平成29年11月28日(火)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 ただいまから知事定例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、生駒市西松ヶ丘の対応についての発表案件がございます。知事から発表していただきますので、よろしくお願いいたします。


生駒市西松ヶ丘の対応について

知事:
 西松ヶ丘の暫定工事を12月1日から始めますけれども、3つですね。この土塊撤去というのを、土の固まりを撤去いたします。それから、モルタルを吹きつけます。それから、水抜き孔を設置いたします。この3つで安全性が向上いたします。

 これが平面図であります。薬師堂川が流れて、ここがちょっと詰まっているという状況です。こちらのほうですけれども、これを断面図で見ますと、民民の境界線があります。これは住宅の敷地です。少し見えにくいですが、ここに違法土砂が重なっていた線が、小さな細い線で書いておりますけれども、ここに違法土砂があったわけです。この土砂がこのように崩れてしまったというのが現状です。こちらでご説明いたしました土塊の撤去は、盾ではないですけれども、モルタルの吹きつけというのを、このブルーの線でします。ここの土が雨を含んで上から崩れ落ちないようにという暫定工事であります。全体的に既に実施済みですけれども、10月にブルーシートを設置して、雨がこの中に入り込まないようにしております。今度はさらに水抜き孔3本、2メートルぐらいのパイプを入れまして、そのパイプの中に穴があいていますので、そこから水が吸い取られるといった工事をいたします。ここの土に、これ、れきがまじっている砂、れきは小さな岩ですね、そこに水が入ると砂がスポンジ化をして、このれきという小さな小石と一緒に流れ出すというようなことを想定しております。水をためないことが基本的な、ほかもそうですが、暫定工事の基本的な内容です。

 既にこの薬師堂川、ここに土が埋まっていますので、それを土の除去の前に、水がここで滞留しますので、管を通して水を通過させるという工事を10月にしております。10月にしたブルーシートとポリエチレン管の河川とありますが、12月1日からこの3つと土塊の撤去をするという報告です。

 ご案内のように、この民民の境界で土が落ち、この民民の所有地の崩壊はまだ確認されておりませんが、怖い怖いと、こうおっしゃっていますので、このあたりの亀裂がこちらの亀裂なり土塊の崩壊につながらないかということが心配事です。

 それで、繰り返しになりますが、違法の土砂、ちゃんと許可を受けないで土砂を載せたことが原因じゃないかということを言っておられますので、その原因、その結果かどうか作業をするとともに、原因究明を今進めております。その原因究明がはっきりするまで、違法で土をかぶせられたことは確かですので、是正命令を発しておりますが、是正命令を聞かれないので、それでこの暫定工事も含めて県は代執行工事をしようということで予算を要求しておりますが、この代執行について、県がこれだけ大きく工事をすることは行き過ぎじゃないかという訴訟が起こっています。仮処分を含めた訴訟が起こっているということです。その訴訟で、仮処分で是正工事もしてはいけないと裁判所で言われるまでは、暫定工事は、また本格工事は原因究明があってのことでありますけれども、今のところ土を戻してほしいという是正命令がある根拠に基づいて暫定工事をできると、法的な根拠はそこにあると思って進めようとしております。かいつまんで申し上げますと、以上です。

司会:
 ありがとうございました。
 それでは、本件に係るご質問をよろしくお願いいたします。

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質疑応答

生駒市西松ヶ丘の対応について

読売新聞:
 以前、崩れる前の段階である程度の工法を検討していて、崩れた後で再度工法を検討し、結果がこの内容であると思いますが、工法の変更で、安全対策面や費用の面で変更はあったのでしょうか。例えば費用がものすごく膨らむ、工法がかなり難しいくなったというような。

知事:
 基本的には同じだと思います。土に水がたまり、21号台風で雨がたくさん降って土が流れたというようには思われますので、これからも雨が集中的に降ると、また水を含んで土が流れ出すんじゃないかということを心配しております。その土が流れ出す時に、その住宅地の土まで崩れるのではないかというご心配があるわけです。割れ目が拡大するかどうか、ずっとウオッチはしておりました。

 今は、ご案内のように、先のほうでかぶせた土の部分が崩壊したと見えますが、崩壊がこちらの境界ですが、割れ目がこのあたり、この割れ目が全て崩れると、建っていられませんので、支えられるかを心配するわけです。だから大きく崩れるかどうか、その崩れる原因が土をかぶせたことが原因か、もとの土がちゃんと支えになっていないからかということは、原因究明の大きなポイントだと思います。

 土を無許可で盛った人は許可をもらわないで行った行為ですので、違法ではありますが、そのかぶせたおかげでこちらが危なくなっているかどうかについては、争われるんじゃないかと思います。それは、そういう責任問題をずっと議論していても危険な状況が進行すると困るので、県の法的な立場が確認できる限りは、できるだけのことをしようという姿勢でやろうとしております。それを、そういう姿勢がなかなか明確に表明できなかった感じはしますけれども、いつもこういうのは難しい問題なので、それを法的な権限、権能、責任を明確にして、できることはしようと進んできているというふうに、今の時点ではそういう言い方で申し述べられると思います。

毎日新聞:
 今回の暫定工事は、委員会の中での結論ですか。それとも専門家の意見も踏まえながらの話ですか。

知事:
 この工法については専門家の意見に基づいてのものです。私のような素人でも言えるぐらいですから、土に水を含ませないということは、工法の種類としては専門家でありますけれども、専門性がすごく高いというよりも、常識的な工法だと思います。水抜きはどの程度の数をすべきかということは専門性が要ります。3本でいいのか、もっと軒並みしなければいけないのかということは必要です。私、素人でも下のほうでもしなくていいのかということは、専門家の意見を聞きながらしなきゃいけないなと思います。それは多分、土のことですので、変化があると、手を抜いて変化があって土が崩れるということが一番困るので、できるだけ厚めに土が崩れないようにしようということが常識的な方向だと思います。それは専門家の方の意見を聞きながらしないと、県庁のほうはそもそも代執行ですので、責任者はほかにいると、こういうメンタリティーがあるので、どうしても予算を多目にとるよりも最小限のことはしようと、ブルーシートも含めてというメンタリティーがありますが、どのあたりまでしなければいけないかは、専門家の意見を聞かないといけない面があろうかというように感じております。

毎日新聞:
 今回の工事の費用はどれぐらいで、それはこの業者に請求されるお考えですか。

担当課:
 工事費は大まかですが2,000万から3,000円ぐらいの間と考えております。

 代執行の法律的な側からいうと少しそこから外れますので、砂防の考えとして、薬師堂川の流れている下流のほうの影響もありますので、県の単独事業として暫定工事をいたします。

