万葉のうた

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万葉のうた

第2回 三輪山

屋上庭園万葉スクリーンに掲示している万葉歌の紹介、第2回は、NO.2 三輪山です


味酒(うまさけ) 三輪の祝(はふり)の 山照らす 秋の黄葉(もみち)の 散らまく惜しも
(万葉集第8巻 1517番 長屋王(ながやのおおきみ))

〈現代語訳〉
味酒三輪の神官がまもる山を輝かせる秋の黄葉の、散るのが惜しいよ

〈解説〉
天武天皇の孫で、高市皇子(たけちのみこ)の子であった長屋王が詠んだ歌です。聖武天皇の時代に左大臣までつとめましたが、謀反の罪に問われ、最後は自害しました。飛鳥・藤原京の時代を生きた人であり、三輪山の紅葉の美しさも実感として知っていたようです。日本最古の漢詩集である『懐風藻』には、新羅国からの客を迎えて漢詩を披露し合う宴でもてなした様子も書き残されています。



 屋上庭園から東方向を見ると、三輪山がよく見えます。三輪山は桜井市にある山で、高さ467m、周囲16km、なだらかな円錐形をしており、大神(おおみわ)神社の御神体とされています。大神神社は桜井市三輪にあり、日本最古の神社の一つで、御祭神である大物主大神(おおものぬしのおおかみ)が三輪山に鎮座していることから、三輪山を御神体としているようです。
 「味酒(うまさけ)」は、「三輪」にかかる枕詞、「祝(はふり)」とは神に仕えることを職とする人の総称です。
 「秋の黄葉(もみち)」については、「もみじ」が「紅葉」ではなく「黄葉」となっていますが、「もみじ」は万葉集ではそのほとんどが「黄葉」という漢字を当てており、「紅葉」となっているのはごくわずかしかないそうです。「紅葉」という表記が一般的になったのは、平安時代以降だと言われています。
 この歌は、後に謀反の疑いをかけられて自殺する長屋王が、まだ藤原京に住んでいた若いころに詠んだ歌です。三輪山を輝かせる黄葉が散ってしまうのが惜しまれてならないと、素直に黄葉の美しさに対する感動を表現しています。