平成30年6月13日(水)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 それでは、ただいまから知事定例記者会見を始めます。
 本日は、せんとくんのイラストライセンスに関する発表案件が1件ございます。
 知事から発表していただきますので、よろしくお願いいたします。


せんとくんイラストライセンス無償化について
《資料》 (新しいウィンドウが開きます。)

知事:
 せんとくんは、誕生から10年になりました。2008年に誕生して10年を記念してライセンスを無償化しようかということでございます。

 各地の、各県のマスコットキャラクターの有償、無償をちょっと調べてもらいましたが、例えば有名なところでは「ひこにゃん」というのは有償です。くまモンは無償でした。有償が無償化されているのが徳島県と愛媛県と聞いています。奈良県は10年たったから無償化をするようにしました。

 無償ではなかった最初は、キャラクターが初めてなので、収入目的よりも、どのような使われ方をするのかというのが心配なので、事前の承認申請をしていましたが、無償化にしても事前の承認申請は続けたいと思っています。最初は結構稼いだ。稼ぐというほどではないが、結構収入があったが、有償申請が少なくなったので、稼ぎが悪くなったから無償化するということでもないが、今は160万円ぐらいだから、収入的には無償化をしても財産上の影響も少ないというようなのも判断です。また無償化することで、事前の申請承認は要りますが、せんとくんが、またはやり出すというか、無償だったら使ってあげるよというような、人気者にはまだ変わりはないというふうに思います。無償だったら色々なところで使うよという人がより多く出てくることを期待している面もあります。

 そのような理由で、10年表彰して無償化をさせていただくという内容の発表です。以上です。

司会:
 ありがとうございました。
 それでは、発表案件に関するご質問をよろしくお願いいたします。

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質疑応答

せんとくんイラストライセンス無償化について

毎日新聞:
 本件で、狙いといいますか、より多くの方に使っていただいて愛される存在にもっとなってほしいというような思いも当然あるんでしょうか。

知事:
 そうですね。県のキャラクターの狙いというのは、47都道府県ありますが、やはり地域の認知を上げたいという願いは各地ともある。それをそのキャラクターで代表する。昔は産物で代表していた面もあります。だからそれを反映したキャラクター、みかんはほうぼうで、でき出したが、愛媛といえばみかんというので、愛媛のキャラクターの名称は「みきゃん」という名前。名前にしても、奈良は「せんと」というような、遷都1300年記念でつけたという名前もそうで、徳島は「すだちくん」という名前で、船橋は「ふなっしー」とか、そういう名産をキャラクター化したというのも見受けられます。

 千葉県は「チーバくん」。色々な売り出し方があるということですので、せんとくんが狙っているのは、奈良というイメージをせんとくんで持ってもらう。せんとくんはちょっと抽象的ですね。「みきゃん」というよりもね。「チーバ」というのは何かもう一つはっきりわかんないけども、チーバの絵はおもしろい。地図のような姿をしている。だからいろいろ工夫はあるなと思います。

 「くまモン」が随分売れました。これは熊のキャラクターだけど、熊本の「くま」をかけているのは当然だと思いますが、そのようなことで地域のイメージを、なるべくいいイメージを持ってもらおうというのは皆腐心をしておりますので、おっしゃるようにせんとくんが人気が出るということは、奈良県が人気というか、認知度が上がるということを願ってのことです。

毎日新聞:
 抽象的でわかりにくいということを今、せんとくんのことをおっしゃいましたが、その無償化をきっかけに、例えば名前を変えるとか、あるいはデザインを変えるだとかといったようなこともお考えの部分はあるんですか。

知事:
 全く考えていません。

毎日新聞:
 わかりました。それからもう一つ。着ぐるみのほうで角が、横じゃなくて縦になっちゃったという経過があったのですが。何かそれの周知も含めて、再発防止みたいなことを何かお考えの部分はあるんでしょうか。

知事:
 再発、まあ1回しか起こってないから(笑)。再発がすればまた考えないかんかなと思ってますので、1回こっきりを願ってますけどもね。

時事通信:
 例えば、無償化と同時にどんどん使ってもらえるように、企業向けとかにPRするといった使ってもらうような取り組みをあわせてお考えでしょうか。

知事:
 そうですね。このキャラクターと使用度って、どちらが先かわかんないとこがあります。それで人気が出ればキャラクターで使うよ、使えば人気が出るかどうか。皆、基本的に愛嬌なので、これも持ってる素材が、愛嬌が感じられるようなことになれば両方できていくというような関係にあるように思います。だから使ったらよくわかるなということがあれば使いたいと思います。商品で地域産を標榜されてる商品というのは、なかなかどの地域かわかんないが、とにかく売れればいいというのが商品キャラクターなので、奈良でしかないよというものを売ったりする時は、このレッテルがいいと思います。

 あるいは奈良のイベントのときはもちろんこのレッテル、キャラクターがいいと思います。だから奈良産というのを特定して表現、標榜するときは、こういう地域キャラクターが良いと思います。

 よく商品キャラクターではなく地域キャラクターということだから、地域キャラクターを使ってメリットある企業さん、商品は使っていただけると思います。今どきは例えばカルビーは、色々な地域の展開で地域キャラクターをカルビーに貼って、この地域のカルビーですよというような商品戦略もあるように最近経験いたしましたので、どこでも売っているようなものの奈良で売りますよというようなこと。

 しかし、奈良の外で貼ってもらわないといけないので、外で認知されるには何かまた悪口を言って書いていただくのが全国版になる戦略だったような気もする。道筋はどうなのかというのはちょっとわからないとこがありますが、しかし結局は、キャラクターの後ろにある実質がもっと大事ですので、キャラクターだけが先行してもというようなこともちょっとよぎります。

 キャラクターと実質をなるべく合うように、良いイメージと良い地域づくりと並行するようにと、商品で売れるのと同じようなことですけど、やはり政治、地方政治も含めてリアルでないといけない。いつもこう思うようにしてますので、リアル、リアルのほうがついていくようにと願っています。

時事通信:
 もう1点、せんとくん、多分、露出とか使用回数とかに、あとツイッターなんかもやっていると思うんですけども、何か数値目標を設定するお考えはありますでしょうか。というのは、お隣の大阪府が観光PR担当のもずやんですか、彼が昨年度ツイッターの回数とか、それから使用された回数とかが逐次達しなければ副知事剥奪するというようなことをやっておりまして、奈良県としても例えば数値目標を達成しなかったらクビとか。

知事:
 ああ、回数目標。

時事通信:
 ええ。

知事:
 ああ、回数目標。成果主義ですね。キャラクターに成果主義で、成果主義が主体にきくのは報酬があるからということだが、報酬はせんとくんには実質ないので、成果を決めても余りきかないような気がします。あとフォローするのがいいと思います。これだけツイッターなりその件数が伸びたというのは一つの楽しみだし、誇りだし、そのような道筋をすれば、あとどのようにしてそうなったのかフォローするときには良いと思っています。PDCAのCのほうでね。チェックの段階が割と大事。こういうのがあるって、ツイッターにしろインスタにしろ出てくるのがどれだけかという件数が測れるというのはどういう差が出るのか、ツイッターの多い件数とどうなのかというフォローをするときに、展開、拡散するときの手法の道筋がAタイプ、Bタイプを決めるときに良いのではないかと思います。最初から目標を決めても、私の感覚からすれば、なかなか達成する目標はあまりなくて気持ちだけだと思います。

