11)腹膜透析について

(1)腹膜透析とは?

末期腎不全の血液浄化療法として血液透析(Hemodialysis:HD)、腹膜透析(通常CAPD)、腎臓移植の3つが確立されています。
CAPDは1984年から健康保険で認められている在宅医療です。
HDでは、血液を体外に取り出して血液浄化をしますが、CAPDでは、透析液は常時腹腔内に貯留し、腹膜を利用して毎日24時間連続的に透析がなされます。

(2)CAPDのしくみ

腹膜は腹壁の内側と臓器の周囲を被っている薄い膜で、その内側の空洞を腹腔と呼びます。
腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分は透析液に移動します。
その後に透析液を体外に取り出すと血液を浄化することになります。
a)カテーテル
 透析液の出し入れをするために「カテーテル」というチューブを手術によって腹腔内に埋め込みます。
 カテーテルが体の外に出る部分はわずかです。
 カテーテルを半永久的に使うために患者さん自身でカテーテル出口部および周囲の感染予防に注意し、カテーテル出口部の消毒を毎日行い、清潔にしなければなりません。
b)透析液の交換
 透析液を腹腔から取り出し、新しい透析液を入れることを「バッグ交換」と呼びます。
 通常1日4回、1回交換時間は30分です。
 バッグと腹腔は外気に 触れることなく(閉鎖回路システム)自然の落差を利用してバッグ交換を行います。
 排液バッグを腹腔より低くして腹腔に貯留した透析液を排液バッグに取り出し、注入時は新しい透析液バッグを高い位置に置き、腹腔内に注入します。
 高齢者や視力障害者、手の運動障害者にはバッグの付け替えと殺菌を自動的に行う小型のバッグ交換器があります。

(3)CAPDの意味

CAPDはcontinuous(連続的)ambulatory(携行式)peritoneal(腹膜)dialysis(透析)の略です。
CAPDでは、腹腔内に透析液が存在する限り、血液を常に浄化するのです。
つまり、1日24時間、1週7日間連続的に停まることなく透析を続けます(連続的)。
CAPDでの透析は、昼も夜も、活動中も睡眠中もいついかなる時も行われます(携行式)。
CAPDでは、HDのダイアライザーの代わりに患者さんの腹膜が、血液から老廃物を取り出すフィルターの役をします(腹膜)。
老廃物や余分な水分は、腹腔内の透析液に移動して体外に除去されます(透析)。
つまり、CAPDは日常の活動を楽しむ自由を与えてくれます。
仕事、学校、旅行などの各自のスケジュールに合ったバッグ交換を、調整することができます。
そのためには患者さん自身が自分で管理することが、非常に重要なポイントになります。

(4)あるCAPD患者さんの1日

a)朝起きて1回目のバッグ交換終了後に会社へ。
b)透析液を貯留したまま健常人と同様に仕事をします。
c)昼食後の休みに会社または出張先で2回目のバッグ交換をし、仕事を続けます。
d)午後4時頃または退社時に3回目のバッグ交換をします。
e)帰宅して入浴後または寝る前に4回目のバッグ交換をします。

(5)CAPDの良い点

・24時間連続した透析ですから体液や血圧の変動が少なく、体への負担が軽度です。よって、食事の制限がある程度緩和されます。
・自由度の高い生活が可能で、社会復帰が容易です。つまり、在宅で治療ができます。
・透析設備が不要なため、透析病院のスケジュールに合わせる必要がありません。
・HDに比して透析導入時に残っている腎臓機能が長く保持されます。

(6)CAPDの悪い点

・カテーテルが腹腔内に留置されているため、腹膜炎とカテーテル出口部感染の危険性があります。そのためにバッグ交換時の清潔操作とカテーテル出口部の清潔に絶えず注意しなければなりません。
・入浴が不便です。入浴後にカテーテルケアを行い、カテーテル出口部を清潔に保ちます。カテーテル出口部を被う物品が必要なこともあります。
・腹腔内に1.5~2.0Lの透析液を注入するため、お腹が重く膨らんだ感じがしますが、徐々に慣れます。一部の患者さんでは、お腹の膨満感のために食事量が減少したり、腰痛が出現することがあります。
・CAPDの数年後から腹膜の機能が低下して体外に水分を除去することができなくなり、HDへ移行するか、HDと併用しなければならないことがあります。

(7)CAPDをするために必要なものは

まず、バッグ交換に一畳ほどのスペースが必要です。
バッグ交換時には薬剤として透析液を、また交換キットの器材を準備します。これらは毎月宅配されます。
その他、透析液の加温器、CAPDスタンド、ハカリ、CAPD手帳を揃えます。



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