともに、多重債務対策に関する次の事項について、さらなる取組を強化・推進されるよう強く要望する。
1 政府の「多重債務問題改善プログラム」の着実な実行に向け、個人及び中小企業者向けに貸し付けや生活・経営相談ができるセーフティネットを更に充実させること。
2 貸金業者による脱法行為を厳しく監視できるよう、都道府県多重債務者対策協議会と内閣の多重債務者対策本部との有機的な連携を図ること。
3 地方機関の消費者行政に携わる人材の支援・育成、各地方自治体での多重債務相談体制の強化など、地方消費者行政の充実強化に向け、一層の予算措置を行うこと。
4 深刻な不況や円高等の影響を受けている中小企業が「短期・高利」の資金に依存しなくてすむよう、緊急保証、セーフティネット貸付等金融対策を充実するとともに、総合的な経営支援策を推進すること。
5 ヤミ金撲滅に向けて引き続き一層の取締り等の強化を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年12月14日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
金融担当大臣
経済産業大臣