時事通信:
 県職員には目標は必要だと思いますけども。わかりました。ありがとうございます。

読売新聞:
 ライセンスの無償化ですけれども、色々なバージョンのせんとくんがありますが、これは全バージョンが無償化ということでよろしいですか。

知事:
 そうですね。飛びはねてても、こうしててもね。あるいは写真で撮っても、ちょっとマークしても、全部無償です。

読売新聞:
 官服バージョンとか、春・秋のバージョンとかもあるけれども、それも含めて無償ですか。

知事:
 はい。

時事通信:
 これは県から提供されるイラストが無償なのか、それとも例えばお店とかが自分で手描きしては。

担当課:
 基本デザインがありますので、その基本デザインの立ち姿というものがあるのと、顔だけのものがありまして、それを使った場合でも、例えば周りに花を散らしたりとか、いろんなマークをつくりたいとかいう場合であれば、そういうのをデザイン申請いただいて、うちのほうで確認させていただいて承認する。そういう流れでさせていただいている、そういうことでございます。

時事通信:
 では、ほぼ自分で一からやるとか、そういうのはだめということですか。

担当課:
 それはありません。今の基本デザインの中で。

時事通信:
 県側から渡してもらえるデザインをちょっと回転するぐらいはいいけど、使えると、そういうぐらいですか。

担当課:
 はい、そういうことです。

知事:
 もどきはだめということですね。もどきは割と日本の得意技だって松岡正剛さんが言って「擬MODOKI」という本を書かれた。もどきというのは日本の得意技だと書いてある。

 もどきのほうが本物よりも優秀な場合どうするのか今聞きたかったが。もっと良いバージョンアップせんとくんができたらどうするのかとか、またそれはそのときに考えましょうということですね。それもせんとくんで名前つけたいよと言ったら、せんとくん二世とかつけていいよとか、そういうことになるかもしれません。

NHK:
 せんとくんの職員としての仕事ぶり、人事評価を聞かせていただきたいのですが。

知事:
 良くお仕事されたと思います。県職員の中でも、もっと優秀な県職員もいると思いますが、せんとくんは県職員の中でも優秀な職員だったような気がします。どんな評価というと、動きがアクティブです。せんとくんの構造から動きやすいように作ったおかげだと思います。他のものを評価してはいけませんけど、舞台で飛びはねたりというのは、他のゆるキャラと言われるもののように、ドタドタ感がないですね。はしゃぎ感があるというのが割とせんとくんの特徴かな。

 私のそばによく立つことが多くて、私のほうがドタドタしてたのかもしれませんが、せんとくんは躍動感があるように思いました。仕事ぶりもアクティブだった。ほかの職員の人と比較するわけではないが、職員も大変アクティブですけどね。職員の中でもよく活躍された職員だったというふうに思います。

NHK:
 与えた使命としては、奈良の知名度向上ということだったと思いますが、そのミッションは果たしたのですか。

知事:
 そうですね。新聞記事のおかげもあったと思いますが、知名度が一挙にアップいたしましたし、その後も随分上位で継続していた。もとからそういうキャラクター性といいますか、割と上質なものがあったのかなというふうに思います。県庁に入ったときから大変優秀な職員だと嘱望されて、入庁直後は外でたたかれたけど、立派に戦い残って成長して持続をされたような職員だと、職員の見本みたいかなと評価したいと思います。これからも活躍してほしいと思います。

読売新聞:
 一応確認ですが、最初のときは、誕生したときは1300年事業協会のほうで、県職員になったのはここの資料に載っていますけど、2011年からですね。

知事:
ああ、そうですね、2008年採用で、見習いが3年あって、正式職員が2011年、おっしゃるとおりです。

読売新聞:
 当時もお聞きしたのですが、平職員ということで採用されてたと思うのですが、誕生10年、それから採用されてから7年を期に、例えば昇進とか、そういったようなことはないのでしょうか。

知事:
 無償化ということは相当独立性が多少あるということですが、県の職員のレベルでいえば、10年たったら課長級にはなったんじゃないかと思います。無償化しますけど、県の職員にはかわりない。連れ出すとき、また使用するときは上司の許可を得なさいよというか、観光プロモーション課長が上司ですから、上司の使用許可を得なさいよということになります。

読売新聞:
 でも、課長級でしたら、同格では。

知事:
  課長補佐級でない課長級だから、せんと室、課長級だから、課長そのものよりちょっと下の課長級ということにしときたいと思います。異例の出世ですね。

司会:
 よろしいでしょうか。
 それでは、すみません、その他の案件も含めましてご質問よろしくお願いします。

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県立高等学校適正化について

奈良新聞:
 先週教育委員会が県立高校の再編案、計画案を発表しまして、3校削減という案が出たんですが、それに関するご意見をいただけますか。

知事:
 県立学校の適正化。

奈良新聞:
 はい。

知事:
 県立学校の適正化実施、学校の生徒数が減ってきたので再編しようということですが、教育委員会の専管的な権限だと思っています。公立学校の設置、管理、廃止は教育委員会の専管権限で、その条例が要るので議会に諮られるということですので、私の立場からは、いろいろ報告を受けてきましたが、ほとんど口を挟みませんでした。適正化という標榜を全うしてくださいとお願いしてきました。だから今のご質問に対しても、教育委員会がそのようにされていることを尊しといいますか、その結果というよりも努力を評価したいと思います。再編はやむを得ない状況だと思っています。どのように再編といいますか、生徒数減少に対応するか課題があるということは私の立場からも認識いたしますが、どのような対応をされるのかについての評価は私の立場ではございません。

 一方、教育長と対話をしてまいりましたのは、教育内容については関心がありますよと。教育の質の向上については関心がありますよということを繰り返し言ってまいりました。それは法律が改正になって、教育振興大綱というのは知事が策定できるということになったからです。教育振興大綱で公教育だけでなしに、私立学校教育もそうなんですけども、奈良県の教育の質を向上してほしいという願いは強いものがありますので、教育の質の向上についてはよろしくお願いしますと繰り返し言ってまいりましたが、適正化実施計画、再編、学校の統廃合などについては、教育委員会がよく勉強されていると思っております。

奈良新聞:
 奈良高校の耐震化が困難だということで、今回統廃合される平城高校の跡地に移転することになりまして、ただ、それって伝統校の存続ありきの移転・再編案じゃないかという批判もあるんですけども、その辺に関してはどうですか。

