現在の修理案件・修理済み案件

 県内の指定文化財(美術工芸品)について、現在修理中や修理済みの案件をご紹介します。

 ※案件については、随時追加していく予定です。

未来へつなぐ文化財修理最前線~文化財修理のビフォーアフター~

修理が完了した文化財一覧(美術工芸品)

令和4年度

重要文化財 木心乾漆菩薩立像(唐招提寺)

奈良時代後期(8世紀後半)に造立された2躯の木心乾漆像。寸法と材質・技法が一致し、両手を対照的な構えに表すことから、本来は如来像の左右に立っていた一対の像であったと考えられています。
表面に盛られた乾漆の劣化が著しく、脱落の恐れがある箇所の剥落止めを中心に修理を行いました。
2躯のうち1躯は、旧講堂木彫群(国宝)等とともに新宝蔵に安置され、春秋二季に公開されています。


重要文化財 木造地蔵菩薩立像 (白毫寺)
白毫寺の旧地蔵堂本尊と伝えられる地蔵菩薩立像。ヒノキ材の寄木造で、着衣部の精緻な彩色と截金文様が美しい鎌倉時代(13世紀)の優品です。

大正の修理以来100年が経過し、剥ぎ目のゆるみや表面層の浮き上がり等が認められていたため、それらの補修を行いました。本修理に際して、X線CTによる構造・内部調査を実施し、その結果、像内に多数の納入品が奉籠されていることが判明しています。

本像は、白毫寺宝蔵に安置され、一般公開されています。


重要文化財 木造聖観音立像(不退寺)
不退寺本堂の本尊として祀られ、在原業平作との言い伝えから「業平観音」の名で親しまれる聖観音立像。広葉樹の一木造で、平安時代(10世紀)の作。
浮き上がりの著しい彩色の剥落止めや鉄釘・鎹の腐食部の防錆処理等を行い、表面層の安定化を図りました。
近年の調査により、本像は文化庁所蔵(奈良国立博物館寄託)の観音菩薩立像と対をなし、もとは三尊像の両脇侍であったと考えられるようになりました。本像の修理完了後、奈良国立博物館で両像が並び立つ姿がお披露目されました。現在は不退寺本堂でご参拝いただけます。


重要文化財 木造四天王立像(薬師寺)
鎌倉時代に造立された躍動感のある四天王像。台座墨書銘から、正応2年(1289)に仏師隆賢らにより彫刻され、永仁4年(1296)に彩色が施されたことがわかる基準作です。
2カ年にわたり、彩色と漆箔層の浮き上がり箇所の剥落止め、緩みの生じていた矧ぎ目の接着や鉄釘や鎹の腐食部の防錆処置等を行いました。
薬師寺東院堂は、白鳳時代の傑作として知られる銅造聖観音立像(国宝)が本尊として祀られており、壇上の四方を守護する本四天王像とともに拝観することができます。


国宝・重要文化財 木造四天王立像(新堂安置)ほか(法隆寺)

法隆寺新堂の薬師三尊像に随侍する四天王立像。4躯ともに頭体幹部と邪鬼の大半を通してサクラの一材から彫り出し、量感のある造形を示しています。
表面の彩色・塑土・漆箔の浮き上がりが認められ、それらの剥落止めを行いました。法隆寺の諸堂には数々の国宝・重要文化財が伝存していますが、本事業では、3ヶ年にわたり、新堂安置の四天王像以外にも4件の重要作品の補修を実施しました。

 

重要文化財 平等院経蔵目録(阪本龍門文庫)

藤原頼通が宇治平等院の経蔵に収めた宝物の目録で、現存唯一の伝本。中国の唐や宋から将来された仏像や仏画、経典や法具、香薬などの希少な品々が記載されており、摂関家の往時の権勢と文化的水準をいまに伝えます。
汚れや虫損等の損傷が認められたため、装丁を解体し、補修紙を作成して欠損箇所の補填や補強を施し、本紙の形状を整えました。

 

重要文化財 大東家文書(春日大社)

春日社の社家である大東家に伝来した文書群。
汚れや虫損、折れ、継ぎの糊離れ等の損傷が認められたため、3カ年に及び、補修紙を作成して欠損箇所の補填や補強を施しました。本紙の形状に合わせて安全に保存できるよう、保存箱を新調しました。

 

県指定文化財 木造多宝塔(十輪院)

十輪院本堂の大壇中央に安置される小型の塔。室町時代の作で、建造物としての多宝塔の外形・構造にならい、細部まで造り込まれています。内部には釈迦の遺骨である仏舎利を奉籠する容器が納められおり、中世南都の舎利信仰が生み出した遺品として貴重です。
表面の彩色の剥落止めを行い、亡失した部材の一部も補足しました。梵天・帝釈天・四天王像が描かれている下層部の各扉は、図柄を検討し、正しい配置に入れ替えました。
本事業は、なら歴史芸術文化村の文化財修復・展示棟において公開修復を実施し、修理完了後は、特集展示「奈良県指定の文化財」において一般公開を行いました。

 

県指定文化財 木造大日如来坐像(東南院)

東南院多宝塔の本尊として祀られる金剛界大日如来像。温和な顔立ちや均整のとれたプロポーション、浅く整えられた衣の襞など、平安時代後期の特徴が認められます。
漆箔の浮き上がりが尊容を著しく損ねていたため、剥落止め等を行って像の美観を整えました。これにより、11世紀に確立された定朝様の系譜を受け継いだ入念な作として評価を高めています。
本事業は、なら歴史芸術文化村の文化財修復・展示棟において公開修復を実施し、修理完了後は、特集展示「奈良県指定の文化財」において一般公開を行いました。