奈良県指定文化財 木造地蔵菩薩立像【H26修理完了】
木造地蔵菩薩立像について
本像は、奈良市にある普光院に安置されている地蔵菩薩立像です。大きさはほぼ等身大で、やや細身ながら抑揚のある体と、整った衣文(えもん)の表現から、鎌倉時代の慶派の様式を踏襲する像です。
足の枘(ほぞ)の部分に墨で書かかれた文字から、南北朝時代の康栄4年(1345)に作られたことが分かります。このように、制作年が明確に分かる仏像は貴重であり、基準作品(この時代の仏像と判断する際の基準となる作品)となっています。
また、像内から修理の際に書かれた銘文と2枚の納入木札が見つかっています。それらにより、天正13年(1585)に大きな修理がなされたことや、元禄11年(1698)に般若寺浄福寺の僧により玉眼が修理されたことなどが分かっています。
台座の一部は、材質と形から、奈良時代の仏像のものが転用されたと考えられており、珍しく貴重な例です。

【修理について】
修理前は、本体の立ち方が不安定で、狭い厨子(ずし)の中にもたれるように立っており、構造上危険な状態にありました。また、各所に部材の緩みや脱落があったほか、彩色層の剥落(はくらく)が進行し、傷ましい状態でした。
そのため、修理では、本体をいったん全て解体し、各部材の欠損部に桧(ひのき)材を補い、再び組み直したうえで、木屎漆(こくそうるし・漆に木の粉や繊維くずなどを混ぜたもの)で整形しました。
修理の過程で、頭部と体部の彫刻面のつながりや釘穴を調査したところ、かつては顔を左斜め前に向けていたことが判明したため、この痕跡をもとに、見返り地蔵として接合し直しました。
今回の修理で、像本体がしっかりと台座上に固定され、部材も強固に組み付けられたことで、良好な状態で長く後世に受け継いでいくことが可能となりました。
<参考データ>
時 代:南北朝時代(康永4年/1345)
作 者:不明
所有者:普光院(奈良市北川端町)
像 高:159.0cm
指定年:平成22年(2010)
修理年:平成25~26年度(2か年)