知事:
 その再編自身の権限は教育委員会で、他人事みたいな所感になりますが、いろいろなご意見を言われるのは、場所の移転と名前の変更について言われているような感じがします。場所の移転について言われているのも、名前の変更について、名前がなくなると言われているのも、これからの生徒さんではなく過去の生徒さんのような気がします。そうフラットに言ってもいいのかわかりませんが、ノスタルジーじゃないかと私は思いますが、今後の生徒さんの扱いをよくしようというのが、教育の質の向上。それと環境の整備などとても大事な行政課題がありますので、過去の人をどう扱うかというのはなかなか難しいですが、それも含めて教育委員会が対処されているように思います。今のは知事としてよりも、非教育委員、非教育関係者としての外からの見立てにすぎませんので、教育のこれからというのと、また教育のこれまでというものの、これまでのほうに重点がかかった意見かなと。印象だけですけれどね、そんなふうに思うところもありました。

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民泊の届け出について

NHK:
 民泊の法施行が迫っていますが、届け出の件数を昨日聞いたところ、8日現在で県内21件。少ないような気もするんですが、その受けとめと今後の課題を伺えますか。

知事:
 民泊の状況、奈良県の状況と全国の状況、6月15日の届けの締め切りを控えて急には上がってきているんですが、実際にこう見てみますと、民泊というのは住宅を利用して営業されているから、届け出しないで営業を続けると違法民泊になるし、営業しないと別に普通の住宅になるという事情があるのかなと思います。そういうことは予測だからわかりませんが、お客が来そうになると届けようかと思っておられる方もおられるのかなと。これはわかりませんけどね。いつでも届けられるという状況で、届けると営業ができるからと思っておられるのかなとも。ちょっと勝手な見方ですけどもね。

NHK:
 やめてしまうというよりは、様子見をしているんじゃないかと。

知事:
 そうですね、住宅はありますのでね。旅館だったらね、人を雇ったりするから営業を続けるか続けないかというのは経費にかかわりますが、住宅民泊というのは経費があまり要らないという特徴がありますので、そのまま住宅として置いておいて、今までも空だったんだからと思う人もいるかもしれない。商売がはやるようだったらあけようかと思われているのかな。その割合はわかりませんけどね。それと、これから出てくるのに、民泊で届けるのか旅館で届けるのか、2つの種類があります。どちらも平準化して、どちらでも似たようなことにはなってきているように思います、規制の程度ではですね。本格的にこれから続けようと思われる方は旅館業法で届けられるのかなという感じもしますが、どちらでも同じようなことができますので、それは選択ということだと思います。最初に申しましたように、届けたらいつでもオープン、サイトに載るんだからというふうに思っておられる面もあるのかなという、出足が遅いという点についてはそんな感じがします。6月15日までに届けないと後営業ができないということだったらすごい選択になりますが、届け出ればずっと後はオープンできますからね。届け出たときから受け入れられるということだから、気楽な営業ということもあるのかなと思ったりもします。

 だから、これからの動向をずっと見ていかなければと思うんですが、違法民泊と言われる不適正民泊はどんな実態なのかなと。私は、届け出て、これはいかにもおかしいよと、これは届け出受理できないよというような民泊はどんな形態であるのかということに興味があります。届け出の形態がとても簡易ですので、そのように届け出た時点での違法性にはハードルは低いような気がしますので、あまりそういう点はないのかなと。ホテル・旅館は一緒になりましたが、旅館業法は受け付けなどいろいろ参入障壁が結構あったんですよね、設備投資が要るとかね。今度はその参入障壁が届け出という、これは障壁でもないんですが、参入手続がいるなら、いつでも届けたらいいよと思っておられるかもしれないから、これは様子見てないとわかりません。

NHK:
 闇民泊が今後もはびこるというような懸念は、今のところはないという。

知事:
 そんなふうには見えないですけど、届けたらできるんだから。闇の実態は何かということがもう少しわかればね。私は闇ですといって届けてくれたらすごくわかりやすいんだけども、届け出ると闇が全く闇でなくなるという程度だったらね。闇民泊って、無届け民泊というだけかどうかはよくわかんないんですけどね。何が悪い民泊かというのを、届け出ると、あと何か事が起こると指導を受けるからというのを嫌がっておられるかもしれませんが、しかしそれは民泊という、知らないとこで泊まるんだから、日本はとても安全で程度も高いと思うんだけどね。それでも遠くから来られた人をちゃんとしようということですからね。

NHK:
 大阪が違法民泊の取り締まりチームをつくりましたが、状況、件数が全然違うのでというのはありますが、そこまでは考えてはいないと。

知事:
 奈良はそういう実態ないのかなと思います。大阪の違法民泊の実態がもう少しわかればね、こういうような民泊はどこかにあるんじゃないのとまた探索することはありますが、まだ実感が湧かないんですけどね。実際に闇民泊に泊りに行けば、こんなものだった、これは大変だということがわかる、そういう報道はないですかね。

NHK:
 頑張ります。最初に戻りますが、21件という現時点での届け出の受けとめに関しては、奈良県が全国一客室数が少ないという課題を踏まえると、高級ホテルの開業にはまだまだ時間がかかる中では、現時点良質な民泊が足らないという意味で、残念感としてはどうですか。

知事:
 先ほど申しましたように、民泊の営業実態、その質的なものより量的なものは、どんなふうに民泊利用されているのかということになりますよね。ならまちの奥のほうによく旅行者、外国人の方がキャスター付きのバッグをひいて行かれますよね。身なりはバックパッカー的でもない普通の方がならまちの向こうに行かれるのは、ホテルがあるのかな、民泊かなと思ったりもするんです。ああいう身なりで行かれる方は、普通に泊まられているんだろうなと推察します。

 街の中までキャスター付きのバッグをひいて行って泊まるのは、フィレンツェでもそうだったし、古い街の中はそんな感じなんですね。ヨーロッパの古い街は、真ん中は車もせせこましいし、ごろごろと行って普通のアパートみたいな、ホテルと書いてあるところにチェックインするような古いまちは多かったですね。日本もそんな旅行形態ウエルカムというような、ヨーロッパ風になってきたように思います。

NHK:
 民泊の予約サイトで100件以上あったんですが、この前、Airbnb(エアービーアンドビー)が法に適してないものは非掲載にしたんです。届け出が今20件というと、残る80件以上のところが、泊まれなくなっちゃうお客さんもいて、そういう意味では奈良の宿泊難民が出ても大変だなと僕は思っているんですが、そのあたりどうですか。

知事:
 どういうふうになるんだろうね、宿泊できないと。今でも奈良に宿泊しにくいという声は時々聞くんですよね。予約とれないって聞くんですけどね。それは民泊の予約がとれないというよりも、普通のホテルの予約がとれないと聞くんですね。奈良でイベントに行きたいときがあっても、奈良へ泊まりたいという人が僕は着実にふえているような気がしますが、予約がとりにくい観光地になってきたと思いますので、バラエティーのある宿泊施設をまだまだふやしてもお客さんは来るなという感じはするんです。民泊はその形態の一つだと思うんですがね。民泊需要がどのように動くかということに関心を持っています。

