意見書第11号
ブラックバイトの根絶へ向けて政府の取り組みを求める意見書
若者を「使いつぶす」ブラック企業のような違法・無法な働かせ方が、学生アルバイトにも広がっている。大学では「授業中もバイト先から連絡が入り、集中できない」、「シフトの変更がききにくく、ゼミ合宿の日程が決められない」など、告発の声があがっており、バイトと学業を両立できず、留年や大学中退に追い込まれる深刻なケースもあり、ブラックバイトは、学生生活と大学教育の障害となっている。
かつては、学生バイトといえば、あくまでも正規雇用の補助であり、低賃金だが責任は軽く、テスト前には休むことができ、バイト先も比較的自由に選べるものであった。しかし現在は、低賃金・低処遇にもかかわらず、正社員並みの過度な責任やノルマを課される例が多くある。予定があっても無理なシフトを組まれる、辞めたいのに辞めさせてもらえない、などの実態に加え、報告書作成が勤務時間に加算されない、売れ残りの商品を買わされる、皿を割ったら弁償、などの違法行為も報告されている。
ブラックバイトがここまで広がった原因の一つが、非正規雇用の拡大と「基幹化」である。非正規雇用の比率が現在は4割近くになり、かつては正社員が行っていた仕事を、アルバイトなど非正規に肩代わりさせる事例が広がっている。飲食店、コンビニ、アパレル関係などチェーン展開している業種では「一つの店舗に正社員は一人、あとは全員非正規」というのが一般的で、時給は同じなのに、バイトが「バイトリーダー」、「時間帯責任者」などの役職名をつけられ、シフトの管理・調節や新人育成、不足商品の発注、店舗の鍵の管理など、正社員並みの過大な仕事と責任を負わされ、「授業よりもバイト優先」、「君が来なければ店がまわらない」という状態に置かれている。
もう一つの原因は、学費や生活費をバイトに頼るしかないことである。多くの学生が、学生生活を維持するためには、バイトからの収入を途絶えさせることができない状態にある。首都圏の私立大学に通う学生の家庭からの仕送りは、1994年度の12万4,900円と比べ、2013年度は8万9,000円に減っており、仕送りから家賃を引いた一日当たりの生活費は平均937円で、ピークだった1990年度の4割以下である(東京私大教連の調査)。さらに、公的な奨学金はすべて貸与制で、うち7割が有利子であり、就職難で将来安定した職業につけるか分からない不安から、奨学金をあきらめるか、借りる場合でもできるだけ抑えざるを得ない状況である。同時に、ブラックバイトは、学生の社会経験の未熟さや労働法・雇用のルールへの知識の乏しさにつけこんだ違法・脱法行為で成り立っていることも特徴である。
よって、政府におかれては、次の事項に取り組まれるよう求める。
1 ブラックバイトの実態を把握するとともに、違法な実態を是正する取り組みを強めること。
2 全国の大学と連携し、学生に対し、学生バイトでも労働法が適用されることなどを知らせる啓発につとめること。
3 大学生の学費負担を軽減するために、「無利子」奨学金の充実をおこなうこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成26年10月6日
奈 良 県 議 会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
文部科学大臣
厚生労働大臣
経済産業大臣