出会う 奈良県歴史文化資源データベース

春日大社貴賓館庭園 かすがたいしゃきひんかんていえん

記入年月日 2025/01/31

東庭「三方正面七五三岩磐境の庭」
北庭「稲妻形遣水の庭」
所在地
奈良市春日野町160番地の1の一部
区分
名勝 | 庭園
指定内容
奈良県指定名勝

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
 奈良市春日野町に位置する春日大社貴賓館は、本殿と国宝殿の間に位置しています。大正15年(1926)に社務所として建築されました。コの字形に配置された主屋の東側と北側に庭が設けられ、それぞれ「東庭」、「北庭」と呼ばれています。
 庭は、日本庭園史家であり作庭家でもある重森三玲によって設計され、庭師の川崎順一郎が施工しました。重森は国指定名勝東福寺本坊庭園(昭和14年作庭)など、全国で200以上の庭を作庭していますが、貴賓館庭園は、その中でも最初期の作品となっています。また、重森の著作である『作庭記』・『日本庭園史図鑑』には、東庭の作庭経緯や意図が、また後者には、北庭の作庭経緯や意図が記されています。このほか「春日神社社務所庭園写生図」、「春日神社社務所庭園平面図」などの図面類、作庭当時の写真や日記なども収録されており、貴賓館庭園を理解するうえで貴重な史料となっています。
 東庭は、現在「三方正面七五三磐境(さんぽうしょうめんしちごさんいわさか)の庭」と呼ばれています。前方の白砂と後方の苔庭にX字形に配置された石組によって構成されており、伝統文化を踏襲しつつ、近代的・前衛的な手法で設計するという、重森の初期から晩年かけての特徴が表れています。また、春日大社の末社名に因み、クリ(栗柄(くりから)神社)、サカキ(辛榊(からさかき)神社)、スギ(杉本神社)、ツバキ(椿本神社)などを意図的に選択し、庭石にも同様の配慮が見られます。
 北庭は、現在「稲妻形遣水(いなずまがたやりみず)の庭」と呼ばれています。春日大社の歴史に因み、平安朝の庭園を意図して、絵巻を参考にして作庭されました。このように北庭は、Z字形に矩折りする遣水が特徴的です。一方、遣水の側面及び底面に施されたモルタルの護岸や青石の石橋は、近代的な造形となっています。なお、植栽は、万葉集に因み、ウメ、カエデ、アセビ、キキョウ、クマザサなどが植えられています。
 本庭園は、昭和を代表する作庭家・重森三玲の初期の作風が概ね本来の姿で鑑賞できるものであり、春日大社の歴史的背景と近代的な作庭手法の融合を意図した重森の想いをうかがい知ることができる点で高い価値を有します。
問い合わせ先
奈良県文化財課
電話番号
0742-27-9864

掲載されております歴史文化資源の情報は、その歴史文化資源が地域にとって大切であると考えておられる市町村、所有者、地域の方々により作成いただいたものです。
見解・学説等の相違については、ご了承ください。