とっておきの奈良

 

古代の冷蔵庫、
「氷室」(ひむろ)発祥地で
涼やかに歴史歩き
 冷蔵庫など思いも寄らぬ大昔。『日本書紀』では仁徳天皇期に奈良の氷室(いわば古代の冷蔵庫)から氷が運ばれ、天皇がことのほか喜んだとの記述が残ります。ここに記された氷室の里こそ、氷室発祥の地、現在の福住に当たるとされています。 山中に大きな穴を掘り、茅(かや)などをかけて、冬に仕込んだ氷を夏まで貯蔵したところが氷室。たくさん仕込んだ氷も掘り出す頃には、わずかばかり。ありがたやと皇族や豪族が楽しみ、平城京では市で庶民に売買もされたそうです。 福住地区には今も約20か所もの氷室跡が残ります。復元された氷室では、毎年7月の「海の日」に、子どもたちが楽しみに氷を取り出す「氷まつり」が行われています。 歴史あるこの里では、ひんやりした大和高原の風を感じながらのウォーキングも人気です。清々しい山の香気が満ちる「七曲り道ハイキングコース」は一周約9km。鎌倉時代や南北朝時代の石仏に出会えます。ほんの少し足を延ばせば、氷の神様を祀る氷室神社へ。さらに氷室跡、復元氷室をはじめ、古社寺や石仏などが点在する史跡を訪ね歩いて半日ばかり。のんびりゆったり爽やかに。現代の「暑気払い」さながらに、暑さをうち払ってくれそうです。

 

 

「氷室神社」

珍しい「氷の神」を祀(まつ)る古社、氷室神社は允恭(いんぎょう)天皇時代の創祀(そうし)(5世紀)と伝わる。社殿は荘厳な雰囲気。

「下の坊・婆羅門(ばらもん)杉」

推定樹齢800年の巨大な「婆羅門杉」。奈良時代創建の古寺、永照寺の山門代わりに生命力あふれる姿でそびえ立つ。
「復元氷室」

夏でも涼しい山中の、尾根伝いに点在する氷室を復元。深さ約1.8mの穴は茅葺き屋根で覆われ、約3トンの氷を貯蔵する。

「福住 郷土(ふるさと)活性化プロジェクト協議会」

まずは地元に目を向けて、唯一無二の素晴らしい歴史風土を知ってもらいたいと会を発足して3年目。地域住民にアンケートをとって現状と打開策を考え、観光マップを作ったり、ハイキングイベントに協力したり、地域の内外に魅力を発信しつつ、里の未来のために活動しています。
談:水口松三(みずぐちまつぞう)代表(中央)
問 郷土活性化プロジェクト協議会(福住公民館内) TEL 0743-69-2001

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