意見書第8号
てんかん患者とその家族への支援を求める意見書
てんかんは脳の慢性疾患であり、脳神経の一部が一時的に過剰に活動し、それが意識障害、けいれんなどの発作となってあらわれる病気である。全国に100万人の患者がおり、医療の進歩、早期診断・早期治療により、約70%の患者が発作に悩まされない生活を送っているが、現代の医療では発作を止められない患者や、適切な治療を受けるに至っていない患者も多く存在する。
また、発作の止まっている患者であっても、再発の不安ストレスによる精神疾患、医療費、学校や仕事の問題など様々な悩みを抱えている。さらに、根強く残っている誤解や偏見から、修学、就労、結婚などで差別的な扱いを受け、苦しめられている患者も多い。
1997年より世界保健機構(WHO)、国際抗てんかん連盟(ILAE)、 国際てんかん協会(IBE)の共催による世界的キャンペーンが行われるなど、てんかんに関する理解と福祉の向上が国際的に広がりつつあるが、日本国内では十分ではなく、いまだに多くの患者が苦しめられている。2008年に招集された第169回通常国会で、日本てんかん協会が提出した請願5項目が採択されたものの、具体化にいたっていない現状である。
よって、政府においては、次の項目を具体化されることを求める。
1 (啓発)てんかんについての国民的理解を広げるための広報につとめること
2 (福祉)障害程度区分の判定にてんかん障害特性を反映させ、てんかん患者の福祉向上につとめること
3 (労働)てんかんにより自動車運転などが困難な患者の就労を促進するため、自動車運転免許を必要としない職種への配置を指導・援助するなど、就労支援につとめること
4 (交通)現在、「療育手帳」「身体障害者手帳」で適用されている交通運賃の減額制度を、てんかん患者も利用できる「精神障害者保健福祉手帳」にも適用するようつとめること
5 (医療)系統的なてんかん専門医の育成と、地域における日常医と専門医の連携など、てんかん医療の充実につとめること
6 (教育)教員向けの研修に、てんかんに関する教育課程を設けること。また、保健体育の時間に疾患の特性などを学ぶカリキュラムを含めること
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成25年7月5日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
文部科学大臣
厚生労働大臣