知事:
 災害予防という工事だと思います。

担当課:
 可能であれば相手側に損害賠償請求をしたいと思っております。ただちょっとそれも難しいとも聞いております。

知事:
 原因究明と、この土が流れて川が埋まったというのが県のよりどころなんですよね。その土が流れて川が埋まったのは、この盛り土のやり方がおかしかったからかということになるわけなんですよね。盛り土がおかしかったから川が埋まったということになれば、それも代執行の対象になると思います、法的なことは詰めないけませんけれども。その分は最初から代執行で請求するのかと言われると、まだちょっと曖昧な感じがいたしますけれども、基本的な行動としては、土を埋められた方の手当てが、施術が悪くて流れたということも想定できますので、それは原因究明の一つのポイントになろうかと。

 しかし、暫定工事自身は2,000万でありますが、県が余計なことをしたと、要は法の責任、権限を越えて工事をしたのではないかと言われることにどう対応するかというのは、いつもポイントでありますけれども、一つは、川が埋まるようなことは、土は流れてはいけない、土の除去とか予防というのは公共事業的な工事という性格もありますので、その可能性もあるということからは、そういうことが可能のようにも思えますけれども、法的な整理は必要だと思います。その時に、こんな土が流れたのは上が、どこでもよくありますが、土を余計にたくさん積んだからだと。だから流れて川が埋まったんだということは、これは代執行でもあるし、また請求工事費の責任追及ということにもなる可能性がありますが、それはまだちょっと曖昧です。

 責任は、どうしてこの土がこぼれたのは、土をかぶせた人の責任か、自然災害か人工災害か。自然災害だと誰の責任もなしに、何十年もそのような形状であるのに、大雨が降って土が流れた、川が埋まってしまった、これは公共事業で撤去しようというのが通常でありますので、余計なことをした人がいるから川が埋まったというのは、あなたの責任でしょうといって求償しなければいけない立場になり得るという考え、考え方だけですけれども、そのように思っております。

毎日新聞:
 工事費2,000万から3,000万ですが、これは12月の補正の予算の中で上げられるお考えですか。

担当課:
 県の単独費で確保された予算を集めて実施します。

知事:
 こういう工事のできる項目が費目があります。予算的な措置はできる対応になっています。億になると議会に出さないといけないと思いますが、このレベルでは予算執行できますということです。

NHK:
 私が西松ヶ丘の家に行くと、家の庭の縁石が少しずれていたり、コンクリートの擁壁が少し剥がれていたりして、家自体も、少し庭側が崩れている、傾いているようにも見えますが、そういう現状があるのかどうかということと、それに盛り土が影響しているのかどうか、その2点、知事のご認識を教えてください。

知事:
 それは責任の問題のポイントであります。ビー玉を転がして、家が少し床が傾いているんだという報道がされました。これは報道で知ったわけでありますけれども、それは施工の問題か、こちらの割れ目があって土が揺らいだのか、施工も、この建物の施工か、この盛り土が緩んで土が全体が緩んだのかということは検証されてないです。この土が傾くほどのことだったのか、その家の何かの別の事情なのかは検証されておりません。それはいまだにわかりません。しかし、こういうクレームがあるということは皆さん、取材されているし、報道されていますので、そういう事態が発生しているということは認識をしております。それがこの建物の施工なのか、土の施工なのか、盛り土のせいなのか、それが自然の雨が含んでひっぺがしたのかいうことが不明です。原因究明の中でわかる範囲で探っていきたいと思います。

 家が傾いてきた、地面の施工者か建物屋が悪いから見に来いという民民の話が普通なわけです。こちらが土がかぶせた人が違法にかぶせたということで県が出る幕になっておりますが、民民の方の調整といいますか、それも県の役割になる面もあるんじゃないかと思っております。ただ、そういう状況ですので、原因究明をある程度しないと、保険でできるのか、家屋の保険なのか土地の、土地の保険というのはほとんど現実にはありませんけれども、よくその現地の観察も、じゃあみんなそうなっているのか、この家だけなのかどうかということも含めてしなければいけませんが、それは県がそこまですべきかどうかまだわかりません。クレームがあることは承知しております。

NHK:
 原因究明、今後そこまでやるかもしれないということですか。

知事:
 はい、こちらの県の立場、とにかくこの違法の土砂がかぶせられたので、それが水を含んで流れる時に、こちらのこの基本的な支えが影響するかどうかということが違法だと、開発許可を受けなければいけない人に対して追及するという立場がありますので、それらの責任、この家屋の状況に変化があるのは誰の責任かということを追及する多少の役目はあろうかと思いますので、それはさせていただきたいと思いますけれども、基本的な構造、県の認識として、土をかぶせた人の訴訟だけではなく、一般のオンブズマン的な人も、できないことを勝手にしているんじゃないかという訴訟もあり得ますので、その点は考慮しながら、県ができ得ること、あるいはすべきことを判断しながら進むという姿勢にならざるを得ないと思っています。県民の方のご懸念を払拭するというのは一般的な、基本的な責任としてあると思いますので、それは県の立場でできる範囲で果たしていきたい。

 こういうような事例は、市が出ることも多いです。民民の話の仲介みたいなことを市が出られることも多いもんですから、それもあり得るかもしれません。

NHK:
 そのあたり、生駒市と協議していったりするのですか。

知事:
 こちらから声をかけていることはないかもしれない。
 生駒市は、県が言われている間はおとなしくしようと、こういう姿勢じゃないかと思います。

司会:
 本件につきましては、よろしいでしょうか。
 それでは、その他の質問を含めましてよろしくお願い申し上げます。

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三郷町東信貴ヶ丘擁壁崩壊事案について

読売新聞:
 1ヶ月以上たちまして、ボーリング調査をされていることは伺っているが、現状、どこまで進んだかと言うことと、今後どうなっていくか、全体的なことを教えてください。

知事:
 三郷も、土が割れて住宅の地盤が危険度が増しているということは西松ヶ丘と似たような構図ですが、似ていることは、責任の所在をどのように判断するのかということです。先ほどみたいに違法土砂をかぶせたということではありませんので、そもそも宅地の開発許可があったということであります。その際の県の責任以前に、客観的にどのように危ないのか、見るからに危ないわけですから、それをまず暫定復旧をするか、危ないことをできるだけ除去するということがまず今の段階の主眼であります。西松ヶ丘と同じ構図でいくと、誰が暫定復旧工事を、暫定・本格復旧をすべきかということが基本的な構図であるんですけれども、誰がというところまで追及しているとほったらかしになるので、とにかく誰がということを抜きにして、暫定工事をすべきじゃないかというスタンスでありますが、しかしそこまで県がやるとやり過ぎだという訴訟リスクもあり得るということは認識しております。

