奈良県林試研報No.20(要旨)

ホンシメジの生態的特性

山中勝次

 アカマツの混じるコナラ林のホンシメジは落葉腐植層が5~6cm以下の箇所に発生し、腐食堆積層のかき取り、雑木密度の調節によってシロの保持・拡大、子実体発生誘導に有効であることが示唆された。シロ周辺の土壌にはアカマツに比べコナラの根量が圧倒的に多く、コナラにホンシメジの菌根を形成していた。調査区内の施業に伴いキシメジ属菌、シジ属菌等の外生菌の発生が増加した。ホンシメジ土壌中の菌糸は、識別しにくい薄い菌糸体と、白く太短い菌糸集合体からなり、幾つかに形態分化して子実体原基を形成することが推察された。幼子実体発生時期の気温、地温から、子実体原基は地温が15~17度で形成されるものと考えられる。

 

 

スギ同齢林における直径分布の経年変化
ワイブル分布の形状パラメーターの経年変化

福本通治・藤平拓志

 スギ同齢林の直径分布の変動係数およびワイブル分布の形状パラメータの経年変化を調査した。ワイブル分布の位置パラメータが変化した調査地においては、すべて変動係数が増加し、ワイブル分布の形状パラメータが減少した。ワイブル分布の位置パラメータが変化しなかった調査地においては、1調査地で変動係数が減少した以外はすべて変動係数は増加した。しかし、変動係数が増加した調査地でもワイブル分布の形状パラメータが増加した調査地があった。経年変化により変動係数が増加したにもかかわらず、ワイブル分布の形状パラメータが増加したのはワイブル分布の理論に反するため、直径分布をワイブル確率紙を用いて、ワイブル確率紙上の回帰直線lnln 1/(1-F(D))=αln(D-a)-βを求め、この回帰直線の経年変化により直径分布の経年変化を検討した。その結果、ワイブル分布の位置パラメータが変化した調査地においては、経年変化によりβが増加し、形状パラメータの減少量が大きい程βの増加量が大きくなる傾向にあった。ワイブル分布の位置パラメータが変化しなかった調査地においては、密度(K’)が低い所では形状パラメータが増加する傾向にあった。また、βは経年変化により減少する傾向にあり、その減少量が大きい調査地では形状パラメータが増加する傾向にあった。

 

 

スギヒラタケの生理的性質

渡辺和夫

 スギヒラタケを栽培化するため、生理的性質の検討を行った。結果は次のとおりであった。
(1)スギヒラタケは、ラッカーゼ活性を有し、白色腐朽菌と考えられる。また、多くの低分子フェノール化合物を酸化する能力が高く、ヒラタケとよく似た性質を示した。
(2)スギヒラタケは、可溶性デンプンを加水分解しグルコースのみを産生した。この加水分解は、α-グルコシダーゼ活性が弱いことから、グルコアミラーゼによると思われた。
(3)スギヒラタケは、脂肪酸エステルにより菌糸生長が抑制されるため、おが屑培地の添加物としては、脂質の少ない栄養が望ましいと思われた。

 

ナラタケの系統について

天野孝之・衣田雅人・河合昌孝

 ナラタケ5菌株、ナラタケモドキ2菌株について平板培養および電気泳動法によって系統識別を行った。その結果寒天培地上の菌糸層および菌糸束の形態観察では、2、3のグループにしか大別できなかったが、エステラーゼおよびリンゴ酸脱水酵素のザイモグラムによってより細かく系統を識別できる可能性が示された。しかし菌糸体の発光による識別はできなかった。
 この系統識別が直ちに寄生性の強弱あるいは有無の判定には結び付かないが、ナラタケおよびナラタケモドキに系統の存在を示す有力な資料が得られた。

 

 

スギ、ヒノキ柱材の除湿乾燥特性と寸法変化

小野広治・小林好紀・久保 健

 スギとヒノキの12.0cm角、長さ3mの材を供試材として除湿乾燥試験を行い、樹種や初期含水率の違いが乾燥速度ならびに損傷に及ぼす影響および乾燥時間について、さらに乾燥の仕上がり程度の違いによるその後の放置中の含水率や寸法変化についても検討した。得られた知見は以下のとおりである。
(1)スギ柱材とヒノキ柱材では、初期含水率の違いにより、乾燥経過に大きな違いがみられた。すなわち、スギ柱材では初期含水率に大きな違いがあっても、乾燥経過に大きな違いは見られなかったが、ヒノキ柱材では初期含水率の高い材は乾燥初期に含水率が急激に減少した。
(2)建築用針葉樹材の乾燥に関する暫定指針にもとづく含水率に乾燥するためには、スギ柱材は初期含水率により乾燥期間を調整する必要があったが、ヒノキ柱材は初期含水率による違いはみられず、一定の乾燥期間で乾燥することができた。
(3)放置中、スギ柱材では乾燥終了時の含水率が高い供試材ほど含水率の減少が大きかったが、収縮率、背割り幅の変化は含水率の変化にくらべて小さかった。また、ヒノキ柱材では乾燥終了時の含水率が約20%、約25%の供試材とも含水率、背割り幅の変化はほとんどなかった。

 

 

大断面集成材用縦つぎ木材の製造条件

柳川靖夫・和田 博

 縦つぎ木材の引張強度に及ぼすフィンガーの形状など製造条件の影響を検討した結果、フィンガーの刃長と引張破壊係数の間に相関関係はなく、フィンガージョイントの接着面積が大きくなっても引張破壊係数は大きくならなかった。しかし、チップ長とピッチの比(t1/P)が大きくなると引張破壊係数は低下した。接着剤の塗布方法では、接着剤を両面に塗布した方が片面に塗布した場合より引張破壊係数は大きかった。圧入圧については、チップ長が短いほど適性圧入圧の下限値が低下した。また、嵌合度が適性であれば、より安定した品質の縦つぎ木材が得られることがわかった。レゾルシノール樹脂接着剤と水性高分子-イソシアネート系接着剤との間に、引張破壊係数に差はなかった。

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