広瀬神社の例祭は4月4日に執行されるが、2月11日(もと陰暦正月12日)に「砂かけ祭り」として名高い御田植祭がとり行われている。境内に忌竹を立て注連縄を張って御田を設け、氏子が扮した牛と牛遣いが鋤く所作をし、松葉でつくった苗を植える。参拝の人々は牛役などに斎庭の砂をはげしくかける。田植えに必要な雨が充分に降るように祈願するのだという。終了後、参拝者に松苗と田の字を描いた田餅が撒かれる。松苗は播種のときに苗代の水口にさして発芽と豊穣を祈り、田餅はこれを食べて無病息災を願うという。砂かけは水かけと同じ意味を持ち、清め祓い、豊かな稔りを願う民俗だったのであろう。いかにも広瀬神社にふさわしい御田植祭である。
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