 そこに関係者というのは、上の住民の方、それから造成工事の方、それからハウスメーカーの方、それから三郷町、下のほうの底地を持っている近鉄、それと県と、六者だと思います。県もあえて入れますけれども、六者が関係者だと思います。これ以外にあまり復旧の責任を持つ人は見当たらないです。その六者がどのように責任を持って復旧工事をするかということを決めていかなければいけないと思うわけでありますけれども、どうしてこういうことが、誰の責任で起こったのかというのを、原因究明調査を県がさせてもらう。そういうことを決めていくに当たって原因究明調査をさせてもらおうと。

 その時に、復旧工事を暫定的にもできないか、場合によっては県もできないかということを検討しております。県は、責任もないのにそんな工事費を使って何をしているんだと、こう言われる、多少先に進めば言われる可能性がありますので、それは訴訟が起こったり、余計なことをした、公費を使ったと言われる可能性がありますので、それは心配ではありますけれども、どこまで県が暫定工事としてできるのか。あるいはこれ三郷町、普通は町がよくするケースが多いんですけれども、町が暫定工事の片割れを担ぐということも各地では十分あるんですけれども、それは公のほうの責任をどのように持っていくか。

 それと、ここの敷地の下の近鉄と、造成工事と、住宅メーカーと、それと基本的にはもう土地を買って家を建てたら、その形状は自然災害か、住民の責任か、施工者の責任ということ、民々の責任になってくることが通常でありますので、この家の土地が崩れるのは見るからに大変なので、下に近鉄が応急復旧工事をし始めてもらっていますけれども、近鉄の費用でできるのかどうか、近鉄も株式会社ですので、できるのかどうかという点も法的な解明はまた難しい面があるという、くだくだと言っていますが、難しい面があるということを少し認識しながら進めなければいけない。

 しかし一方、危ないのは早急に復旧したいという思いは住民の方におありでしょうし、とにかく暫定、戻って住めるようになるという点では暫定復旧工事が要るように思うので、工事をすれば家に戻れるような感じがいたしますが、誰の費用で、誰が責任とってやるのかという点がなかなか難しいので、県は少なくともコーディネートさせていただこうと。しゃしゃり出て関係者の状況を聞いて、県がしてもいいようなことはできるだけしようというスタンスで進めているという状況です。

 現在の状況は、現地調査を始めております。原因調査は多少時間かかりそうなので、もっと早くできないかという声は聞いております。近鉄は応急復旧の工事をしていただいております。これも、近鉄が自分で費用を持たれるのか、自分の敷地だけの工事は自分で持つが、上のほうは住民の方に求償されるのかということはまだ不明であります。とにかく今できることはしておこうといった態度で出ておりますので、これもちょっと法的にはなかなか曖昧かつ難しいところがあるということの認識のもとで、できることは何かということを探り、探索しながらやっているというのが実情です。

 歯切れが悪いですが、こんなのどこまで進んだのか、やるのか。公共事業だったら割とできるんですが、民地の話なのでというようなことはありますが、原因究明をとにかくやろうという。ボーリング調査を11月21日から開始していただいております。

 今後ですが、12月13日にボーリング調査が一応完了すると聞いております。どの土がどのように崩れたのか、境界線がありますので、こちらがどのように崩れたのかということはボーリングである程度わかるんじゃないかという、これは有識者のご指示に従ってボーリング調査をしております。その後、復旧するにもどのような工事をしないといけないかわかってきますので、暫定とか復旧工法が確定してくる。それは年内で確定すると思います。どのようなことをしなければいけないか、誰の責任かはとにかく別にしてということになると、その時に暫定工事を誰がするのかというのは、とても大きな問題だと思います。県がやれる権限とか訴訟リスクはなくて、やっていいものなら、ほかとの関係はありますが、余計にするという意味で不公平なやり方だと言われたら正直困りますが、それをコーディネートして調整しながら、暫定工事をできるだけ早くしたいと思っています。

 関係者全員がそういうことをしようと、みんなでうまく分けて責任負おうという形もあればと思いますが、繰り返しになりますが、関係者は住民の方、ハウスメーカーの方、造成工事の施工業者、それから下のほうの近鉄、三郷町、県と、六者しかいないと思ってもいいじゃないかと思いますので、それで責任を、施工費、施工主体の責任をどのように分けるかということを決めていかなければいけないと県としては認識をしております。そのコーディネートの中心はさせていただく。住民の方からも、ずっとコーディネーターしてくれと、誰もいなくなると住民の人が駆けずり回って調整するのは大変だからとおっしゃっていることはよくわかっていますので、県は、コーディネーターをするところまでは余り違法性といいますか、やり過ぎ感はないと思っています。

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地方消費税清算基準について

時事通信:
 地方消費税の話ですが、政府・総務省のほうの考え方も見えてきた。従業員基準の撤廃ですとか、それから持ち帰り消費のある程度除外ですとか、それに伴っての人口基準引き上げというのが言われておりますけれども、見ているとほぼ奈良県の提言と近いことになっているなと思うのですが、受けとめは。

知事:
 先週11月24日に全国知事会がありました。

 色々な話題ありましたが、地方消費税の清算基準も大きな話題でした。全国知事会では小池知事が反対と、述べられました。その時には私は言わなかったが、(その後、政府主催の全国知事会議では)官邸に移して関係閣僚が並んで意見を交換をするという閣僚懇と、あと総理懇があり、閣僚懇で私は地方消費税の清算基準で発言が許されていましたので発言しました。

 発言内容を、かいつまんで言いますと、11月21日に出た総務省の報告書を評価いたします。高く評価します。そこには今までの販売基準は実態と乖離がある。実態というのは、地方消費税の清算基準ではっきりするのは、消費地の確定。販売基準で消費地を確定するのは無理がある項目があるということを明確におっしゃった。今まで奈良県が言っていたが、不明確のままだった。それを明確に統計を調べておっしゃった。販売基準にそのまま依拠していると、実態との乖離が激しくて、税制としてはおかしいという認識まではっきり持たれてきた。これも奈良県が言ってきたことです。それを除去して、より消費地の実態に近い人口基準を探ろうと。その項目ごとに全体の統計、外形的全体の統計でやると、人口と近似するのが0.998とか、そういうような項目が数多くあります。販売基準だと、0.8と下がってくるので、それだったら人口基準にしたほうがいいじゃないか、そういうことをつぶさに調べているわけです。

