『里山資本主義』の著者(藻谷浩介氏との共著)である、NHK報道局・報道番組センター チーフ・プロデューサーの井上恭介様をお招きし、『里山資本主義のススメ』と題し、地域外に流出しているお金を地域内で循環させるしくみの大事さや、エコストーブを中心とした自然エネルギー利用のすすめなどについてご講演いただきました。
○基調講演資料
○講演概要
講演冒頭では、「災害があって、大変な努力を払ってでもふるさとを取り戻すということを何のために
やっているのか。忘れてはならないことは、ふるさとには都会にはない、いい暮らしや、幸せや豊かさと
いうものがあるということ。」そして、「すべてのものをお金で買う「マネー資本主義」というシステム
に100%依存している今の暮らしから、田舎でしているような暮らしも取り入れていくことを考えてい
かなくてはならないのではないかという考えをもつ人が都会の中にたくさんいて、今、UターンやIター
ンとして地方に戻ってきている。」と、世の中の流れとして「里山資本主義」の考え方が広がってきてい
ると語られた。
次に、「戦後の高度経済成長時代の経済の仕組みが世の中に行き渡るにつれて、エネルギーや食べもの
は、お金を払って人から買うという仕組みにどんどん切り替わった。そのため、お金をいっぱい稼がない
といけない世の中になり、お金を稼ぐことに関しては、地方よりも有利な東京へ、どんどん人が出て行く
ことになった。」
しかし、「地方では本当に全部お金を出して買わないといけないのか。エネルギー源は地下資源ばか
りではない。山林をエネルギーとして利用できないかということを「里山資本主義」を考える出発点
にしたい。」と語り、広島県庄原市でのエコストーブを使った自然エネルギー利用の取組をご紹介いた
だいた。
また、「木のエネルギーを使うことが世界的に進んでいくと、技術開発によって意外に近代的なものに
更新することができる。」と、オーストリアや岡山県真庭市での木質ペレットを使った取組事例をご紹介
いただき、「少なくとも、山の中で暮らしている市町村が、このことを真剣にやらない手はない。」と語
られた。
また、「エネルギーを灯油代として支払えば、最終的にはアラブの王様のところへいくが、ペレット代
として支払えば、地域にお金が残る。地域の中のものを使うと地域の中に回っていくお金がどんどん増え、
外のものを使っているとどんどん逃げていってしまう。」これは、「「里山資本主義」の極めて重要な概
念であり、心にとめておかなければいけないキーポイントである。」と、地域外に流出しているお金を地
域内で循環させるしくみの大事さについて語り、山口県周防大島での、地域産業であるミカンを活用した
ジャム屋さんが地域経済に良い影響を与えているという事例等をご紹介いただいた。
最後には、「今の奈良県南部地域でもやれること、発想として何か考え出せることがいくつもあるので
は。」とエールをいただいた。
○講演全文
○基調講演の様子