意見書第4号
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に関する意見書
昨年の12月の政権交代を経て、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への日本の参加をめぐり、陰に陽に議論が活発化していたところ、先日、政府はTPP交渉への日本の参加を表明した。
TPPは、物品貿易は原則関税撤廃とし、サービスなど非関税障壁についても高い水準の自由化をめざす包括的な経済連携協定とされている。
TPPは、農林漁業や農山漁村への打撃、食料自給率の低下だけでなく、20以上の交渉分野についても、外国企業による医療・薬価制度や政府調達・公共事業への参入、食の安全基準の緩和、知的財産権、投資の自由化、郵政や共済の同等性などが含まれ、国民生活や地域経済に多大な影響を与える危険性をもっている。韓国でも不平等な米韓FTAに対し、大きな反対運動が起き、TPP参加国でも労働条件や雇用の悪化に懸念をもっている。
この間、国は、TPP交渉に関する内容や参加国の要求や合意点、日本にどのようなメリット・デメリットがあるのかなどについて十分な情報提供を行っておらず、国民世論は二分され、多くの自治体が懸念を表明し、農業や医療、消費者団体など各層から強い反発が巻き起こっている。
今後、TPP交渉への参加を進めていくのであれば、国内への影響を深く検討し、国民に情報を公開するとともに、日本の食料と地域の農業・農村、医療や雇用、資源、土地など国民の財産を守りぬくよう、次の事項について要望する。
1 交渉参加にむけた各国との協議にあたり、政府の方針・体制を明らかにすること。
2 各国との協議により収集した情報は、自治体に速やかに報告し、国民への十分な情報提供および幅広い国民的な議論を行うこと。
3 「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村をどう守りぬき、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築」をどうやって実現するのか早期に明らかにすること。
4 交渉では、食料自給率の向上や食料の安定供給を実現する観点から、「多様な農業の共存という基本目標、農業の多面的機能への配慮、輸出国と輸入国の不均衡の是正、開発途上国への配慮、消費者・市民社会の関心への配慮」を維持すること。
5 米国主導の巨大なTPPに追従してアジアの成長を取り込むのではなく、アジア諸国との互恵的かつ柔軟な経済連携を追求するとともに、食料・環境・エネルギー分野での連携を強めること。
6 WTO交渉や既存のFTA・EPAとの整合性をどうとるのか明らかにすること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成25年3月25日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
外務大臣
財務大臣
厚生労働大臣
農林水産大臣
経済産業大臣
内閣府特命担当大臣(経済財政政策)