 奈良県も同じ手法を提案していたわけで、それをずっとしていくと、乖離の激しい持ち帰り家具とか、あるいは東京で一括計上されている項目とか、不動産販売とか、非課税販売とか、今まで言っていた通信販売とかというような項目は、そういう統計の調査をもとに除去しよう。より消費地の実態に近い人口基準に代替しようという作業を行われてきましたので、その結果、もう一つは従業員基準というのは経緯はありますが、今までも言ってきたことですが、それをとる合理的根拠はないということまで判断されて従業者基準の廃止と、そういう項目除去と、乖離の激しい項目除去と、消費地判断の近似値である人口基準代替ということを採用をされると、5割近くまで統計基準が下がってしまう。人口基準は5割までになりますよということを税調に答申されているということです。

 それを閣僚懇では、私は高く評価しますということを申し上げました。それはそのような考え方を奈良県が再三言ってきたことでありますが、とつけ加えましたが、それをとっていただいてありがたいということ、これは大変、今よりも大変公平な税の清算であるので、それをぜひ確立していただくようにお願いしたいということを閣僚懇では申し上げました。閣僚懇は、もう決まった人を当てて意見交換ですので、閣僚は野田総務大臣でしたが、色々な報告書をもとに適切な対応をしますという一般的、というのは、党税調でこれから決まる過程なので、それを決めますというまだ立場にない。総務省としてそういう案が出されたということは責任者ですが、それを今度は、税制は与党税調で確定しないといけないので、審議中ですので、多分12月14日までにそのまま総務省の報告案どおりいっていただくのが、そういうことを提唱してきた奈良県としては大変ありがたいということを申し上げまして、ほかの知事さんは、よかったねと、こう言っていただいた知事さんも近所で何人かおられます。

時事通信:
 報道等によれば、50%で与党・政府も検討していて、決着も含めてというふうに決まっているようだが、奈良県としてはとにかく60%であるとか、80%とかということをおっしゃっているわけで、そのあたり、特に80%のほうは、そもそも販売統計の信用性が薄くなってしまう可能性があるというところを提示されていると思うが、そのあたりはどうか。

知事:
 そうですね、これから、物販の統計がますます薄くなってきます。統計が税制のための統計ではないので、経済動向を把握するための統計を税制の配分に利用してきたということで、限界があったということだと思います。今後さらに統計がサンプル化するということを聞いていますので、そうしますと販売統計に依拠している50%も危うくなるかもしれない。それを今でも危ういよと見越して60%なり80%人口基準に置きかえてもいいのではないかということを言ってきたたわけです。50%でも大きな進歩です。さらにどのように党税調で書かれるかわかりませんが、もう一つ言ったのは、将来の販売統計がそのサンプル化して、余り近似というような意味にならないような場合であれば、同じ手法でその販売統計が大きく変わるときには、また検討してほしいということも申し述べてまいりました。それがどのように税調で反映されるかわかりませんが、今の時点では50%で大変大きな進歩だというふうに、先ほど閣僚懇で申し上げたということを報告いたしましたが、評価しておりますということで、それで確定すれば現時点では大きな進歩だと思います。その販売統計がさらに荒っぽくなって、これじゃ人口のほうが近似しているということを判断されたら、同じ手法でまた置きかえていかれるようになればいいというふうに思っております。

時事通信:
 販売統計が大きく変わるときには、もう一回検討してほしいということですか。

知事:
 もう一回されてもいいかと、これは個人的に思っております。

時事通信:
 それは閣僚懇で、また総務省におっしゃられたのか。

知事:
 余り強調しなかったが、そういうことも含めた言い方をしたと思います。それは、どこだかな、担当の方には、総務省の方にはそういう言い方もしています。

時事通信:
 総務大臣に先ほど、前のお話とあわせて言ったわけではないのか。

知事:
 総務大臣は閣僚懇のときしか言えなかったですね。(政府要望では)なかなかアポを入れてくれなかって、よく知っている人だったけど、閣僚懇と総理懇の間、割と40分ぐらい時間あって、野田さんとはべらべらしゃべる機会があって、それはそんな税制じゃなしに、ほかの話ばっかりだった。まあそんな状況でした。

 だから税の配分というのは客観性、公正さというのがもう何よりも大事ですので、損得を超えて公正さが大分販売統計依拠が激しくて緩んできたと。個人的な思い出だと、この都道府県境界で、高の原に京都との境界でイオンがあるが、イオンの売り上げは全部京都に行っていた。何で京都って、入り口が京都府だから。おかしいじゃないかって、それは変えてくれた。そのぐらいの単純なのは変えてくれる、もう何年も前です。全部売り上げが京都に行って、京都の消費税配分の根拠になるのはおかしいのではないかと、こうクレームをつけたら、総務省はそれは変えた。それは固定資産税はどうとるかというのは、入り口方式というのがある、それと同じようにしてたということを聞きました。イオンの統計のそこの売り上げ統計では、売上高は、奈良県民が買ったのか京都府民が買ったのかの統計がなかなかない。だから床面積で配分するというふうになった。奈良県の床面積と京都府の床面積、これは近似かどうかはわからないが、多少納得感が進んだ。全部京都よりはよいということで納得した経緯がある。それほどのレベルの清算基準だったというので、ずっと不安がたまっていたわけなんです。あまり清算基準というのは見えないものですので、消費税というのは知らない間にとられているので、どこに行くかというのはわからないままですので、しかしすごく大きいです。

時事通信:
 小池都知事は都の税調に反論書を書いてもらったりですとか、すごく税金が奪われるというふうに非常に強硬に反発されていますがどうか。奈良県としては、販売統計が信用できなくなることを機会を捉えて何か訴えていくことはあるのか。

知事:
 小池さんが全国知事会で、午前に会ったときに発言されるのは直接聞いていました。大阪府もそうですが、そもそも人口の指標を消費代替指標と捉えるのはおかしいという言い方をされていたのですが、販売統計で依拠するよりもましなんではないかというのが奈良県の主張です。消費地の項目ごとに、これがどこで、これは今、奈良県で消費していますが、どこで買ったのか、大阪か奈良かということは、大阪だったら大阪でもこの消費は上がっているが、その悉皆的な調査というのはないわけです。だからどこで買ったか、販売統計によれば、その県の中での消費の割合が高いのは販売統計にしよう、越境しているものは人口統計にしようという流れがあり、どちらが消費の実態に近いかというだけの話なので、消費の実態への近さを実証的に証明されていますので、そもそもおかしいという理屈は、そもそも販売統計でやるのはおかしい。そもそも論ではなく、把握論なので、ちょっと違うなというふうには感じましたが、その点をどちらが消費地の確定の把握しやすいかという点に着目して、明らかに販売統計よりも人口統計のほうが近似しているというものにとっては、代替すべきじゃないかということを主張してきたわけです。それを詳細に設計されたので、それについては論理的な反論はないと思いますが、損をするという面の政治的な反論は当然おありになると思います。

