意見書第13号
駅無人化問題への対応を求める意見書
奈良県内の鉄道駅においては駅係員の無配置が増え続けている。県内に93ある近鉄の駅のうち2010年に2駅だった無人駅は、2011年に近鉄田原本線の6駅が一斉に無人化されるなど2012年には18駅になった。JRも32駅中15駅が無人駅となっている。今回、明らかにされた近鉄駅係員無配置化計画は大阪線では大福駅、室生口大野駅、三本松駅、橿原線では石見駅、南大阪線では二上神社口駅、当麻寺駅、磐城駅、浮孔駅、橿原神宮西口駅の9駅となっており、12月下旬実行予定とされている。
駅係員を配置しない駅、いわゆる無人駅では、利用者とりわけ障害者、車いす利用者、妊娠女性、高齢者の利便性・安全性の大幅な低下を招くことは明らかである。対応策としている有人駅からの制御・監視も、駅係員が他の職務を行いながら行うものであり、遠隔制御・監視システムの故障・誤操作、改札機のトラブル、ホームでの転落事故等、緊急時における対応が十分であるとは言えない。また、地域の安全を脅かす夜間の不審者や犯罪など防犯上の観点からも多くの問題を誘発することが懸念される。これらは、特に障害者、高齢者、妊娠女性、子どもをはじめとした、いわゆる社会的弱者の利用者と鉄道沿線の住民に大きな不安を与えることになり、強い危惧を抱かざるを得ない。
加えて、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」いわゆるバリアフリー新法では、その第1条で「高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資すること」を、障害者基本法第21条第2項では、「交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、障害者の利用の便宜を図ることによって障害者の自立及び社会参加を支援するため、当該公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進に努めなければならない」ことを明確に規定しており、今般のような駅の無人化はこれら法律の趣旨・精神にも反するものであり、到底容認できるものではない。
よって、政府におかれては、駅無人化を進める公共交通事業者等に対し、すべての利用者がより円滑に利用できる十分な人的対応を行うよう指導するとともに、安全・安心の観点から、有人化、すなわち駅係員等を置くことを義務付ける法律を早急に整備するなど、駅無人化問題への対応を強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成25年10月7日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
国土交通大臣