『万葉集』の植物のなかで最も多く詠まれているのが「萩」です。古代の人が愛した花は、地味で控え目なものが多い。それが、日本独特の美意識なのかもしれませんね。
ちなみに、次に多くうたわれているのは梅。梅は日本古来のものと思われがちですが、当時、中国から渡来した植物です。
春日野は、現在の春日野町あたり。都のすぐ近くで、いわば奈良時代の人々のピクニックポイントでした。また、生命力をもらえるという春菜を摘む場所でもありました。現代でも、奈良公園のある春日野町周辺は、春や秋になるとピクニックをする人たちでにぎわっています。
実際に、都に藤が咲いていたというよりは、華麗なさまが都を連想させることから、「藤」が詠まれたのでしょう。大伴旅人ら、同じ大宰府のいる官人に向けてうたった歌です。
この当時、春日大社の前身である藤原氏の氏神が同地に祀られていました。藤原一族を称えて「藤波」と詠んだという説もあります。
ここでいう「故郷(ふるさと)」は、現代人の故郷(生まれ育ったこきょう)とは少し違うようです。宮中の人々にとっては、平城京に都が遷った後も、飛鳥が「古き良き郷」=「故郷」でした。
歌碑のある元興寺塔跡には、立派な桜の木があり、春に訪れると見事な桜を愛でることができますよ。
葉根蘰とは、年頃になった少女がつける、つる性の植物の葉と根でできた髪飾りと考えられています。葉根蘰をつけることが成人した証となります。 この歌の中で最も伝えたいのは「音の清けさ」。前の4句のたとえが「率川」を導き出し、初々しい娘のイメージが川の流れる音の清らかさを強調します。