 その作業を進めると、奈良県は6割、8割まで行くよと、こう言ってきましたけど、それは販売統計と人口統計代替と、どちらが消費の実態に近似しているかというその検証ですので、今回は50%まで行ったのは大変な成果だと思っています。その統計がだんだん透け透けになってくれば、人口統計のほうがいいのではないかということがわかれば、人口統計に置きかえるのは、ある時期そういうことが起こったときでいいと思います。あるいは物販の越境消費が多いように、サービスは即時財だから、そこで消費される割合は多いと思います。例えば、販売統計をとるのは飲食とか宿泊とか、それに限るという言われ方も将来出てくる可能性があります。それと物販は除かれる可能性もある。これは将来の仮定の話ですが。即時財で、消費はそこであるということがわかる販売統計は、販売統計でする。それは大都市のほうは高いので、人が集まってくるので、だからそういうやり方も将来出てくると思います。より近似性が高くて、納得感のいくほうがいい。原点は、イオンの売り上げが全部京都に計上するのは、それはおかしいじゃないかというようなところから始まっていますので、それから思えば随分検討していただいたなというふうに思います。

日経新聞:
 小池都知事が、仮に人口基準50%になった場合に1,000億円の減収になると言っているが、県として仮に人口基準50%になった場合の、どれぐらいの増収になるかという試算があれば教えていただきたい。

知事:
 あまり奈良県はない。多少はあると思いますが、そんなに大きくはない。

 2桁の億円ではないかと思います、2桁の下のほうだと。しかし、奈良県なんか交付税措置で減額がありますので、もう一つの要素は、東京都は1,000億、今まで1%増税があれば1,000億増収です。この前の5から8になった時、3,000億増収で、交付税の減額措置がないので丸々だというふうに東京のほうの人が言っていました。それはひどいじゃないかという言い方をする人もいた。だから今までこんなに反発がある。今までもらい過ぎてたのではないのかと、今までの分どうしてくれるのかと内心思いますが、今までの分、イオンの京都に行ってた分は目をふさぐにしても、そういうようなことが随分あるのではないのと、こう言いたい県はたくさんあると思うぐらいです。だから理屈をやっぱり早目に整理しておいたほうがいいかというふうに思います。

 財政的なのは、大体今までであると、1%増税あると1,000億東京都に増収になる。交付税措置の減額がない。ほかは増えると交付税措置が減らされるということになる。だから丸々増収になるわけじゃないし、丸々減収になるわけじゃないが、緩和されるということなので、それは交付税措置のスタビライザー機能です。東京都は不交付団体ですから、受けるときは丸々受けられた。減るときは丸々減るよということになるので反発があると思います。一番増えるのはやはり東京近辺の埼玉、神奈川、千葉じゃないかと思います。これは億の3桁で増えるのではないかと思います。奈良県は2桁しかいかない、2桁も下のほうしかいかないと思います。

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登大路瓦窯跡群の発掘調査について

朝日新聞:
 今月の上旬、橿考研が調査をされ、興福寺の旧境内に窯跡があった、という発表について、文化財保存全国協議会他1団体が、知事宛てに要望書を送った件、知事の受けとめについてお伺いしたい。また、60年代、その遺構が貴重だということで、当時県庁の建物の設計を変更して遺構を守ったということを聞いているが今回、撤去されるという判断を下した理由をお伺いしたい。

知事:
 文化財の保存は大事だと思っています。

 文化財の中で、彫刻、造形のものと、土の中の文化財である遺構というのがあります。遺構の保存は、どのように保存すべきかが課題です。文化財の遺構の保存の仕方として記録保存と現地保存があり、現地保存の中でオープンにして保存する方法と、埋めて保存する方法の、2つあります。それのどれを選ぶのかということですが、今までの傾向として記録保存も立派な保存だと思っています。ここにこのようなものがあったと記録保存するのは立派なことだと思います。現地でそのままオープン保存というのは、今まで過去何十年かのうちに、奈良県でも2件ぐらいしかありません。象徴的にこういうものであったというものを移して、もう一度レプリカをつくって保存という、現地保存とは違うところで保存するオープン保存もあり得ます。そのような遺跡の保存の仕方で、今度は記録保存で十分だと、保存の担当がおっしゃったと聞いています。

 一方、保存の会の方々は、たぶん現地保存でオープンで保存すべきと言っておられると思いますが、どういう方々かと聞きますと、平城宮跡の保存、若草山のロープウエーや、トンネル反対などの活動されている方だと聞いております。それはそれでいいんですが、一貫してそうされている方でありますので、ご認識をしていただきたいと思います。

 基本的な文化財の保存の仕方となると、平城宮跡で、県議会ではある会派の人が、草が生えているから草のままで保存しろと言われましたが、行政庁の跡だから、草はちゃんと刈らないと思い、論争した記憶があります。行政庁の跡は、昔の砂利でないが、砂利を埋めてそこを歩けるようにするのは立派な保存じゃないかと私は思いました。そのような保存の仕方についての考え方が違っている感じはいたします。

 だから、現地保存か、現地のオープン保存か、埋め戻し保存か記録保存かになると、埋め戻し、記録保存になると、建物を建て、中はもうなくなります。大概記録保存ですが、記録保存は大変立派な保存の仕方だと今までの記録を見て、ちゃんと記録しているかは非常に大事かと思います。今はデジタルでもいろんな映像の保存もできますので、とにかく映像の保存をちゃんとするようにと言っており、そのような認識であります。

 文化財の保存の仕方とか考え方は、ユネスコの本体も変わってきています。ユネスコの本体で大事だと言っているのは、トレーサビリティーです。どのようにその保存、修復がされてきたのかということです。このようなものですということをその過程を透明化する、公表する風習が出ています。みんなで現地の穴ぼこの跡を公開する際は、それはどういうものだったかを含めて記録保存するのが大事です。穴の形だけが残っていて、どういう穴かわからないというよりも、窯の跡、ほかの文書の記録とかいろんな記録を総合して、これはどういうふうに使ったのかということを保存するのが拡大保存だと私は思っています。そういう保存の仕方を続けていく必要があるだろうかと思って、これは保存の仕方の関連ということになります。ユネスコの日本で活躍されている人は、だんだんそういうふうな形になってきております。それはいい傾向だと思います。

 ここのことも、登大路の瓦窯の跡地というのはそのとおりだと思います。そういう跡地がいろいろありますが、これは本質的なところとあまり関係ないかもしれません。跡地の土がこのように、窯を置いた跡とか残っていることが、残っていたのが崩れて余り残ってなかったということも斟酌されたと聞いておりますが、それはあんまり保存の本質とは関係ないと思っています。