 そんなにお客さんが来る民泊をオープンしていたら、もうどんどん引きも切らないで予約を断るというんだったら、ほかの民泊も開いていくと思うんですけどね。オンシーズンのピークになってくるとそういう状況で開かれるようになりますが、今オフ期かもしれませんね、6月はね。8月になるといろんな観光地の民泊届け出がふえるような気がします。また秋になると、奈良だと秋の正倉院のときはすごくふえるんじゃないかなと思います。そういうピークがふえて、そのまま開業されるような気がします。今は様子見なのか、どういう動きなのかわかりませんが。

 泊まったらひどいホテルというのは、一番かなわないですよね。アメリカ留学時代は本当にひどいホテルで泊まったことがあって、まいったな。

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東アジア地方政府会合への北朝鮮参加について

奈良新聞:
 昨日から今日にかけてやっている米朝会談ですが、東アジア地方政府会合がまた今年も11月にありますが、先月8日の定例会見の時に北朝鮮をどうしますかとお尋ねしたとき、知事は完全非核化が条件だとお答えになりました。今ああいう報道が出てきた中で、どうですか。やはり前向きに進んでいくんですかね。非核化の見通し自体は、国の間のことはわからないでしょうが、もし今日の報道にあるような形で北朝鮮が本当に約束したんであれば、韓国だって中国だってと関与することになれば、東アジア地方政府会合自体が、これらの地域を全部巻き込んでいるわけですから、そういう話が出てきてもおかしくはないんじゃないかと思うんですが、そこへどういう踏み込み方をしていかれるお気持ちがあるのかなということです。

知事:
 私の立場からの見立てって参考にはならないと思いますが、政治の、地方政治の端くれで仕事をしてますとね、国でも外務省政務官をして外交の仕事もちょっとはしたという経験、わずかの薄っぺらい経験ですが、それを踏まえると、国内事情と国際交渉というのはもう絶対裏腹だと見えます。それを結びつけて我々に理解できるようには、両方見て考えないと、いろんな記事を突き合わせて考えないといけないように、自然にそうなります。

 具体的に、これは報道されたりもしてますが、アメリカの立場は、ロシア、中国、北朝鮮も当然その交渉相手の足場というのは必ず見るように思います。足場は何なのか。トランプさんの足場はどこまで見抜かれているのかということを、諜報も活躍して足場の本音を聞き出すのは常でありますので、昔からそういうことに各国たけていたと。日本はおくれていたというような気も。

 トランプさんの足場は、例えば中間選挙があると、次の大統領選があるということは絶対に思っているに違いないと思われて交渉させられて、弱みにつながるとこもあるわけですね。すると金正恩さんの足場は何かということは、アメリカはものすごく分析していると思いますが、だから私ごときが言うようなことじゃないんですが、相手の足場を見て交渉するというのは常套手段だということを、政治の端くれにかかわっていると思いますということを言うだけです。金正恩さんの足場とは何なのか。これはわかんないとこも多いんだけど、アメリカの見立てもよくわかりませんが、一説には国内的な足場が弱くなっているという見方も、独裁政権だからそういうことはないだろうなとは思いますが、経済的な足場はもしかして弱くなっているかもしれないと思うところもあります。そうすると、金正恩さんの狙いは制裁解除、経済活性化あるいは援助の引き出しというようなことは今までもありましたが、そのディール(取引)のために非核化をやるという戦略の筋が見えてくるような気がします。

 私の言っていることは合っているかどうか全くわかりませんが、国内政治とディールの対応というのは必ず結びついていると思います。だから現実にはどうなのかという分析が、私はその能力はありませんが、結びついていると思いますということが一つです。

 その結果どうなのかは、国内の事情との、また戻って足場の再構築、足場への働きかけ、それとディールへの戻しの繰り返しになるんだと思います。その間でお互いの観察が、その経過観察が必ず行われると思います。直接のディールの場において。そのときに同じ場で韓国、日本、ロシア、中国もそのディールの外、非核化というテーマについて6カ国協議という場がありましたので、その関係者ということはどんな参画があるかって、もう一つのウオッチポイントだと思います。日本、韓国、ロシア、中国の立場はどのように動くんだろうかと。これは米朝会談の様子を受けて、それぞれ各国が分析され始めていると思いますので、その分析の経過報道もまた出てくると思います。今の立場には関心は低いですけども、それには多少関心は持っています。その中で日本の立場、あるいは奈良の立場とは、どのように貢献ができるのかということは、何か事情が発生すれば、いい方向で働く可能性はあるかと多少発想します。

 その中で北東アジアの関係をどうするかということになりますが、今までの多少の経験からすると、私はマルチ(多国間)の場があったほうがいいと。東アジア政府会合もそうなんですけど、マルチなんですね。バイ(二国間)とマルチとに国際交渉は分けられますが、米朝会談はバイそのものですが、バイラテラル(二国間の)ですが、それがマルチに転換されるかどうかが一つのポイントかもしれません。マルチの場だと複合的、複雑な交渉になるので、結果がうまくストレートには出ないわけですが、バイでもいろんな国内との要素もあるからなかなかその見通しがわからないし、どういう動機でどうなったのかわからないとこもありますが、マルチのほうが、ヨーロッパがそうでありますが、お互いにバランスがとれる地域になる確率は高いように私自身は思っています。北東アジアマルチの地方政府のマルチというのを志向して、東アジア地方政府会合をしてきたわけですが。

 昔、北東アジア海上保安庁長官会合というのを世界で初めて退官間際にやったんですが、アメリカ、ロシア、中国、韓国、日本、5カ国。後でカナダが入って6カ国になった。北朝鮮は入らなかったですね、不審船があったから。不審船と核というのは随分違うけども、そのころ言っていた。それが今、世界海上保安長会合が最近されたとなって、マルチのまだ世界海上保安長会合は形式的だけど、北東アジアが東南アジアに上って大西洋にも出たというので、マルチはわっとプラットホームとしては成長する可能性があるなと思います。

 東アジア地方政府会合に例えば平壌が入ってくるとか、誰か向こうのまちが入ってくるようになれば、これは北東アジアの関係がよっぽど安定してきた証拠のように思います。そのような日が生きている間に来るかなあ、奈良県が東アジア地方政府会合を続けている間に達成できるかなあ。心もとない言葉になりましたが、結果としてそうなれば安定した証拠だと思いますが、入れたら安定するかというのとちょっと違うようには思います。

奈良新聞:
 これから今日みたいな時点から何カ月先か、1年先かわからないですが、事情が動けばその中へ入ってくる可能性としては当然あると。

知事:
 実は東アジア地方政府会合みたいなものは、環日本海地方政府会合って随分前からあるんですよね。それには北朝鮮が入っていたと思うんだけどね、環日本海だからね。ロシアのウラジオストクとか、新潟が熱心だったかな。慶州市か慶尚北道が事務局を持っていて、事務局でお金を集めて、環日本海地方政府会合という事務局があるんです。そこに入らないかと言われたことはあるんですね、韓国を訪問したこと。いや、こちらは環日本海じゃないしという言いわけもあってですね。いや、環日本海の仲間が集まっているけども、東アジア地方政府、北東アジア地方政府会合のような看板になっているんですよね。あんまり開かれてないように聞きましたがね。北朝鮮も入っているからか、入っていたように思ってたんだけど、ちょっと不確かですけれども、環日本海だから北朝鮮入れる、そちらのほうの会合がより関心が深いように思います。

