奈良県が取り組む太陽光活用とは?
日本は、エネルギーの多くを海外から輸入しています。2021年度の日本のエネルギー自給率は13.3%と、他のOECD諸国と比べても低い水準です。また、日本で供給されるエネルギーは、石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しており、特に原油は中東地域に90%以上に依存しています。
エネルギーの多くを海外から輸入していると、万が一、紛争などが起きた際に輸入価格が大幅に上がる可能性があり、日本国内のエネルギー不足を引き起こしてしまいます。
出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」2024年2月発行
POINTー燃料価格が電気料金やエネルギーコストに影響!ー
2021年以降、ウクライナ情勢をめぐる地政学的緊張の高まりなど受けて、液化天然ガス(LNG)や原油、石炭などの価格が大きく上昇しています。
出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」2024年2月発行
化石燃料から再生可能エネルギーのへ転換の必要性
例えば、世界の原油埋蔵量は、中東が約半分、南北アメリカが約3割を占めています。
このように、供給量や価格変動が海外の他律的要因で決まることが多い化石燃料に対し、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス等の再生可能エネルギーは地球のどこにでも存在し、国内でも生産することができます。そのため、海外の他律的要因に左右されにくく、有望かつ重要な国産エネルギー源となっています。
出典:資源エネルギー庁 令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)
▼脱炭素・水素社会にむけた奈良県の取り組みはこちら
脱炭素・水素社会の実現へ!水素の先進地域を目指すプロジェクト始動!
温室効果ガスと再生可能エネルギーの関係性
また、再生可能エネルギーはつくる時に温室効果ガスを排出しないことから、外国へのエネルギー依存への脱却だけではなく、脱炭素社会の実現においても重要なエネルギーとして活用することが求められています。
日本の温室効果ガスの排出量の約85%はエネルギー起源の二酸化炭素です。そのため、温室効果ガスの排出量を削減するには、エネルギー部門の脱炭素化が必要となります。そして、エネルギー部門の脱炭素化を進めるためには、再生可能エネルギーの導入量を増やす必要があります。
出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」2024年2月発行
日本政府は、再生可能エネルギーの導入目標を定め、また目標達成に向け、2012年7月に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」を創設し、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度を設けました。FIT制度の創設以降、太陽光発電を中心に導入が広まっています。
出典:「今後の再生可能エネルギー政策について」(資源エネルギー庁)
また、奈良県でも、再生可能エネルギーの導入目標を定め、導入を促進しています。
出典:「第4次奈良県エネルギービジョン」(令和4年3月 奈良県)
再生可能エネルギーを活用する上での課題
再生可能エネルギー由来の電気の導入が広がる一方で、その活用には大きな課題もあります。それは、「電気は安く大量に貯めることができない」という点です。
電力の送電網内では、電気を使う量と発電する量(需要と供給)のバランスを常にとり続けるように調整することが重要になります(これを「同時同量の原則」といいます)。このバランスが崩れてしまうと電気の品質に当たる周波数に乱れが生じ、例えば、供給が需要を上回ると周波数が上がり、その逆の場合は周波数が下がります。周波数がぶれてしまうと、電気の供給を正常に行うことができなくなり、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、最悪の場合は大規模停電が発生してしまいます。
出典:資源エネルギー庁 なるほどグリッド
出典:資源エネルギー庁 スペシャルコンテンツ
また、電気の流れというのは、例えるならば人間の血液をイメージすると分かりやすいかもしれません。
人間の血液が大動脈から毛細血管を伝わって、全身の細胞まで行き渡るように、電気も日本全国に血管のように張り巡らされた電力ネットワーク(電力系統)によって運ばれます。人間の毛細血管のように、人口密度の低い地域の送電線の容量は少ないのが現状です。
しかし、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の創設以降、人口密度の低い地域に多くの太陽光発電施設が立地し、送電線の容量が足りない地域も生じています。本県でも新たな発電施設の送電線への接続を制限する地域が存在しています。
出典:電力広域的運営推進機関 かいせつ電力ネットワーク
太陽光と水素が担う奈良県の再生可能エネルギー
本県の南部東部地域には再生可能エネルギーである水力発電のポテンシャルがありますが、送電網への接続制限のために新たな発電施設を立地することができない状況があります。また、地勢的要件から風力発電はポテンシャルが見込めません。そこで、本県で再生可能エネルギーの導入を進めるには太陽光発電施設を軸とする必要があります。
太陽光発電は天候により発電量が左右されるため、電気の出力を調整することができません。このため、晴天時で発電量が増加している一方で電力需要が少ない時は、太陽光発電施設を送電網から切り離して出力を制御することになります。なお、2022年度における再生可能エネルギーの出力制御量は、九州電力管内が日本全体の78%を占めています。
出典:資源エネルギー庁 令和元年度エネルギーに関する年次報告
出力制御については、政府は
「出力制御の低減に向けた新たな対策パッケージ」として、需要面(出力制御時間帯の需要家の行動変容・再エネ利用の促進)、供給面(再エネが優先的に活用される仕組みを措置)、系統増強等で再エネ導入拡大・レジリエンス強化の環境整備など、切れ目のない対策を講じること
としています。また、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて調整力等として活用できる水素製造装置の導入支援をするとしており、水素の特性である、再生可能エネルギーを「貯める」力を活かすことが期待されています。
出典:資源エネルギー庁 令和5年12月19日 出力制御パッケージについて
再生可能エネルギーの活用!奈良県が取り組む脱炭素・水素社会実現に向けたプロジェクトとは?
奈良県でも脱炭素社会の実現を目指し様々な取組を推進しています。特に「太陽光」と「水素」は、内陸県であることや、送電線への接続の制約などから、多様な再生可能エネルギーを導入するのが困難な奈良県にとって、非常に重要で活用を推進していくべきエネルギー源です。
奈良県におけるこれらの取組は、例えば、再生可能エネルギー100%の電力で事業活動をすることを目指す企業や、脱炭素化に対応する必要がある県内企業等と連携することで、脱炭素社会の実現とともに産業の発展にも資することにつながります。
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