意見書第16号
子ども医療費助成制度の充実を求める意見書
少子化や子どもの貧困化が深刻化するなかで、若い世代が経済的な心配をせずに子どもを産み育てられる環境づくりが求められています。なかでも子どもの医療費は、子育て世代にとって負担が大きく、その軽減は急務です。親の経済状況に左右されることなく未来を担うすべての子どもたちが必要な医療を受けられることが重要です。
医療保険制度における子どもの自己負担割合はゼロ歳から就学前までが2割、就学時から3割ですが、現在、すべての都道府県が域内の市町村に補助を行い、多くの市町村がそれに上乗せして子どもの医療費を助成しています。しかし、厳しい財政状況のもと、地方単独事業であることから、助成の対象年齢や自己負担額などについて、大きな自治体間格差が生じています。
また、いまだに医療費助成を償還払いとしている自治体が少なくありません。償還払いは患者がいったん窓口で医療費を負担しなければならず、受診抑制を招きかねないという問題があります。にもかかわらず、自治体が窓口負担のない現物給付に踏み切れないのは、窓口負担をなくすと医療費がかさむ等を理由に、国が国民健康保険国庫負担金の減額調整措置を行っているからです。
国は、地方の少子化問題に取り組むとして、各自治体に地方版の「人口ビジョン」や「総合戦略」の策定を求めており、自治体にこのようなペナルティーを科すことは、その政策推進を阻害する要因となります。
よって、国におかれては、子ども・子育て支援および子どもの貧困化防止の観点から、次の事項について早急に対応されるよう強く要望いたします。
1 国の責任において、すべての子どもを対象に、中学校卒業まで窓口負担のない現物給付方式による全国一律の
制度を創設すること。
2 新たな制度創設までの間においても、現物給付方式を理由にした国民健康保険国庫負担金の減額調整措置を
廃止すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成28年12月16日
奈良県議会
(提出先) 衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
財務大臣
厚生労働大臣