1.行為制限の概要
(1)制度の概要
自然公園のすぐれた自然の風景地を保護し、その利用の増進、国民の保健・休養・教化のために、自然公園内における一定の行為を制限しています。
具体的には、自然公園の特別保護地区及び特別地域内においては、工作物の新築等のほか木竹の伐採、土石の採取及び土地の形状変更等の行為をしようとする場合、国立公園に係るものについては環境大臣の、国定公園及び県立自然公園に係るものについては知事の許可が必要となります。
また、特別地域内において家畜を放牧しようとする場合、普通地域内において一定規模を超える工作物の新築等のほか土地の形状を変更する等の行為をしようとする場合は、国立公園に係るものについては環境大臣に、国定公園及び県立自然公園に係るものについては知事に届出が必要となります。
(2)根拠法令
- 自然公園法(第20条、第21条、第33条)
- 奈良県立自然公園条例(第17条、第19条)
(3)自然公園の種類(奈良県内の自然公園)
- 国立公園(吉野熊野国立公園)
- 国定公園(室生赤目青山国定公園、金剛生駒紀泉国定公園、大和青垣国定公園、高野龍神国定公園)
- 県立自然公園(県立矢田自然公園、県立月ヶ瀬神野山自然公園、県立吉野川津風呂自然公園)
※吉野熊野国立公園内における行為の許可・届出について
環境大臣所管のため、吉野管理官事務所(TEL:0746-34-2202)へお問い合わせください。
(4)自然公園における指定地域の種類
1)特別保護地区
自然公園の中で最も中核をなす景観地であり、現状維持を原則とする。(奈良県内の県立自然公園には指定はありません。)
2)特別地域
- 第1種特別地域:特別保護地区に準ずる景観地であり、現在の景観を極力保護することが必要な地域
- 第2種特別地域:第1種及び第3種特別地域以外の地域であって特に農林漁業活動については努めて調整を図ることが必要な地域
- 第3種特別地域:特別地域の中では風致を維持する必要性の比較的低い地域であって、特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれの少ない地域
3)普通地域
特別地域の風致景観維持のための緩衝地帯などとして必要な地域
2.規制内容
(1)特別地域内において許可の必要な行為
特別地域内においては、次に掲げる行為をする場合は国立公園にあっては環境大臣の、国定公園及び県立自然公園にあっては知事の許可を受けなければなりません。
但し、政令で定められている特定の行為については許可は不要となります。
- 工作物の新築・改築・増築
- 木竹の伐採
- 環境大臣又は知事が指定する区域内で木竹を損傷すること
- 鉱物の採掘、土石の採取
- 河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること
- 環境大臣が指定した湖沼、湿原等に汚水、廃水を排水設備を設けて排出する行為(国立公園・国定公園のみ)
- 広告物類の掲出、設置又は表示
- 屋外における土石、環境大臣又は知事の指定する物の集積又は貯蔵
- 水面の埋立又は干拓
- 土地の開墾等土地の形状の変更
- 環境大臣又は知事が指定する高山植物等を採取し、又は損傷すること
- 環境大臣又は知事が指定する区域内で、環境大臣又は知事が指定する植物の植栽又はその種子の散布
- 環境大臣又は知事が指定する動物の捕獲、殺傷等
- 環境大臣又は知事が指定する区域内で、環境大臣又は知事が指定する動物を放つこと
- 屋根、壁面、塀、橋、鉄塔、送水管等の色彩の変更
- 湿原その他これに類する地域のうち、環境大臣又は知事が指定する地域内への立入り
- 道路又は広場等以外の区域のうち、環境大臣又は知事が指定する区域内において、車馬若しくは動力船の使用又は航空機の着陸
- 環境大臣又は知事が指定する道路で車馬を使用すること
- 1~18の他、政令で定める行為
※最近、許可を得ずに工事に着手される事案が増えていますので、ご注意ください。
(例)事前のボーリング調査、道路拡幅