 現地で残すべき意味があるかどうかという判断で、これは観念的でなく、積み重ねて、どういう場合は現地でどのように残すのかが客観的に出ていません。文化財の保存で、文化財の保存の審議会に最近では駆り立てられて委員になったりしますが、調査員の裁量に任されてきたというのが日本の文化財保存の実態です。もう少し客観性を持って保存しないと、思わぬとこで捨てているかもしれないという観点もあるし、思わぬとこで捨てているから何でも残せというのも、私はツーマッチだと思います。それはトレーサビリティーかトランスペアレンシー(透明性)というのはぜひ必要だと。イタリアでもそのように進んでいるんだから、日本でも遺跡が大事ですから、そのような客観性、ガイドラインをつくるように文化庁に要求してまいりました。調査官が悩まないよう、どのような場合にどういうふうに処理するのかということを、ガイドラインを作成いただけるよう文化庁長官と文科大臣に言ってまいりました。

朝日新聞:
 50年前には埋め戻し保存を決定したが、その決定が変わったということに何か合理的な説明があるのか。それがユネスコだというのが今、具体的答えということですか。

知事:
 時代の流れもあるかもしれませんが、基本的に昔の保存が今よりも徹底してなかったという感じがいたします。昔は、単に埋めて戻しておけばいいという現地保存で、記録は重視されなかったと、今のケースを踏まえて感じます。記録保存は、より大事だというふうに変わってきたと思います。それはユネスコが変わったのは、トレーサビリティーというのは記録保存と裏腹ですので、それがあればいいよというのは、記録保存の手法が進歩したからだと今のこのお話、議論を踏まえると、そのようにも思いますが、それがあれば世界中の人がわかる。

 デジタルだと、その関心のある人は皆、現地に来なくても世界中からデータがとれるわけです。モヘンジョダロにしても、いろんなとこの遺跡の状態が、今埋めて無くても、そのときの映像を見ると、ああこれはこちらと同じ窯のつくり方だというふうに考古学者には考えてもらわないといけません。

 デジタルの記録保存は、非常に大事だと私は思います。それは世界中にその情報が飛び回りますので、俺が掘ったシリアの遺跡とどうして奈良の遺跡が似てるのかということを比較してもらえます。現地に行かなければわからないというのは一つの保存の仕方ですが、象徴的にどこか残しておくという現地保存の仕方もあろうと思います。全部残すかどうかは、保存の仕方は、そのような議論をちゃんとしてくださいということを、客観性を持ったガイドラインを作成してくださいという要望をしているところです。そういう考え方自身が進歩してきた、それとデジタルの記録保存の仕方が進歩してきたというのが背景にあるように、個人的には感じています。

朝日新聞:
 今、保存の残存の状況が悪いというのが今回の決定の一つの要因とのことだが、取材では、知事部局である橿考研の調査の結果をもとに文化財保存課が決めたと聞いている。橿考研が知事部局になったので、公平な判断ができるのかというのが一つ。ほか、興福寺の意見とか、研究者への意見というのは聞いた上での判断なのかという、その手続、どういう手続を得たのかというのをちょっと教えていただければと思います。

知事:
 組織が移ったら公平性がなくなるというのはないです。それは独立した誇りも皆さんおありだから、そんなんで緩むはずはありません。今までの調査官の裁量が多過ぎて、考えによって客観性がないという批判は常にあったわけです。それを客観性を持つようにと、言っているわけですから、橿考研が組織が移ったからということはないです。

 今度は、教育委員会にある文化財保存課も知事部局に移してもいいという法律改正を今、審議が進められているので、私は賛成と言ってきました。保存と活用というのは車の両輪だという言い方をしてきました。保存と活用は、観光の見せ物にするだけじゃなしに、活用というのは、記録保存というのも一番大事な活用であります。活用の基本は記録保存、このようなものがあったよということを記録するというのは、活用の第一歩だと私は思っております。保存と活用を車の両輪にするというのを、文化財の特別部会があって、私の持論を申し述べてきました。そのときに、文化財保存課が県庁組織に移っても独立性は変わらない、そのときの研究者の独立性か、研究組織の独立性か、あるいは研究内容の独立性、一番大事なのは研究内容の独立性であります。それが研究者が自己の、個人の志向でぐらついたら困るわけでありますので、客観的な判断ができるようなガイドラインを、これは中央でできるだけ尽力してつくってほしいと思います。

 中央にも、文化財の保存のガイドラインはありません。これは、調査員の裁量に任されているのはぶれるということを言っているわけなんです。知事組織になると何でも記録保存にしろと、何でもと言われると困るじゃないか、そういうご心配がある。何でもではなく、どこで残すべきか、現地保存にすべきか、記録保存にすべきかということの客観基準をどう持つか、それがなくなると永久になくなるだろうと、こうおっしゃる面がありますが、それの価値を何もわからないんですかと。みんな残すべきだというような研究者は今世界中あまりいません。大事なものを破壊されるのは困るというのは、およそ全ての人の期待ですが、大事なものの判断を客観的にして、大事なものかもしれないというのも大事にしてくださいということが、普通の言い方じゃないかと私は思っています。それを、その体制をつくってほしいというのが文化庁に対するお願いであります。曖昧なのは困ると。

 よくあるのは、研究者のための文化財に成り下がるということです。俺がやらなきゃこの文化財はわからないんだといって、文化財を私物化し隠してしまう研究者を何度もみました。文化財は公共財で、公のために利用しなきゃいけない。調査官も、自分の研究の対象だけに使ってはいけないということを叫んできました。日本の文化財の研究はそういうことが往々にしてあります。だから客観性を持ってくださいといって文化庁に言っております。文化庁も困っているし、研究者自身も困っているんです。

朝日新聞:
 興福寺の意見、研究者への意見というのは聞いた上での判断ということか。

知事:
 そのガイドラインがないのに、その意見も、どうしてそれは保存すべきかと思われるようなことが個人の志向があるんじゃないですか。この世界は、無責任な意見は拒否しないといけません。無責任と決めつけているわけでない。元興寺の研究所というのは、民間であんな研究されている機関はないし、ずっとやってこられているから、程度が高いと思います。

朝日新聞:
 繰り返しますが、全てを残せと僕は言っているわけじゃないですよ、言っているわけじゃないんですが、1000年以上前の焼き討ちのときですかね、それすごい貴重な、大体1000年前といったら自分の所では何もないですから、奈良だからこその遺跡だと思うんですけど、そういう遺跡、文化財というのを除却してしまって県の新しい施設をそこにつくるということについて、県民の理解は得られるのかというのが1つ。

 せっかくあるんだったら、何も決まってない県立美術館の整備計画というのは変更もまだ可能であろうと思われるので、全て今の段階での結論を出す、遺構を破壊するという結論を出すにはいささか早いじゃないかなと思ったりします。

