奈良県林試研報No.15(要旨)

森林組合事業の比較分析

斎藤治藏

 森林組合の組合員に対するサービスを量的に示す指標とも考えられる収益は昭和46年から56年までの10年間で全国の森林組合は3.36倍、奈良県の森林組合は1.63倍の伸び倍率を示している。
 その事業の内容をみると全国の森林組合は46年段階で利用部門(造林事業)と販売部門(林産事業)のいわゆる経済事業が定着しており、その後10年間の組合事業はこの2分野に集中した。これに対して奈良県の森林組合事業は46年では利用部門(林道事業)と金融部門に集中していた。その後10年間はこの2つが主事業であることには変りないが林道事業は減少し、全国の森林組合と同じように利用部門の造林事業と販売部門の林産事業が増加し、全体としては分散的となった。

森林組合の経営分析

福本通治

 森林組合の経営状態を分析するため、8森林組合について財務分析・資金繰り分析・付加価値分析をおこなったところ、次のことが判明した。
1)支払能力が上位に属する森林組合でも、資金繰りの分析においては、年度により資金不足となっていることがあった。
2)支払能力の低い森林組合では、労働分配率が高い傾向にあった。
3)粗付加価値額の増加率が低いと、労働分配率が上昇する傾向にあった。

スギドクガ幼虫の発育と摂食量

柴田叡弌

 第1世代のスギドクガを、スギの葉を餌として、卵から成虫になるまで室内で個体別に飼育した。室内では雌よりも雄の方が早く羽化する傾向がみられた。飼育した幼虫は1頭も死亡せずに成虫まで発育を完了した。ほとんどの幼虫は6齢を経過して蛹化したが、わずかに7齢を経過して蛹化する個体もみられた。幼虫各齢期の頭幅を測定したところ、それらはDyarの法則にしたがって等比級数的生長をしていることがわかった。幼虫、前蛹および蛹期間については雌雄間で差はみられなかった。また蛹は雌の方が重い傾向がみられた。摂食量と排糞量の関係から終齢幼虫の摂食量を推定した。さらに幼虫が切り落とした葉量を加えて、1頭の終齢幼虫が摂食によってスギにあたえる被害葉量を2.16g(乾量)と推定した。これをもとにスギドクガの防除基準を考える際の基礎資料として、スギ被害葉率と幼虫数の関係を明らかにした。

化粧ばり集成材の表面割れ

和田 博・坂野三輪子

 化粧ばり集成材の化粧単板に表面割れが生じる原因について、単板の含水率、芯材が有する欠点(節、割れなど)、および接着剤が及ぼす影響を調べ、表面割れ防止法を検討した。結果を以下に示す。
1.気乾状態の単板を用いると芯材が有する欠点が起因となり、表面割れが生じやすかった。
2.芯材に割れがある場合に表面割れが最も発生しやすく、続いてヤニツボ、接着層付近からの割れが多かったが、節の影響は少なかった。
3.全乾状態に近い単板を接着すると、芯材に割れがある場合でも表面割れの発生は減少した。
4.単板接着時に用いる接着剤として、メラミン・ユリア共縮合樹脂よりも架橋性酢酸ビニルエマルジョンを使用するほうが表面割れ防止に効果が認められた。
5.芯材の割れをホットメルト接着剤と木粉の混合物で充てんすることにより、単板の割れ防止に効果が認められた。

吉野スギ心材単板の変色

松山將壯・伊藤貴文

 集成材のツキ板として広く用いられている、吉野スギ心材の単板の変色を起こすと考えられているいくつかの原因について検討した。
 結果は以下のとおりである。
(1)全国的に、スギの造作用材として好ましい色であると考えられているのは、吉野スギの心材によく似た色のスギである。
(2)10℃の冷水中に浸漬しても材色は変化しないが、50℃以上の熱水中に浸漬すると、温度が高くなるに従って暗褐色に変色し、表面の艶も無くなる。
(3)よく乾燥した単板を、高温下においても、変色は起こらない。
(4)単板を高湿度の雰囲気中に長時間放置すると変色を起こす。

製材品の除湿乾燥

小野広治・小林好紀

 スギとヒノキの実大の柱材、鴨居材を用いて、4種類の乾燥条件で除湿乾燥試験を行ない、乾燥条件が乾燥経過に与える影響について検討した。また、除湿乾燥と夏季の天然乾燥の差異についても比較検討した。得られた知見は、以下のとおりである。
(1)スギ柱材の除湿乾燥では、相対湿度は、乾燥初期の乾燥速度に影響したが、乾燥温度は、影響しなかった。また、相対湿度は、割れの発生に影響した。
(2)ヒノキの柱材、鴨居材の除湿乾燥では、乾燥条件の乾燥経過への影響は、認められなかった。
(3)スギ鴨居材の除湿乾燥では、乾燥条件よりも初期含水率や材質の差異の方が、乾燥経過に影響した。
(4)除湿乾燥では、乾燥初期の表層の含水率低下は速かったが、内部のそれは遅かった。そのため、内部の含水率が高い材を乾燥するには、長期の乾燥時間が必要であった。
(5)夏季の天然乾燥では、乾燥初期の乾燥速度は、除湿乾燥にくらべて小さく、また、割れが生じやすかった。

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