(2)特別地域内において届出が必要な行為
- 特別地域の指定又は地域の拡張等により上記にある特別地域内において許可の必要な行為が規制されることとなった時に、既に行為着手している場合は、指定等の日から起算して3ヶ月以内に国立公園にあっては環境大臣に、国定公園及び県立自然公園にあっては知事に届出なければなりません。
- 非常災害のために必要な応急的措置として上記2の行為をした場合は、その行為をした日から起算して14日以内に国立公園にあっては環境大臣に、国定公園及び県立自然公園に知事に届出なければなりません。
- 木竹の植栽又は家畜を放牧しようとするときは、あらかじめ、国立公園にあっては環境大臣に、国定公園及び県立自然公園にあっては知事に届出なければなりません。
(3)普通地域内において届出の必要な行為
普通地域内において、次に掲げる行為をする場合は、国立公園にあっては環境大臣に、国定公園及び県立自然公園にあっては知事に行為の種類、場所及び施行方法等を届出なければなりません。
但し、通常の管理行為等については届出は不要です。
- ※一定規模を超える工作物の新築・改築・増築(改築・増築後において、一定規模を超えるものとなる場合を含む)
- 特別地域内の河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
- 広告物類の掲出、設置又は表示
- 水面の埋立又は干拓
- 鉱物の採掘又は土石の採取
- 土地の形状の変更
※一定規模について
-
建築物:高さ13m(県立自然公園は15m)又は延べ面積1,000平方メートル
- 送水管:長さ70m
- 鉄塔:高さ30m
- 太陽光発電施設:同一敷地内の地上部分の水平投影面積の和1,000平方メートル
(その他の工作物については、自然環境調整係へお問い合わせください)
(4)特別保護地区での行為の規制について
特別保護地区は上記に記載のとおり現状維持を原則としています。このため、工作物の設置、木竹の損傷、火入れ、植物の採取等はできません。
学術研究や公益上必要な場合等のためにこれらの行為をする必要がある場合は、事前に自然環境調整係へお問い合わせください。
(5)手続きのフロー
許可申請等をされる場合は、事前に自然環境調整係と協議をお願いします。
行為によっては、他法令に基づく申請・届出が別途必要となる場合があります。
自然公園法・奈良県立自然公園条例では、上記に違反した場合の罰則が定められています。
申請書ダウンロード
※吉野熊野国立公園内における行為の許可・届出について
環境大臣所管のため、吉野管理官事務所へお問い合わせください。
TEL:0746-34-2202
3.特別地域内行為の許可基準
(1)建築物の新築・改築・増築
第1種特別地域
既存建築物の改築、建替、災害復旧のための新築又は学術研究その他公益上必要と認められるもの以外は許可しない。
第2種、第3種特別地域
撤去されることが明らかな仮設の建築物
- 設置期間が3年を超えないこと
- 主要展望地からの展望の妨げにならないこと
- 山稜線を分断する等眺望の支障にならないこと
- 屋根及び壁面の色彩形態への配慮
- 撤去計画が定められ、撤去後の跡地整理が適切になされること
農林漁業従事者等特別地域内に居住することが必要と認められる者の住宅
- 高さ:最低地盤面から13m以下
- 主要展望地からの展望の妨げにならないこと
- 山稜線を分断する等眺望の支障にならないこと
- 屋根及び壁面の色彩形態への配慮
農林漁業を営むために必要な建築物
- 主要展望地からの展望の妨げにならないこと
- 山稜線を分断する等眺望の支障にならないこと
- 屋根及び壁面の色彩形態への配慮
上記以外の一般建築物
(2)工作物の新築・改築・増築
第1種特別地域
公益上必要なもの等以外は許可しない。
第2種、第3種特別地域
撤去されることが明らかな仮設の一般工作物
- 設置期間が3年を超えないこと
- 主要展望地からの展望の妨げにならないこと
- 山稜線を分断する等眺望の支障にならないこと
- 壁面の色彩形態への配慮