知事:
 個人的な意見ですか。

朝日新聞:
 僕の個人的な意見を言うとちょっと質問にならなくなるんで、個人的な意見はちょっと差し控えます。

知事:
 いや、個人的意見でもいいけども、個人的な意見をみんなの意見というほど悪いことはないから、個人的意見のほうがいいと思うんだけどね。みんなの意見かどうかわかんないんだから、一部の人の意見であることは間違いない。世の中はそういう方がおられるから、それを採用すべきかどうかはできるだけ熟議して、客観性があるのかを、文化財の保存の仕方は奥深いから、感情的にならないでリアルに判断していかないと。文化財の保存はとても大事と、何度も言ってますが、保存の仕方についてはまだ議論があるところですから。

 だから県民の理解というのも、県民の方々がすごく関心の高い人と関心の薄い人がある。いつも県民とおっしゃるが、どういうふうにこちらが理解すればいいかは、これは政治的な課題で、行政の課題でもあります。できるだけ後世におかしな判断したなと言われないようにするのが、もう最大の立ち位置だと思っています。そのときにどのように判断すべきかというのは、文化財の保存というのはどのようにすべきかという基本的なところで、思い込みはないです。開発ありきは当然ないです、こんなことを言っている限りは。

 文化財の保存、医大前の藤原京の遺跡もそうですが、みんな日本は遺跡だらけだから、大事にすべきです。地中の遺跡をどのようにすべきか、とても大事な課題だと思います。まだまだ掘っていきたいとこもあるけども、とにかく掘って探さないといけません。その結果わかることが多いので、わかるというのはとても大きなことです。結局わかるのはその記録でわかるんだから、しかもより多くの人が知るのが、デジタル化で世界にこういうものがあったということを発信することでないかと私は思います。すると歴史の流れがそれで捉えられる可能性があります。1000年ぐらいはヨーロッパとか中央アジアのことを思うと、短い間です。だけど、日本にとっては貴重な1000年だから大事にしなきゃいけないと思います。

朝日新聞:
 今の段階では埋め戻して、県立美術館の整備計画ができ上がったのを待って、それが固まってから、必要に応じて残しますよとかいう、そういう転換というのはない、今のところはもう記録保存ということですか。

知事:
 繰り返しになりますが、現地でそのまま残すというとても積極的な理由があれば、いつでも採用しますということです。現地保存というのは、過去何十年で奈良県でも2件ぐらいだと聞きました。すごく大事なこと、しかもまとまって残っているものがあれば、平城京みたいなものですが、これはとても大きなことであります。だから記録保存というのはあまり重要視されてなかった面が、開発拒否の志向で、明日香立法ができたのですが、どんどん住宅地にしようという流れをとめる行動があって、明日香保存法ができて今になったから、それはよかったと思うのです。奈良県内にどんどん住宅地ができて、遺跡の上にたくさんできていると思います。京都は平安京がどこにあるかわかりませんし、探し出すのは至難のわざだと思います。上からレーザーかけるとわかんないのかなと思いますが、記録保存があれば、このあたりにあったはずだということがわかりますが、記録もないというのはどうしてだろうというのが平安京の謎です。わかってもさわるのが大変なとこにあるのでしょうか。その点は、平城京は残ってよかったと思います。

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国文祭・障文祭について

NHK:
 国文祭・障文祭が終わりましたが、初めての一体開催ということで、特にその一体感の醸成なども含め、知事としてどういうふうに総括されているのか、お聞かせください。

知事:
 奈良で初めて国民文化祭、また全国障害者芸術文化祭、これも初めてさせていただいてありがたいです。青柳さんにこれを3年前に言われて取りかかり、いよいよ終わりですが、その中で全国障害者芸術文化祭との一体開催は、これは文化庁にも要望して奈良県で一体開催させていただいたように自分では思っています。予算が文化庁と厚生労働省と2つから出ているので、一緒にやってもらうと困るという話があると事務的に上がってきたので、それはおかしいんじゃないかと思って、文化庁でだめだと言っているのかというところまでかけ合いに行きました。先方は、そんなことはないとその場で言って、では一体開催するといって踏み切り、それですんなりいった面があったように記憶しています。

 そのとき両方から予算が出て、一体開催したら予算をどう使うかというのは事務的にとても大事なことで、それは明確にするようにしております。それをすれば、一体開催はやはりすごく雰囲気がいいように思います。来年の大分県や、その次も一体開催をするということ、一体開催というのは同じ場所で同じ時間でするという、同じ場所を障害者のある人と共有するということですので、それがどんどん進みそうでとてもうれしく思います。

 大分県への引き継ぎをこの日曜日にしましたが、大分県の副知事は、今度は障害者芸術・文化祭との一体開催を全市町村ですると、このように表明されました。主要なイベントを一体開催するだけでなく、市町村のイベントも全部一体開催すると。障害者の福祉は市町村が担っておられるのが実情ですので、そういう方たちの参加を、市町村が大きなプロモーターになっていただくのは、これから大きな力になってくると思います。だから一体開催を最初にできたのは大変名誉なことであったように思います。

 もう一つは、「文化の力で奈良を元気に」ということですので、文化イベントはよく政治家の方も経済効果があるのかと、こうおっしゃるんですが、経済効果はそこそこあることは確かなんですが、文化のイベントは結局地域のブランド化なんですよね。イタリアでも即物的な効果よりも、あれだけの文化のブランドを持っているから、観光客も行くと。ブランド力というのはあまり日本人は抽象的なので信じてこなかったのかもしれませんが、地域のブランド化がとても大事だということにだんだんなってきているし、そうだと思います。奈良のブランド力の大きな根幹は文化財だけでなく、文化活動だと思うんです。それをだんだん展開するように気をつけてきましたが、奈良県が3カ月やっている奈良県大芸術祭は、やり始めて3年ぐらいですが、催事がすごくとんとん拍子に増えてきたんですね。今年も800ぐらいだったと思います。それを並行して今年もやっています。それが土台になって、奈良県内各地でやる文化芸術活動、障害者の芸術活動も奈良県でそこそこされてたので、一体開催はそう不思議ではなくて、スムーズにいったと思います。

 そのような中で、今年させていただいて、文化をテーマにした地域のブランド化、地域の活性化というのは、やはり大事だということを再確認したと思います。また、これからさらにどう続けるかという課題はあると思いますので、国からの大きな補助は出ませんが、奈良県でできるようなこと、文化芸術活動、障害者も含めた一体的な活動が、同じような雰囲気で続けることができたらうれしいなと思っています。来年のことは終わってから、次どうするかを考えていきたいと思いますが、奈良県大芸術祭というのはずっとしますので、同じように盛り上がる一体的な文化芸術活動がこの秋にでき、その中身がすごく濃くなるように、また、一体開催性がより強く出ればいいなというふうに思っています。

