注目すべき種の概要




■確認あるいは捕獲された注目すべき種の概要



●イシガメ                                      


 低地よりも山地やその周辺の河川や池沼及び水田などに生息している。肉食性に近い雑食性で、秋から春にかけて交尾し、6,7月頃に一度に6個前後の産卵をする。甲らは背側が黄土色で、腹側は黒色、甲らのしり側の縁がギザギザしている。
 今回の調査では、猿沢池などで確認されたが、過去のデータと比較して確認した個体数が少ないことから、希少になりつつあると言える。しかし、少ないものの生息しているということは良好な環境が残されているとも言える。
 大阪府版RDB掲載種(要注目)


●ワタカ                                        


 県指定天然記念物(東大寺鏡池のワタカ)
 日本特産の魚で、琵琶湖及びこれに接続する淀川にのみ産するとされている魚である。ところが本県下では天理市内大字仙之内町・内山永久寺本堂池に棲息していたことが知られているが、池水の涸渇や濫獲で絶滅するのを恐れ、東大寺鏡池や石上神宮の鏡池などに移植され、現在この二池に繁殖しているのみである。(奈良県教育委員会編 奈良県史跡名勝天然記念物集録2より抜粋)
 今回の調査では、東大寺鏡池で4個体捕獲、採寸後放流した。
 滋賀県版RDB掲載種(絶滅危惧種)
 京都府版RDB掲載種(要注目種)
 大阪府版RDB掲載種(要注目)


●ニッポンバラタナゴ                        

 護岸されていない水路やため池などの自然性の高い止水域などに生息する。かつては奈良盆地でも広く見られたと思われるが、近縁種であり、外来種であるタイリクバラタナゴとの競合並びに交雑、あるいは河川開発や水質悪化といった環境悪化により分布域の縮小、個体数の減少を招いている。現在、確認されている生息地は、大阪府東部、香川県北部と九州中北部のみといわれている。(環境省編 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物より抜粋)
 今回の調査で奈良公園内の池より捕獲された個体は、タイリクバラタナゴあるいは交雑種の可能性もあったため、DNA鑑定を実施したところ、純粋なニッポンバラタナゴを2個体確認した。
 確認された個体数が極めて少ないため、今後も引き続き補完調査を実施することとしている。
 環境省版RDB掲載種(絶滅危惧1A類)
 滋賀県版RDB掲載種(絶滅種)
 京都府版RDB掲載種(絶滅種)
 大阪府版RDB掲載種(絶滅危惧1類)
 兵庫県版RDB掲載種(Aランク)


●オオバヤドリギ                             

 広葉樹に寄生する常緑低木。葉は楕円形で、表面は緑色、裏面は赤褐色の星状毛に密に被われている。花は筒状で赤褐色、果実は広楕円形で赤熟する。日本では本州(関東南部以西)、四国、九州、琉球に分布する。
 個体数が少なく、希少な植物であるが、今回の調査で奈良公園内において生育が確認された。
 近畿地方RDB掲載種(絶滅危惧種A)
 京都府版RDB掲載種(絶滅寸前種)
 和歌山県版RDB掲載種(絶滅危惧2類)



●フウラン                                     

 低地の樹幹や岩上に生える小型の常緑の着生ラン。日本では本州(関東以西)、四国、九州、琉球に分布する。
 園芸用の採取、森林の伐採などのため、産地や個体数が極めて少ない、希少な植物であるが、今回の調査で奈良公園周辺において生育が確認された。
 環境省版RDB掲載種(絶滅危惧2類)
 近畿地方RDB掲載種(絶滅危惧種A)
 滋賀県版RDB掲載種(絶滅危惧種)
 京都府版RDB掲載種(絶滅寸前種)
 大阪府版RDB掲載種(絶滅危惧1類)
 兵庫県版RDB掲載種(Aランク)
 和歌山県版RDB掲載種(絶滅危惧2類)



●ヤマトニシキ                               

 体は黒色で、青色や緑色の鱗片が多く、特に前翅の地色は美しい緑色の金属様の光沢が強い。昼間飛ぶが、燈火にも来る。食草はツバキ科のヒサカキやツバキなどの常緑樹である。分布は本州(奈良県)、隠岐、四国、九州、対馬
 今回の調査で、春日山原始林周辺部においてライトトラップを実施したところ、個体の確認ができた。
 なお本種は、捕獲が禁止された昆虫類として、奈良県立都市公園条例施行規則で規定されている。