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リニア中央新幹線について

時事通信:
 先日行われましたリニア中央新幹線の建設促進期成同盟会で、奈良県が提案しているリニア「奈良市附近」駅と関空との接続新幹線構想について発言はされたんでしょうか。またどのような反応があったでしょうか。

知事:
 発言しました。

 リニア中央新幹線の建設が進んで出席する知事の数が減ってきたように私は思いました。愛知県が会長ですが、愛知、神奈川、山梨、奈良、4県の知事だけになったので、ちょっと時間もあるかと思い発言しました。

 リニアについての奈良の立場という意味で発言を改めていたしました。2つの大事な点として、リダンダンシーと結節性を言いました。リダンダンシーは、東京、大阪という日本の二大都市圏を北陸、東海道、中央新幹線の3本のルートで結ぶ、違うルートで結ぶというのがリダンダンシーです。

 地震に襲われる懸念や、昔ならば艦砲射撃で襲われるという山県有朋さんの懸念もありました。今はミサイルが1発落とされたら3つともやられるということがあるかもしれれません。昔は兵員輸送を鉄道でしていたからということもありますが、経済をとめるには交通をとめるのが一番手っ取り早いということもあり、1つのルートがとまった時のために、別のルートを確保しておく。それがリダンダンシーです。まさにリダンダンシーというのが大事で、そのためには京都から離して奈良が必要ですよということを1つ申し上げました。

 もう一つは、結節性は4つあると理屈のようなものを言いました。大都市間の結節性、地方の中間駅から在来交通体系の結節性、それから、地方都市と大都市及び地方都市間の結節性、たとえば奈良と長野とか奈良と岐阜というような田舎の結節性です。最後にいわゆるインバウンドの結節性で、関空とリニアとを直接結ぶ構想を持っているということを、ちょっと考えて理屈立てて訴えました。

 会場の反応は穏やかなものでした。ただ、そうやって理屈立てて言ってしまったので、議連の会長の川崎二郎さんが出てくるときに、おまえは相変わらず学者みたいだとちょっと皮肉られました。単なる要望の会ではありますが、結節性の観点から、我々は中間駅と在来交通との結節性を主に訴えておりますので、理屈立てしておかないといけないと思いました。

 大都市間の結節性はあまり関係ありません。大都市と地方の結節性、地方都市間の結節性はとても興味があるという状況ですが、あまり奈良以外の県が言われないのは、インバウンドとの結節性についてです。大阪の副知事も来られていましたので、大阪からは、『なんだ、奈良を通って結節するのか』という反発があるかと思いましたが、ありませんでした。また、出ていくときに竹本先生には笑って挨拶をしていただきました。ですので、どのような反応だったかというと、ほっとする反応だったいう印象を受けました。

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社会保障制度について

時事通信:
 先日、知事が行かれました政府の社会保障改革推進会議で、あちらでもいろいろ発言され、結構奈良の取り組みを横展開するとか、あと地域別診療報酬、肯定的な意見が委員の方々からあったと思いますが、知事として受けとめはどうでしょうか。

知事:
 社会保障改革推進会議では、議長は清家篤さんという方で、結構ハイレベルでした。いろんな有識者がおられるのと、役所のほうは総務省の奥野副大臣とか、内閣府の越知副大臣とか、いろんな副大臣クラスが数人出ておられました。プレゼンを2回させていただいてということでございましたので、その前に実は清家さんに直前に控室で挨拶させていただきました。とても積極的に評価してますよということをおっしゃって、そのコメントも大変評価されるコメントでした。またその評価するコメントも自分で書いておられましたので、光栄なことでございました。

 評価されるポイントとしてこちらが感じましたことは、社会保障制度、とりわけ医療の皆保険制度です。皆保険はすごくすばらしい制度だと思います。世界で皆保険を実現している国はほかにないわけで、高齢化社会に向けての基盤インフラ、大インフラだと思います。それを壊れないように持続力を維持するというのが大きな目的だと思います。

 その中で、保険ですから、保険と支払いのバランスでもっているわけです。その間に公費をつぎ込んでいますけど、公費を野放図につぎ込むんじゃなしに、バランスを持って意味のある公費のつぎ込み方というのは大きなことだと思います。

 公費をつぎ込んでいると、医療費の出し方というのがずっと出てきていると、供給サイドが需要を決めると、こう言われてきております。供給サイドが需要を決めるということは、医療の真の需要というのはマーケットではかれないというようなことが今の通説では言われております。

 だから医療費の支出には限界がないのかというのが大きなポイントだと思います。個別の医療費、医療施術のやり方には、医者のご判断ということで、ある面やり方に限界はないかもしれませんが、マクロで見ますと、同じ高齢者がおられるところでも、すごく医療支出が多いところとそうでないところがあるわけですね。

 それはどういうわけかということは、医療社会学的な分析が進んでいます。それをどのように制度に反映するのかというのが一つの、保険の場での反映というのがポイントのように思います。

 社会保険、医療保険の持続力を、今のケースでは国民健康保険を県営化して持続力を高めるには、医療費適正化と保険の持続力というのをどのようにリンクさせるかというようなことが課題になっていました。奈良県は36年に向けての医療費、医療の内容は変わらないが、高齢者がふえたり人口が減ったりすると現数が変わるため、その分だけはふえることになります。

 高齢化になると、55歳よりも65歳のほうが医療費が多いという実態があります。65歳の割合がふえると医療費がふえる、人口が減ると医療費減るということです。その2つを掛け合わせて36年の医療費、国民健康保険の医療費水準を決めております。それに保険料を見合うようにセットしようと、保険料をそれに合わせようという作業を始めたわけです。

 しかし、そのときに医療費が上がってしまったらどうするのか、保険料を上げるだけかというと、診療報酬を下げるという手もありますよと言ったわけです。それが医療界、医師会のいろいろな反発を呼んでいます。しかし、中央の医師会はよくわかったと、そういう理屈なら選択肢としてあるんだなという受けとめ方のように思っております。

 社会保障改革推進会議では、そのように理屈を立てて国民健康保険の保険マネジメントを、総合マネジメントをしようとするのは奈良方式と呼んであげるよと、大変結構なことだというような反応であったように思います。

 実行するのはこれからです。医療費適正化計画と、国民健康保険県営化と、それと地域医療構想の展開、その三位を総合マネジメントするというのが今、3つとも県知事の仕事としておりてきたと思っています。それがこの30年度からスタートしたという非常に珍しいタイミングのように思っています。

