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中遺跡出土銅印 なかいせきしゅつどどういん

記入年月日 2023/04/25

銅印(横から)
印面と文字
所在地
五條市北山町930-2 市立五條文化博物館
区分
考古資料 | 金属製品類
指定内容

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
 五條市北西部の吉野川南岸に所在する中遺跡で出土した、鎌倉時代(13世紀前半)以前の製作・所持とみられる銅印である。
 中遺跡は、縄文時代後期・晩期、弥生時代中期・後期、中世の集落跡で、銅印は、令和3(2021)年の発掘調査により、鎌倉時代の13世紀前半に埋没した不整形の土坑の埋土上部から、印面を上に向けた状態で出土した。意図的に埋納された形跡は、認められなかった。
 銅印は鋳造品で、法量は、印面の縦24.8mm、横24.6mm、全体の高さ30.5mm、重さ28.2g(保存処理後)。蛍光X線分析によると、材質は銅を主成分とし、ヒ素、銀、鉛等を少量含む。莟鈕で、直径約3mmの孔を開ける。印文は、陽文で篆書体の「市」とみられる漢字一字を鋳出している。
 なお、蛍光X線分析では印面で赤色顔料は検出されず、印章として使用していたかどうかは不明である。
地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由
 銅印等の古印(奈良・平安時代の印)は、全国で270点余りの出土・伝世等があり、奈良県では中遺跡の調査以前に16点(出土6点、伝世10点)が知られていた。
 中遺跡の銅印は、奈良県の出土古印としては7例目、出土銅印としては平城宮跡(8世紀末)、箸尾遺跡(11世紀末~12世紀初め)に続き3例目となり、五條市では初出の資料である。また、印面の大きさは、奈良県で最小である。
 印面の大きさから、公的機関の印ではなく家印または私印とみられ、私印の文字は人名の一部との見方もある。その場合、古代末から中世初期の宇智郡西部の坂合部地域を治めていた有力な家、または名に「市」の付く有力者が所有した印の可能性がある。現時点で当地に関係し、名に「市」の付く人物は古文書でも見当たらないが、今後、地域の古代・中世史を解明する上で重要な資料であると考える。
問い合わせ先
五條市教育委員会事務局 文化財課
電話番号
0747-24-2011

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