はじめての万葉集

 







 みなさんの住む町には、どんな風が吹いていますか? 
 うららかな春の日のそよ風、すがすがしい夏の早朝の風、紅葉を散らす秋の夕暮れの風、星降るような冬の夜風など、季節や時間帯によってもさまざまな風が吹くことでしょう。この歌では、明日香には「明日香風」が吹く、といっています。
 その「明日香風」とは、采女(うねめ)の袖を吹き返す風だということです。采女は、天皇の身のまわりのお世話を務めた女性たちのことで、もともとは、各地の豪族たちが自分の姉妹や娘を献上していたことに始まるといわれます。生まれ育ちがよく、教養もある女性たちでした。彼女たちの服装は、色鮮やかで美しいものだったといいます。その袖が風にひるがえる様子は、まるできらびやかな宮廷を象徴するかのようです。
 しかし、この歌が詠まれたのは、明日香から藤原へと都が遷った後のことでした。志貴皇子はなぜ、都が遷り今はもうそこにいない采女たちのことを思い描きながら、風だけが変わらずむなしく吹いていると表現したのでしょうか。
 遷都(せんと)する以前の中心地は現在の明日香村岡のあたりにあり、実は藤原京とそれほど離れた場所ではありません。それなのに、都が遠いと表現したのは、この時、政治の仕組みや社会の常識が大きく変わったからだといわれています。距離ではなく、時間的、心情的な遠さを表現したようです。
 明日香風とは、過去の記憶を運んでくる風なのかもしれません。
(本文 万葉文化館 井上 さやか)

史跡伝飛鳥板蓋宮跡には、4つの宮跡(古いものから順に、飛鳥岡本宮(あすかおかもとのみや)(630~636年、舒明天皇)、飛鳥板蓋宮(643~645年、皇極天皇)、後(のちの)飛鳥岡本宮(656~667年、斉明天皇)、飛鳥浄御原宮(きよみはらのみや)(672~694年、天武天皇・持統天皇)が重なって埋もれています。今回の歌が詠まれたのは、その1つ飛鳥浄御原宮。石敷の広場や石組みの大井戸が復元整備されています。明日香の風を感じに出かけてみませんか。

復元された大井戸跡

志貴皇子 万葉歌碑

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明日香周遊バス 岡天理教前下車 西へ約200m
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