- 撤去計画が定められ、撤去後の跡地整理が適切になされること
- 自然物に照明を行う場合は、必要最小限のもので、野生動植物への影響がなく、光の色彩、形態が周囲の自然との調和を乱すものでないこと
太陽光発電施設(土地に定着させるもの)
- 色彩、形態が周囲の自然との調和を乱すものでないこと
- 撤去計画が定められ、撤去後の跡地整理が適切になされること
- 過去5年以内に伐採が行われた場所でないこと
- 土地の形状を変更する規模が必要最小限であること
- 野生動植物の生息・生育上、風致景観の維持上重大な支障を及ぼすおそれがないもの
- 主要展望地からの展望の妨げにならないこと
- 山稜線を分断する等眺望の支障にならないこと
- 当該施設の水平投影外周線で囲まれる土地の勾配が30%を超えないもの
- 当該施設の地上部分の水平投影外周線が公園事業道路の路肩から20m、その他道路の路肩から5m、敷地境界線から5m離れていること
- 支障木の伐採が僅少であること
- 土砂及び汚濁水の流出のおそれがないこと
※太陽光発電施設の設置を検討される場合は、環境省より発行の『国立・国定公園内における太陽光発電施設の審査に関する技術的ガイドライン』もご確認ください。
上記以外の一般工作物
- 主要展望地からの展望の妨げにならないこと
- 山稜線を分断する等眺望の支障にならないこと
- 色彩、形態が周囲の自然との調和を乱すものでないこと
- 自然物に照明を行う場合は、必要最小限のもので、野生動植物への影響がなく、光の色彩、形態が周囲の自然との調和を乱すものでないこと
- 一般廃棄物又は産業廃棄物の最終処分場を設置するものでないこと
- 次のいずれかに適合するものであること
- 工作物の地上部分の水平投影外周線が公園事業道路の路肩から20m離れていること
- 学術研究その他公益上必要と認められること
- 地域住民の日常生活の維持のために必要と認められること
- 農林漁業に付随して行われるものであること
- 既に建築物のある敷地内で設置されるもの
- 地下に設置されるもの
- 既存の工作物の建替
(3)木竹の伐採
第1種特別地域
- 単木択伐法によること
- 択伐率 :現在蓄積の10%以下
- 伐期令 :標準伐期令に 10年を加えたもの以上
第2種特別地域
択伐法の場合
- 択伐率:用材林(現在蓄積の30%以下)、薪炭林(現在蓄積の60%以下)
- 伐期令:標準伐期令以上
皆伐法の場合
- 伐期令:標準伐期令以上
- 面積:原則として1伐区2ha以内
- 伐区が更新して5年を経過していない皆伐法によった伐区に隣接していないこと
第3種特別地域
制限無し(許可申請は必要)
(4)土地形状変更
第1種特別地域
学術研究その他公益上必要なもの以外は許可しない。
第2種、第3種特別地域
- 集団的に建築物その他の工作物を設置するための敷地造成でないこと
- 土地を階段状に造成するものでないこと(棚田・果樹園等は除く)
- ゴルフ場の造成として行われるものでないこと
- 廃棄物による埋立によるものでないこと
- 申請場所以外においては、その目的を達成することができないと認められるもの
- 形状変更の規模が必要最小限のものであること
- 土砂流出のおそれがないものであること
(5)その他
建築物のうち集合別荘・集合住宅等、工作物のうち車道、風力発電施設、屋外運動施設等、広告物、その他の行為については、別途許可基準がありますので、自然環境調整係へお問い合わせください。
(6)各行為共通の基準
- 自然的、社会経済的条件から判断して、当該行為による風致又は景観の維持上の支障を軽減するための必要な措置が講じられていること
- 申請地・その周辺の風致・景観の維持に著しい支障を及ぼす特別な事由がないこと
- 申請に係る行為の当然の帰結として予測され、かつ、その行為と密接不可分な関係にあることが明らかな行為について、許可申請があった場合に不許可となることが確実でないこと。
4.区域の確認
自然公園の区域を確認する場合、下記をご覧ください。
区域確認について