野菜・花き共通害虫

野菜・花卉の害虫

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アブラムシ類
被害の特徴と発生形態
多くの種類があり、その中でもワタアブラムシとモモアカアブラムシは多くの作物で発生し、各種のウイルス病を伝搬する。そのほか、新葉が巻いたり、萎縮する、排泄物(甘露)で葉や果実がベタベタしたり、スス病が発生するなどの被害が出る。/(1)ワタアブラムシ/体色が黄緑色から暗緑色(黒色に近い)等変化に富んでいる。一般的に6~8月に発生が多いが、施設栽培では冬でも発生する。/(2)モモアカアブラムシ/無翅虫の体色は変化に富んでいるが、大別して淡黄緑色・緑色と淡赤色・赤褐色の2タイプがある。低温の時期には後者が多い。春(4~5月)と秋(9月)に発生が多いが、施設栽培では冬でも発生する。
カスミカメムシ
被害の特徴と発生形態
スイカ、キュウリ、ナス、キク等で被害が見られる。加害種は数種いるが、ミドリカスミカメ類が多い。成・幼虫が生長点付近の茎葉を吸汁する。新葉に小さな孔が多数あいて奇形葉となり、加害が激しいと生育が著しく阻害される。被害は5~7月に多い。



コナジラミ類
被害の特徴と発生形態
オンシツコナジラミとシルバーリーフコナジラミの2種が、施設栽培のトマト、ナス、ウリ類、ポインセチア、シネラリア等で多発する。施設内では年間10世代以上繰り返す。野外では卵で越冬する。幼虫・蛹は扁平で、葉裏に付着している。成虫は若い葉を好む。成虫の体長は1mm前後でロウ物質に覆われ、白色をしている。排泄物(甘露)にスス病が発生し、多発すると葉や果実が汚れる。



マメハモグリバエ
被害の特徴と発生形態
野外では4月から10月まで、施設では周年発生する。キク科、マメ科、ナス科、ウリ科、アブラナ科など幅広い寄主範囲を持つ。成虫は体長約2mmで、頭部、胸部及び腹部の腹面は黄色、胸部及び腹部の背面は黒色の小型のハエである。雌成虫は産卵管で葉に穴をあけ、滲み出る汁を吸い、産卵する。この跡が白斑となり目立つ。幼虫は黄色のウジで葉肉を食いながら葉内を進んでいき、エカキ状の食痕を作る。終齢幼虫は葉から脱出し、地面の土壌間隙で蛹化する。激発すると落葉にいたる。

タネバエ
被害の特徴と発生形態
4~5月と秋頃に、豆類、ウリ類、アブラナ科、ネギ類、ホウレンソウ等の多くの作物の発芽時の種子や苗の根部で発生が多い。特に、鶏糞、魚かすなど未熟堆肥、有機物の臭気に成虫が誘引されて、産卵が多くなる。卵から1週間で孵化した幼虫は白いうじ虫で、発芽直前の子葉や胚芽を食害し、発根間もない根に食入する。20℃付近の低温期にしばしば多発生する。



アザミウマ類
被害の特徴と発生形態
野菜・花き類を加害するアザミウマ類は多種におよぶが、中でも農業生産上特に重要な種は、以下の通りである。/(1)ミカンキイロアザミウマ・ヒラズハナアザミウマ/広食性で被害作物は多岐に渡るが、特に花を好む性質から、花き類一般と果菜類(イチゴ、トマト、ナス、キュウリなど)で被害が大きい。花や葉の組織内に産卵し、幼虫は花・葉の表面組織や花粉を摂食し、土中で蛹になる。成虫は花粉を摂食することで生存期間が伸び、増殖能力も著しく高くなる。圃場内では開花期に増加するが、周辺の雑草や付近の他作物が開花していればそこでも増殖して、圃場内に飛来する。ヒラズハナアザミウマは3~4月から夏にかけて増加するが、ミカンキイロアザミウマは冬期休眠しないので、促成栽培イチゴでは2月以降増加する。ミカンキイロアザミウマは、トマト、キク、ダリアにおいてTSWVの媒介者として重要である。/(2)ミナミキイロアザミウマ/広食性で、ウリ科作物やホウレンソウ、シュンギク、キクでは主に若葉の葉裏や新芽に、ピーマンでは主に花や果実に、ナスでは若葉と花・果実に寄生し、展開葉の奇形や葉裏のシルバリング、傷果の発生をもたらす。露地越冬が不可能であり、冬の発生は加温施設内に限られる。/(3)ネギアザミウマ/広食性であり、ネギ、アスパラガス、ナス、トマト、キクなど多種の作物を加害する。葉や茎を加害し、白斑を生じるほか、多発すると新葉が展開しなくなる。
ハダニ類
被害の特徴と発生形態
野菜・花きにおいて重要となるのはナミハダニ、カンザワハダニの2種である。ナミハダニには淡緑色の黄緑型と、赤色型が存在する。黄緑型は俗に白ダニとよばれているものであり、赤色型は以前ニセナミハダニと呼ばれていたものである。また冬期には体色が朱色に変化した休眠雌が出現する。これに対してカンザワハダニは赤色~濃赤色を呈し、休眠雌はやはり朱色に変化する。両種ともに多種の野菜、花き類を加害し、通常は葉裏に寄生する。加害部位には白い斑点を生じ、激発すると吐糸が絡まり合って葉裏がクモの巣状になり、葉表にも移行するようになる。高温乾燥条件で増加する傾向があり、梅雨明け後の夏期の好天が続くと急増する。