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リニア中央新幹線について

奈良新聞:
 竹本さんのお話が出たんでちょっとお聞きしたいです。これ多分報道されてないと思いますが、4月に自民党の特別委員会で知事、説明しておられると思いますが、最近竹本さんと関係はどうなんですか。ウインウインでなかなかうまく進んでるという感じなんですか。

知事:
 自民党の超伝導リニア鉄道に関する特別委員会との関係で、私が一番神経をとがらせるときは、京都を参画させようかと時々おっしゃるときです。何ですかそれはと、なぜ京都なのという対応をしょっちゅうしております。だからリダンダンシーを強調したのも、京都から離すというのが三本の矢じゃないけれど、北陸、東海道、中央新幹線という三本線の最大の目的じゃないですかと繰り返し言っております。京都という声を聞くたびに、こう思います。それはご理解ください。これは不快感を与えるかもしれませんが、現実に京都はその特別委員会に入ってきていないし、沿線都府県のほかの知事さんはずっと同じ中央新幹線ラインで構成されていると思っております。

 4月のときの自民党特別委員会の会合は、政治的なステージよりも落ちついたステージだったと思っています。竹本先生が相当積極的に発言されており、「実務的」なという言葉を使っておられました。私が言った言葉でもありますけれども、「信頼関係に基づく実務的な連携協力関係を構築していきたい」と、そういう言葉で言いますと、「それでいい、それでいい」というような反応がございました。

 これからは実務的に環境影響評価をどのようにするかというのがとても大事なことになってきています。だから政治的判断よりも、実務的な判断を後押ししてもらうほうがいいかと思っています。

 何よりもその政治的な判断ということからいえば、整備新幹線の公共事業方式とは、リニア中央新幹線は全く違うわけであります。というのも北陸新幹線などの公共事業方式と全く違って、リニア中央新幹線はJR東海が全部自分の費用でやると言っているので、政治的な介入は極端に嫌われております。

 今もそれはひしひしと感じます。それは国鉄改革の経験から、葛西さんを中心にJR東海さんが守ってこられた態度ですので、それは尊重しなければいけないと感じております。

 民営で投資されるため、国の政治とは一線を引かれても地方公共団体とは手をつながないといけないじゃないですか、これは政治じゃないですよ、実務的な協力関係ですよということを繰り返しJR東海さんに訴えてきました。

 自民党の会合ではリダンダンシー、結節性に加えて、もう一つ言いましたのは、JR東海と地方政府との協力関係の要諦というのを、3つ上げました。

 1つは、土地取得です。駅の取得あるいは立坑、トンネルを掘る場合でも立坑が要るわけですから、土地の取得を上げました。

 それから土砂捨てです。土砂の捨て場を確保することが2つ目です。

 それから3つ目は住民調整です。いろんな住民の方がクレームをされるのが、こういう大きな工事だと普通であります。特に最近、東の工事で出てますのは、例えばですが、名古屋駅周辺がなかなか大変だという話がありました。あとは長野、山梨の知事がおっしゃっておられましたが、山梨の甲府周辺の駅でも何か言っている人がいるとか、相模原でもいるとか、周辺住民の心配ごとがいろいろ出ますので、それを昔の国鉄みたいに“そこのけ”というのはちょっと無理だということになります。それは、地方政府が間に入って住民調整をしたほうがよっぽどスムーズじゃないですかということをアピールしてます。

 繰り返しになりますが、土地取得と土砂捨て、それと住民調整の3つは地方公共団体、とりわけ県と仲よくしたほうがいいんじゃないですかということをJR東海に繰り返し言ってます。それは理解されているように私は思います。

 奈良において具体的にどうするか、どこでどうするかはまだこれからですが、態度がやはり、変わってきているように思います。鉄道局にはしばしば行きますが、JR東海の基本的な政治介入排除というのはすごく強いものがあるということを先日の鉄道局訪問でも確認いたしました。

 しかしもっと実務的にやろうという雰囲気は前よりも出てると聞きましたので、地方政府と実務的な協力関係を奈良市附近という中間駅で築き上げるというのがこれからの大事なことだと思っています。

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旧優生保護法について

読売新聞:
 旧優生保護法の関係で、奈良県内で適否が判断された37人のうち3人の方が法律で義務づけられていた優生保護審査会を開かれずに、いわゆる持ち回り審査と呼ばれているものが、されてたんじゃないかというのがわかりました。これは全国いろんな県で起きていることですが、いわゆる法に基づかずにそういう審査をされて、奈良県でもそういうことがあったということについてどのように受けとめられていますか。それと、三重県では、それに対して追加調査をしたとありましたが、国のほうの調査はありますが、それとは別に県としての対応を新たに何かされるという予定はありますでしょうか。

知事:
 今の持ち回り審査というのは、報告を受けています。起案文書を届けていただきました。昭和36年9月18日起案、優生保護審査会の起案文書ですけど、そこに持ち回り審査による上記承認をもってと書いてございます。奈良県においてその持ち回り審査の起案文書は今まで6件見つかっているという報告を受けております。その6件のうち4件には、症状により急を要するというのが別パラグラフで書いてあるのもあるということです。

 それは、母体保護の観点からやむなく対応したことかもしれないというようには見えるのが6件中4件ではありますが、基本的な観点になると、持ち回りは余り望ましくない手法だと思います。緊急性があったかもしれないという点はあるが、やはり優生保護審査会という審査をして結論を持ち回って承認するというよりも、審査をして承認するというのは当然ですが、望ましいというふうに改めて思います。

 それが36年の起案ですけども、今どのように対応するのかということですが、もちろん持ち回りとか、そういうことはもう取り返しができません。そのため今はどういうことでそのようになったのかということを検証するという、その事案をどのように見るかという判断、今日の判断をする必要があろうかと思います。

 そのときの判断をする、そのやり方というのは、その審査会は各県の起案でありますので、昔は各県の審査会ということで、地方は国の執行機関であることが多かったです。

 国と同じようなことを各県横並びでしてきたと思いますが、独自判断よりも国から、各県、優生保護審査会でも同じようなことをしなさいと、おそらく通達が出た、そのような分野の一つかもしれないというふうに感じます。だから同じような事例がいまだに見つかるという事情が昔の地方分権の対応からあるのかなと推察いたします。後をどのようにそのフォローするか、検証するかを、このような事情、経緯からすると、国の指導がまず中心で、それを超える場合もあってもいいですが、どのようなことを国がやってほしいのか、国の意向の伝達がまず第一というふうに思います。

 それともう一つはこういう、これは基本的に人権にかかわる話だというので、今日的問題があると思います。人権を無視した、踏みにじったのでないかと思われる節があります。関係者の申し出とか人権の復旧とか回復というのは、関係者の申し出によるところで個別的に復旧するという手法があります。それは民間の申し出を待つということがもう一つの手としてあると思います。それから、そのような動きがあれば、我々実行機関でありますので、裁量がふえたといえども、この件については、かつて執行機関、あるいは今でも実行機関ですので、真摯に対応するべきだと思います。

