3)末期腎不全の治療法

食事療法や薬物療法といった保存的治療法でも腎機能が悪化した場合、腎臓の機能を代わりに行う治療法が必要となります。これには透析療法と腎移植があります。

(1)透析療法

   透析液を用いて身体に余分に蓄積する尿毒素や水分を取り除く方法で、血液透析と腹膜透析があります。
 血液透析は血管から血液を取り、これを器械に通し、余分な尿毒素や水分を除去して血液を体内に戻す治療です。表在する静脈から十分な血液量を得るために動脈と静脈をつなぐシャントを手術で作成する必要があります。
 また腹膜透析は腸などを包んでいる腹膜の中に透析液を入れ、尿毒素や余分な水分がこの透析液に染み出した後、透析液を捨てて代わりに新しい透析液を入れるという治療法です。腹膜内に透析液を出し入れするチューブを挿入する手術が必要となります。
 腹膜透析は家庭や職場で、自分自身で施行できるので血液透析のように病院での束縛時間は少なく、社会的活動がより可能となりますが、腹膜にチューブが入っており、腹膜炎を生じるなどの副作用もあります。

(2)腎移植

 腎移植は他の人の腎臓を自分に移植するもので、最も自然に近い状態が得られる治療法です。腎臓は骨盤のところに植え、尿管は膀胱につなぐので普通に尿道から排尿出来ます。亡くなった方の腎臓を使う死体腎移植(献腎移植)と生きている方の2個ある腎臓のうち1個を使う生体腎移植とがあります。透析療法では尿毒素や水分を除去する以外の腎臓の機能は補えないため長期になると種々の合併症が生じてきますが、腎移植では腎臓自体が機能するのでそのような合併症は改善されます。また透析療法では除去することが困難な物質もあり、その蓄積による合併症の出現や食事療法による摂取制限の必要性がありますが、腎移植では基本的には健常者と同様の食生活が可能です。
ただ、他の人の臓器を植えるために、自分と違うものは敵とみなして攻撃するという防御反応(免疫反応)が移植した腎臓に対して生じる拒絶反応が起こり、これを押さえる免疫抑制剤を一生服用する必要があります。このため、免疫抑制剤による副作用を合併してくる可能性があります。また、腎移植を希望しても、提供される腎臓の数が少なく、なかなかすぐには出来ないというのが実状です。以下に血液透析、腹膜透析ならびに腎移植の長所・短所を比較してみました。

血液透析・腹膜透析・腎移植の比較


 

血液透析

腹膜透析

腎移植 

長所 




 

病院での治療のため医療機関での管理となり、状態の変化などへの対応が早くなる。

 

在宅治療のため通院の束縛時間が短い。
持続的に毒素・水分を除去するため身体への負担が少ない。

通院の束縛時間が短い。
最も自然な状態が得られる。
食事・水分制限の必要がない。
 

短所 

病院での束縛時間が長い。
間欠的な治療のため体重や毒素・電解質などの急激な変化を伴い、身体への負担が大きい。
除去できない物質があり、その蓄積によって長期合併症を生じる。
食事療法・水分制限が必要。
抗凝固剤が血液を器械に通す際必要となり出血傾向となる。

自己治療のため厳重な管理が必要。
腹膜炎の可能性がある。
お腹から管が出ており美容面で問題がある。
入浴がやや不便。透析液に糖分が入っており、カロリー制限が必要。
除去できない物質があり、その蓄積によって長期合併症を生じる。
食事療法・水分制限が必要。
 

拒絶反応予防の免疫抑制剤を一生服用する必要がある。
免疫抑制剤の副作用を生じる可能性がある。
拒絶反応で移植腎がだめになる可能性がある。
提供腎の数が少なく、希望してもすぐには出来ない。
 


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