ホコリダニ類
被害の特徴と発生形態
非常に微小な害虫であり、肉眼での確認は不可能である。ウイルス病や生理障害と混同されることもあり、顕微鏡による確認が必要である。広食性であるため雑草も発生源になっていると考えられる。/(1)チャノホコリダニ/野菜、花卉など多種の作物を加害することが知られている。葉裏、蕾、幼果に寄生し、葉の縮葉や巻葉、奇形、果実の奇形、さめ肌を引き起こす。梅雨明けから9月に多い。/(2)シクラメンホコリダニ/シクラメン、ガーベラ、セントポーリアなどの花卉類、イチゴで被害が多く報告されている。未展開の葉や新芽の内部、蕾とがくの間等、暗くて湿度の高い部位に寄生する。新葉や芽の変形、枯死、花の奇形や変色を引き起こす。

ネダニ
被害の特徴と発生形態
各種植物の根に寄生する。ネギ、タマネギ、ニラ、ラッキョウ、ニンニク、ユリ、チューリップなど球根類に多い。多発すると細根の発達が悪くなり、地上部の生育も悪くなる。また球根の腐敗の原因ともなる。


センチュウ類
被害の特徴と発生形態
(1)ネコブセンチュウ/野菜、花卉など多種の作物を加害する。加害を受けた作物の根は組織が盛り上がってコブを形成し、養水分不足から地上部の生育が貧弱になる。/(2)ネグサレセンチュウ/広食性であり、イモ類、トマト、ダイズ、キクなどを広く加害する。塊茎、球根、地下茎に侵入し、腐敗させる。



なめくじ・マイマイ
被害の特徴と発生形態
ノハラナメクジ(小型で黒褐色)、ウスカワマイマイ(黒褐色の殻を持つ)、チャコウラナメクジ(小型で褐色、背面に甲羅状の殻がある)が多い。湿度の高いところを好み、夜間に葉、蕾、果実などを摂食する。這った跡には特徴的な光沢のある粘液状物質が残っている。野菜、花卉など多種の作物を加害する。幼苗期の食害は初期成育に影響する。



オオタバコガ
被害の特徴と発生形態
6月~10月にかけて年5回発生する。ナスやトマト、ピーマンの果実やキクやバラの蕾等を加害する。成虫は夜間に飛来し、圃場に散らせて1粒ずつ産卵する。産卵後約3日でふ化し、幼虫は幼果や蕾などに食入する。1頭の幼虫が移動して、複数の果実や蕾を加害する。夏期には孵化後約2週間で老熟幼虫は果実を出て土中に移動して蛹になる。蛹は約10日後に羽化する。秋に発生が多くなる。近似種のタバコガも同様の被害となる。

ネキリムシ類
被害の特徴と発生形態
カブラヤガの成虫発生時期は5月上旬、7月上旬、9月中旬で、作物や雑草の地際部に1個ずつ産卵する。1頭の雌成虫は1000粒ぐらいを産卵する。産卵後約5日で孵化し、2齢幼虫までは地表近くの葉裏に生息して加害するが、被害は判りにくい。3齢から4齢以降の幼虫は灰黒色で土中に潜り、定植後の作物の地際や芯部を食害し、株元を切断して地中に引きずり込む。幼虫期間約30日で、蛹期間は約6日である。雑草がはんもしていたところや前作物の残さが多い所では、土中に幼虫が生息しやすいため定植後に被害が出やすい。類似するタマナヤガは、カブラヤガよりやや大きく、4月末から11月末まで年間4~5世代発生する。