 もう一つは、他県の例をおっしゃったので、他県もするから同じことをするじゃなく、他県の成果、うまくいったならば、まねようというのはいつもやっていることです。だから、「ああ、そういうやり方だとこういうふうにできたんだ」ということまでいけば、いろんな取りかかりをされるのはありがたいことだと思います。それで他県のいい成果、あるいはもしうまくいかなかった成果は、コストがかかります。その手間を職員にかけさすのは、うまくいかなかった例はあんまりさせない、うまくいった例は見習わせようという、いつもパクリをしていいんだからと言ってますので、いいパクリができるようなケースが出れば、それも視野に入れて対応したいと思います。

 国の方向性の面をちょっといろいろ、国は訴訟を受けるほうだから慎重にならざるを得ないのかなと思います。しかしやっぱり検証はしないといけないと国も言ってます。そこで、国がどのようなやり方ですべきかと、言うのかということを基本とし、それから民間の人はこうしてほしいという、民間の個別の人権にかかわる話だから、他県の成功事例というようなのもあれば見習っていきたいと、その3つの対応というふうに考えております。ですので、奈良県独自で何か考えているかというと、今までそこまでまだ知恵が出ませんという状況です。

読売新聞:
 そうすると、今現在、国の調査が進んでいて、今月中に回答しなさいよというのがどうやら来ているようなので、それを受けて何か、例えばそういったような持ち回り審査に対しては何かしろというのがあればそれに当然従うでしょうし、ちょっと様子見というぐらいでしょうか。

知事:
 そうですね、持ち回り審査については、今となっては望ましくなかったと思われます。ただじゃあどうするのかというのは、それは、ならどうするのかという知恵がまだ出ないような感じがします。そのような持ち回り審査まずかったねというだけで済むのか、何か具体的な手があるのかという点は、これは知恵を出す県もあるかもしれないし、知恵を出す国の役人がいらっしゃるかもしれないしという状況かと思います。

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児童虐待事案を受けた県の取り組みについて

時事通信:
 先日、東京都目黒区で5歳の女の子が虐待死してしまった件で、奈良県でも過去に何度か虐待による死亡事件がありまして、県として虐待死を防ぐような手だてのお考えはありますでしょうか。

知事:
 新幹線の事故もかわいそうだと思いましたが、目黒区の5歳のお子さんもかわいそうです。報道や記事を見ると、感情が揺らいで、妻ももう見てられないという、まだそんな状況で、本当にかわいそう。今、子どもが小さい時の時代の写真を整理している途中だから、あの時代の子どもはかわいい盛りです。だからそんな個人的な状況もあって、もう記事を見られないというような感じで、そのような状況でありますので、クールに対処というところまで政策的な手が伸びていないかもしれませんが、香川から東京に移られて虐待が続いたというので、行政的な関心は児相の連携と言われておりますが、虐待傾向のある家庭における子どもをどう救うかという、我々行政でできる範囲をもう少し拡大して、セーフティーネットを拡大するという課題は当然あるように思っています。そのときの連携にミスがあったのかどうかという課題もありますし、そもそも積極的セーフティーネットは難しいので、来られたらどうこうということがセーフティーネットで、指摘時に家庭は守ってくださいと。

 これは保守的な考え方かもしれませんが、家庭は家族で守ってくださいという考えが伝統的な考え方ですが、だんだん変わってきているのは、家庭の安全も外部の人も入って守ろうと。地域や社会、行政で守ろうというふうに変わってきていると私自身は感じます。家庭で守るべきだという、保守的と言ったら悪いのですが、伝統的な考え方の人もおられますが、すると行政の立ち位置というか、介入の積極性というのはどの程度までするのか。もちろんセーフティーネットに来られた方は守らないといけないということになります。だから来てもらえずにそのまま帰って殺されてしまうというのはどうするのかという課題、非常に大きな課題、根本的な課題が含まれているように思います。

 もう一つは、新幹線での他傷もありますが、他傷も自傷も、他人を傷つけるという点、何かエネルギーがあると思います。アンガーマネジメントと言われる分野ですが、アンガーをどのようにマネジメントするかということが社会的な課題だと思います。個人のアンガーが発生したときの行動パターンをどのようにマネジメントするかということは、政治的な課題以前に社会的な課題だと私は思っています。

 学問的にアンガーマネジメントを考えておられる方もおられ、早稲田大学と提携して、本田先生という女性の先生が、学校でのアンガーマネジメントを先生に教えようと。それを見習って、児童のマネジメント、先生自身のマネジメント、ペアレントのマネジメントをどうするかという、マネジメントスキルをどう伸ばせばいいかという研究をされ、それはアメリカの研究だから、アメリカは激しいからそういうような学問も発達するのですが、日本はそういう発想はなかなかなくて、アンガーは抑えるにこしたことない、抑えろ、抑えろといっていると、ばかっと爆発するというのが日本の流儀なんです。

 アンガーマネジメントで、少し話が飛びますが、韓国のご家庭だと韓流ドラマで、とにかくアンガーを言葉でぶつけ合う、手は出さないということが韓国の流儀。韓国の人から、日本人はすぐ手を出すなと、こう言われてしまうことがあるんです。ご家庭で言葉でぶつけ合うのが平穏か、我慢をしていざという時にえいやと刺すのが平穏かというと、日本人は我慢に我慢を、堪忍袋の緒が切れたといってぶすっとやるという流儀なんです。韓国人から見ると日本人は殺伐だという。しかし韓国の人に、毎日どなられてたら気持ちいいですかというと、いや、それも困るとおっしゃる。

 そのようなレベルの話ではないかもしれないですが、メンタルなエネルギーをどうコントロールするかということはすごく大きなことだと思います。その流儀を時代とともに変わっていく社会の構造、住んでいるのは田舎の村、農村、まちのアパート、みんな違って、少子化、核家族になってくるとまたそのバッファがなくなってくるというようなこともあるので、そういう家族構成とか社会の居場所の中でのアンガーマネジメント・ソーシャルスキルを伸ばすという関心はとてもあるのですが。先ほどの学校の中でも、アンガーマネジメントを学校のスキル向上の一つのアイテムにしてくれということを教育委員会には叫んでいますが、話がどんどん飛んでしまいますが、問題がとても深いということを感じる次第であります。

 それにどのようにタックルするのかという点は、やはり根本的にこのケースというだけでなく、目黒と同じケースというのも、児相の移管のときだけで致命的だったのかというのは、もっと深いところがあるように思っていますというのが今の所見です。

時事通信:
 児相間の連携だけが問題ということではないということですか。

知事:
 それも大事です。

時事通信:
 そのあたりも含めて対策等を検討されるおつもりはありますか。

知事:
 今までも基本的なことを折に触れてやってきている面はあります、学校のアンガーマネジメント。児相という県の役割がありますので、児相の能力アップといいますか、どのように対処するのかという。それからきっかけに、学校でDVがあったときに、警察も入ってもらって物理的阻止という、隔離という、子どもを、先ほどの子どもは家庭で育つべきだという保守的な思想が、逆に子どもを虐待死させてないかというところまで、気が及びます。子どもは外で、この子はそういうご家庭の今の事情だと、ご家庭の事情も変わりますが、今の事情だったら離れて育てたほうがいいんじゃないかと思うこともあります。