NHK:
 ご感想として、一体感の醸成、障害者と健常者の相互理解や、ともに同じ空間にいて交流をするなどについて、実質的な手応えは感じましたか。

知事:
 そうですね。一緒の舞台に出てきてもらうというのがあります。それと一緒に観覧するのも、障害者の方がおられても全然違和感がない。声を時々出されてもいいんだというような芸術鑑賞、芸術参加が普通に常態化するのが大事かと思います。障害者の方と一緒に文化芸術活動しているんだという「慣れ」がとても大事かと思いますので、学校でも、まちの中でも、そういう「慣れ」が出るようにと思っています。文化芸術活動を一緒にするというのは、仕事を一緒にするよりもより楽しいことで、そのような現場は随分見ました。ああ、よかったなと思っています。

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過疎地問題について

読売新聞:
 過疎地について、少し前の4月の法改正で、奈良県内の39市町村のうち、18市町村というほぼ過半数が過疎地になりました。特に北西部の三宅町が新たに指定されたということで、このことに関して知事のご所見を伺いたい。また、県としての過疎対策が当然これから大事だと思うが、その対策についてお聞かせ願いたい。

知事:
 人口が減り始めましたが、人口がふえていたときでも過疎が進んでた地域があるんです。それは大都市集中、最近では東京集中ということになってきてますが、それは田舎に職業、働く場が少なくなってきたのと並行して、今までは田舎の68%が山林地で、その山林地でも木材という産業があったことの反映、あるいは農業も、小さな農業で生きていけたということがあるんですが、産業化が進むと大都市で働く場が提供されるようになり、皆、大都市に行くようになってきたと。明治政府は、富国強兵で、兵隊も田舎から調達してきた面がありますので、そのような中で、人口がふえる中でも過疎地振興(がありました)。今度は、人口減少の中での過疎地振興。

 過疎は、人口減少と同一視される面もありますが、要は人口の密度が少ないというふうにとりますと、人口の密度の少ない村は昔からあったので、そのこと自体は余り恐れおののいても仕方がないと私は思っています。過疎地でも生きる力はどのようにすればいいのかということ、例えば過疎地が18もある、どうしますかという質問自体が、非常に過疎はネガティブだという前提条件があるように感じましたので、過疎地はポジティブだとも言えないですが、あんまりネガティブな現象だと思わなくても、じゃあどう対処するかという、2つ目の質問のほうがより重要なことだと思っています。

 過疎地での生きるすべということは、各地の私どものような立場の者は常日頃から考えなければいけないテーマ、ターゲットだと思っています。その中で、過疎地でも元気で生きがい、働きがいのある生活とはどんなものかということが基本だと思います。「過疎地は大変ですね」というのは、とてもネガティブなようなことを相手に言っているような気がします。観光部長の時に、観光でカナダの随分田舎の観光地を旅行しました。日本の過疎と比べられないぐらい過疎でしたが、何かこういい暮らしといいますか、豊かな暮らしをされているんですよね。これは、ああいうヨーロッパの草原や、違うところで生きてこられた生活スタイルが、カナダの過疎地にきて、人が豊かに暮らしていると。二階さんと一緒でしたが、「和歌山の田舎を過疎なんて言えないな」と、「半島振興法みたいなのがあったから」ということをおっしゃっていましたので、過疎地でも豊かに暮らす知恵が出るように思います。

 今は、人口が移動するから空き家が出たりするんですが、過疎地での定住とはどんな、定住すると過疎地という定義がなくなってくるんですが、人口密度の低い地域でも安定して生きられる知恵というのは長年かかってもつくっていけるように思います。もとからそのような地域ばかりだと言ってもいいぐらいで、まちのほうが少なかったわけですから、気分だけかもしれませんが、まずはポジティブに捉えようと思っています。

 その上での対策ですが、人口が減少するというトレンドで過疎に入ってくるというふうに言われる面もあるんですが、人口減少はもう全体として進んでいますし、大都市に移っています。しかし人口が減ったり、密度が少なくなっても生きていくには、少なくとも働き場所、働きがいがそれぞれの場所であったほうがいいというようなことを基本にしています。生活の安心・安全とは、医療とか、介護とか、墓地とか、健康ですね、そのようなものも大事かと思っています。

 日本は、健康、社会福祉的なものは、随分先進国であると思います。すごく社会保障は立派になっていると思います。保険からして、田舎でもそうみすぼらしくはなくなっていると思いますが、まだ遅れていると思うのは、田舎での豊かな暮らしを支える働き場所です。田舎での働き場所がうまくできればいいのになと思っています。新しく過疎地になった三宅でも、南のほうにあるいろんな旧来からの過疎地でも、奥大和では働きがいということをいろいろやってくれていますが、ああいう細かいことを積み重ねていくのが基本かなと思います。働き方は、また大都市とは違う働き方をだんだんできるような気がします。今までとまた違うシチュエーションだと思ったほうがいいんじゃないかと思うんですけどね。まだ、過疎地での、人口密度の少ないところでの定住というのはまだ手探りだと思いますが、いろんな事例が地方地方の知恵で出始めていると思います。過疎地という認定がふえましたが、実は過疎地の財政支援は手厚いんです。財政支援が手厚い地域になったなと、じゃあどうしようかといったふうに考えています。

読売新聞:
 三宅町が平野部の中で初めてそこだけ過疎地になったことに関しては。

知事:
 過疎地のイメージとまたちょっと違うんですが、その地域の人口減少が何か著しいようなので、過疎振興町という認定になったと思います。そのこと自身は形式的なことなので、いわゆる従来の過疎地、遠隔地というのとまたちょっと違いますよね。過疎対策の奥大和構想の中に、北西部にも過疎地が出現したことを前提に、三宅町も中に入れて対策を講じるようにしていますが、三宅町の周りに、工業ゾーンをつくるなどいろいろ進んでいます。わざとしたわけではないんですが、過疎地であることが表に出てこなくなったのは合併です。合併すると、過疎地域が大きな人口になって、全体としては大きな行政区画になった。しかし、その中で旧大塔村みたいに、五條市全体が過疎地域に認定してもらって、過疎債が使えてありがたいといったような財政措置の恩恵はあるんですが、五條市の例を見ても、五條市のまちの集積と大塔村、場合によっては村は違いますが、野迫川村など、同じまちの中の過疎地帯というのは、全国、東京の近郊でも出ているんです。これは過疎地域と認定されないだけなんですが、そのような人口密度の濃いところと低いところをどのようにするかという、普遍的な課題があるように思います。まだそのように見ているだけで、何をするのかというところまでいいアイデアがまだ浮かんでいません。

司会:
 それでは、これで知事定例記者会見を終了させていただきます。
 幹事者さん、よろしいですか。
 ありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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