ヨトウムシ
被害の特徴と発生形態
年2回成虫が発生し、4~5月と9~10月に成虫が夜間に飛来し、多くの作物の葉裏に100~200粒の卵塊を産み付ける。卵塊は鱗粉などで覆われていないので、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ等と区別できる。卵は約5日で孵化し、若齢幼虫は集団で加害する。3齢幼虫から分散して昼間は土中や株の奥に潜み、夜に加害する。黒褐色の老熟幼虫は、土中で蛹となる。高温の夏期には蛹は夏休眠し、羽化は9月以降となる。秋発生の幼虫は土中で蛹となって越冬し、翌年春に羽化する。


ハスモンヨトウ
被害の特徴と発生形態
多くの作物を加害する。施設内では周年発生する。野外では5月頃から成虫がみられる。キャベツでは葉裏等に1卵塊で200~400粒が産み付けられ、表面が鱗粉で覆われている。卵期は3~4日で、1~2齢幼虫は集団で食害する。幼虫期間は25~30日で普通6齢を経て土中で蛹となる。8月下旬以降は多発生しやすく、露地栽培では11月頃まで被害が続く。
ハスモンヨトウ幼虫

ヤサイゾウムシ
被害の特徴と発生形態
雌のみで単為生殖し、年1回発生する。多くの野菜で11月から5月の低温期に加害する。成虫は6~7月に羽化して夏休眠した後、10月頃から野菜や雑草の地際部に産卵をする。成虫は夜間活動し、施設内でトマトやナス苗などを食害しながら春まで産卵をする。露地野菜では厳寒期を除く暖かい時期にホウレンソウやニンジンの発芽後の幼苗を食害し、産卵する。幼虫は、頭が褐色で胴体が淡緑色または黄緑色のウジ状である。孵化した幼虫はゆっくり成長して春に老熟幼虫となって、土中で蛹化し、6月に羽化する。遅れて、春に孵化した幼虫は生長が早く、4~5月に土中に潜入して蛹になり、やや遅れて羽化する。特に、3月頃の幼虫の食害が最も大きい。



コガネムシ類
被害の特徴と発生形態
野菜を加害するコガネムシには、ドウガネブイブイ、マメコガネ、ヒメコガネ、セマダラコガネ、アオドウガネなどがある。主なものはドウガネブイブイで、年1回の発生である。成虫は6月頃より現れ、茎葉や花などを食害する。雌成虫は30~50日生存し、生涯で200粒の卵を数粒から数十粒ずつ固めて地中に産み付ける。卵は約10日後に孵化し、幼虫は土中の腐植を食べて成長する。7月上旬頃には2齢の乳白色の幼虫が見られ、根・茎を食害する。8月になると3齢以上の幼虫となり、食害が増え、被害が激しくなって気づくことが多い。気温が下がると、深く潜って越冬する。マメコガネは6月上旬から8月中旬に多い。アオドウガネは4月から9月上旬に多い。
コガネムシ類
コガネムシ類幼虫

けら・コオロギ
被害の特徴と発生形態
(1)ケラ/年1世代で、成虫越冬する。4~6月頃に約60粒を産卵する。孵化幼虫は集団生活をするが、発育するに従って分散し、独立生活をする。幼虫は7齢を経て成虫になるが、50~75日を要する。成虫の寿命は長くて、200~400日も生存する。成幼虫ともに土中にトンネルを掘り、幼苗の根を切ったり、浮き株を引き起こし、生育不良を起こす。/(2)コオロギ/エンマコオロギ、オカメコオロギ、ミツカドコオロギなどがある。エンマコオロギは年1回発生で、卵態で越冬し、6月頃より孵化幼虫が現れる。夜間に雑草の芽や種子を食べて生長する。7から8回の脱皮後の8月頃になると成虫が増えてくる。夏から秋のキュウリ、ホウレンソウ、キャベツ、ダイコン等の発芽間もない苗を根元から食害する。敷きワラなどは住みかとなりやすい。飛ぶこともできるが、普通は歩行で移動する。
コオロギ

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