 奈良県の児相を改装して、食堂をとても明るくした。こんな明るい子が来てるのかと思うほど明るい食堂になっています。子どもさんというのはおいしいものを食べて仲間としゃべっていると、親がいなくても明るいです。よく親がなくても子が育つと言われますが、親がわりはいります。社会の子というところまで体制ができていないことは事実であります。考え方がいろいろ違う家庭をどう扱うかということは、すごく考え方が違う分野なので、それを本格的にタックルする政治的な動きにはなってないですが、だから事象が出てくるのを報道されたり悲しんだりする現実が日々あるわけですけれども、やはり根本的なことを考えていると解決の道が、緩和される道が多少あるかと思います。勉強したいと思います。

時事通信:
 関連ですが、今回その対策として一つ注目されているのが、児童相談所が警察と虐待情報を全件共有するということが注目されています。今まで重大事案しか共有していなかったことを、ささいなものも共有して、早目に踏み込んでいくとか。高知と茨城と愛知で始まっていて、2日前の埼玉県の知事定例会見でもやりますということで、4県目が出てきたようです。何か検討する余地はありそうですか。

知事:
 もう検討は始めてます。児相と警察との結びつき、学校で児相に来るまでのその異変を先生が察知して、警察と相談する、市の児相に相談するというようなことは奨励しています。現場が皆そのように、これは形式的な申請書を書けという話ではなく、現場で察知力を上げるということになるので、どのような効果があるのかやってみてそのようにしようということで、警察がどのように入るかというのはもう既に、警察に相談するのに遠慮するなということはもう何年も前に言っています。その時に、先ほどの私的自治という言葉で、私的自治不介入、ストーカー事件もそうですが、警察がどこまで立ち入るか。警察も躊躇されますので、家庭への警察の介入の仕方。事件が起こると、逮捕とか検挙になりますが。

 だからよく警察で言われるのは、相談に行くと、事件になってますか、事件になるまでは予防という、昔、予防拘禁という政治的な拘禁があって、それに皆反発、今でもされてると思います。そういうことはあってはならないんだと。予防、危険思想の人を検挙するというような、家庭で危険な親を検挙するということにすぐに短絡的になるといかんことは間違いないわけですけれども、警察は事件になると公権力があるから逮捕や聴取ができるわけで、最終的な事件の逮捕ということになるわけで、事件にならないとしません、と抑制的に当然なってます。それが逆に控え、抑制的警察権力ということと、家庭の予防というのをどうするかという今の話があります。通報するのはもちろんいいんだけれども、どうすればいいですかと警察がおっしゃるケースがほとんどです。

 その時に、学校での対応では、アンガーマネジメントの対応は、とにかくその人と向かい合って話を聞きなさい。すると出てくる情報があるでしょうと。警察でなくても学校の先生でもできますと。児相で来られたら、とにかく向き合って当事者に意見を聞くなり、その情報、いろんな体の様子から出る情報を、例えばその情報を書いて共有しておく。すると学校で具体的に奨励しているのは、担任の人が見過ごすともう終わりかということで、担任を複数置いて、ある人の担任観察があると、副担任に情報共有できないかと。個人情報をパソコン化して、それを限られた人に共有して、ここにこんな時にあざがあったと書いてある。それがどうなったかということを次の違う先生がチェックする。それでも随分違います。それはシステム的なディフェンスということに、だから日本はとても下手なところでありますが、そういうシステムができていない。すぐに警察というまでにも学校と児相ということで、学校と児相の関係を強化するということは既にお願いしているところであります。

 学校の現場は、悪口を時々言って、そんなことないだろうなという言い方にするのですが、見て見過ごすという先生はもういないんだろうなという言い方をしている。見て見過ごすというのは、察知力をアップするというのは手間がかかります。手間がかかりますが、察知力を上げてほしいという願いがある。それには、自殺にも関係しますが、見つめるというのはとても大事。そういうことをするには暇がないとも言われるし、そういう能力も開発されてないとも言われるし、現場力ということになると思います。児相に来るとそういう人がたくさん来るから多少スキルは上ですが、学校の先生の本務は教育とかそういうことだから、教えるのを、よし、今日は何教えようかといって来られるから、観察する力よりも自分で言うほうにエネルギーを使われるような気がする。それだけではだめだよということを教育長、教育委員会とはいつも会話しています。

時事通信:
 学校ではぜひそうしていただきたいのですが、今回未就学児ということなので、より警察との関係が大事で、全件共有というと、児相と警察が全ての情報を共有するということが大事そうだという話になっています。それが奈良県でも実施されれば良いなと思ってお聞きした次第です。

知事:
 未就学児に警察、少し短絡的な印象を持ちます。未就学児が家庭におられる。昔は近所の人が家庭の様子をよくわかっていた。児相まで来られる道筋が、一度来られるとよく観察する、警察では生安と言われる生活安全という仕事、生活安全は多岐なので、先ほどの警察が直ちに出るものかという、調書を書くのとか、児相の調書と警察の調書と、警察は事件処理の仕事を中心にされるから、生活安全はまた少し違いますが、学校がないから警察というのも少し違うなという感じは直ちにはしますが、それでは、かわりがあるのかと言われるとなかなかないなと思います。

 保育園に行くと、学校の延長で、もうゼロ歳児就学とか、保育園に行きなさいと言われると、家庭の外での居場所を社会的に作るということも一つだと。そこでの観察や、バッファ効果、効用、救い出し効果をその場で求める。家庭しか居場所がないと、閉じ込めて虐殺されるというのは避けられないかということです。そのような仕組みが要ると思います。

 就学前が無償化になると、安全に育てるということが最大の課題、目標になると私は思っています。それは無償化になると、外へ預けられますと。観察力、手当て力を上げなければいけない、それは公教育の延長を下のほうにやるという手法をとっていますが、就学前教育をどうするかという課題で、これは教育振興大綱の大きな目標にしています。経済的ではなく、学校でも子どもが熱中症で亡くなったりすることもあるもんだから、子どもを安全に預かるというのはとても大事です。

 日本の風習で問題かもしれないのは、通園・通学は子どもが一人で行きます。親が学園で引き渡す、そこまで親の責任だとはっきりしていないから、ひょこひょことこんな小さい子が通学・通園されて、さらわれたりすることは、日本独特かもしれません。それをなくさないといけないと思いますが、そういう仕組みが、子どもは自分で通うもんだという、安全な社会の感覚が残っているんだと思います。それを学校まで連れていくことを親の責任だとするか、学校の責任だとスクールバスを出すかということになると思います。まちで交通安全のボランティアが立っておられますが、そこから外れたら救われなかったケースがあるわけですから。小さい子はかごの鳥で安全に育てないといけないと個人的には思います。

司会:
 よろしいですか。
 幹事者さん、よろしいですか。
 それでは、これで定例記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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