奈良伝承

 




和紙のできるまで

工房近くにある楮(こうぞ)畑。春に新芽を出し、冬には3m近くに成長して刈り取る。


楮を蒸し、剥ぎ取った樹皮を山や川のきれいな水に晒して、白い状態に。

煮たり、叩いたりしてほぐした楮の繊維に、水や植物のとろみ成分、白土を加えて材料となる。


丁寧に漉いた和紙は、水気を切って1枚ずつ乾燥させる。

端を整えて出荷する。出荷先は、表装用品の問屋さんなど。

慎重に、リズム良く和紙を漉きあげる。一瞬の
うちに繊維の流れもコントロールする植さん



どんな紙を作っているのですか?
 うちでは主に、書や絵を、掛け軸などに仕上げる『表装』(ひようそう)用に使う『宇陀紙』という和紙を作っているんです。江戸時代、宇陀松山の商人が、吉野地域の和紙を全国に販売したので、宇陀紙という名前が広まりました。現在でも、表装の分野で宇陀紙は最高級の紙とされているんですよ。

なぜ最高級なのですか?
 全国でも川上村周辺でしか採れない特別な白土を混ぜて漉いていて、作品の湿度を調整できる上、適度な重さと柔らかみがあって表装しやすいところが評価されています。



浩三さんは小さい頃から紙漉きの仕事をしようと決めていたのですか?
 子どもの頃、家族みんなが朝早くから紙漉きの仕事をしてるのを見ていましたが、当時は料理人になりたかったですね。でも仕事を具体的に考え始めた時、紙漉きも仕事として、やっていけるんじゃないかと思って。(笑)


仕事を始めて約27年、どう技術を受け継ぎましたか?
 職人の仕事は、見て覚えるものだと思います。父の仕事をよく見て技術を身につけようとしていますが、いつになったら納得できる紙が漉けるかなと思いますね。和紙をもっとムラ無く均一に漉きあげられるようになりたいと思います。


これから挑戦したい事はどんなことですか?
 こんな素材で紙ができない?というお客さんからの新しい注文にどんどん挑戦したいですね。例えば、楮(こうぞ)以外にも吉野の杉や檜(ひのき)を使った紙も作っています。木の色合いが出て、いい風合の紙になるんですよ。
 
吉野の杉を使ったレターセット


紙漉き体験もできるそうですね。

 はい。うち以外でも、このあたり『国栖(くず)の里』では、紙漉きの他に割り箸作りや陶芸などさまざまな体験ができる工房があるんです。その他にも、県内の小学校などで出張紙漉き体験授業も行っていて、楮の木を一緒に植えたり、卒業記念のしおりを作ったりして、和紙に親しんでもらっているんです。このような体験をもっと広げて、多くの人に和紙の良さを感じてもらって、和紙がもっと皆さんの生活に身近になったらいいなと思います。



お父さん、浩三さんが跡を継ぐことになって、いかがですか?
 伝統の技術を一代先まで繋ぐことができてうれしかったです。でもこの仕事も、商品が売れて、生活できなければ続けられません。時代に合って皆さんに使ってもらえる和紙を作っていって欲しいですね。

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