8)運動療法

(1)運動の必要性

透析を受けている人は、糖や蛋白の代謝がうまくいかない、善玉といわれるHDLコレステロールの減少、筋肉量の減少、心機能の低下が指摘され、さらに、多くの場合、合併症などのため、安静を強いられ身体運動能力の低下が認められ、その対策として運動療法があります。
継続的に運動をすると、心肺機能や筋力を増強すると共に、糖・脂質代謝を活発にし、蛋白代謝にも良い影響を与えて健康の増進、貧血の改善、高血圧や心疾患などの生活習慣病に役立つことがわかっています。
また、食欲がでる、便通が良くなる、十分な睡眠がとれる、ストレスの解消になるなどの効果が見られます。
透析を始める前は、運動を控えるように言われていたと思いますが、これからは透析、食事療法と共に適度な運動をすることで豊かな社会生活を目指していただきたいと思います。

「運動をするときの注意」

運動は体力を回復し、活動的な日常生活を送れるようにすると共に、ストレス解消に効果的ですが、初めから計画性のない強い運動をすることは、逆効果となる危険性がありますので医師の指示に従い、軽い運動から始めましょう。
運動を始める前には、血圧、脈拍、体重を測り、軽い体操などの準備運動をします。
また、運動後も整理運動をすることで、筋肉痛、筋肉疲労を予防します。
なお、血圧が変動している、熱がある、風邪を引いているなど体調の悪いときは、運動を控えることが大事です。
そして以下のような病態の時は運動をするとかえって体をこわす場合がありますので運動をしてはいけません。
・尿毒症や水管理の不良で体調のかなり悪いとき
・血圧が非常に高い場合とか低い場合
・強い貧血のあるとき
・心不全や強い不整脈などの心臓に障害のあるとき
・息切れなど肺にかなり障害のあるとき
・骨や関節の障害を起こしているとき
・糖尿病で血糖のコントロールがかなり悪いとき
・重い網膜症などの目の障害があるとき
・甲状腺の働きが低下しているとき

(2)家庭でできる運動

運動の許可が下りたら 透析導入期、透析安定期に分け、少しずつ各自の年齢に合わせ軽い運動から始めます。
また、運動中に動悸、息切れ、関節痛などがあればすぐに運動を中止して下さい。
導入期には家の周り、平坦な道を歩くことから始めましょう。
30分間に1km程を目安に始め後々に時間をのばし、安定期には1時間に4kmを目安とします。
また、歩き方によっては関節などを痛めますので上手な歩き方を医師等に相談して下さい。
安定期にはラジオ体操、ストレッチなどを取り入れます。
運動量の目安としては息切れしないように余裕を持って行うことです。
さらに、階段の上り下りを20~30段を5~10分程度の目安でしたり、腕力、腹筋、背筋力をつけるため、腕立て伏せを1日に5回程度、膝を立て上体を起こした姿勢を5秒程保つ腹筋運動を少しずつ回数を増やしながらして下さい。
シャント部の血管の発達が良くない人は前腕の筋力をつける運動をしましょう。
ゴムボールを手のひらで握ったり開いたり50回を休みながら3回程度、ハンドグリップは握力に応じて選び30回を休みながら5回程度して下さい。



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