写真家 六田 知弘 氏 東京都在住 御所市出身
奈良を思う時、まず心に浮かぶのは、生家のある御所の六軒町通りとその向こうに見える葛城山の青い山並である。葛城山には何度も登ったが、山腹から見た御所の町並みや奈良盆地の景色を、今も鮮明に思い浮かべることができる。 絵描きになろうと思っていた大学時代、出会った土(ど)門(もん)拳(けん)の室生寺のポスターに、写真でここまで人の魂を引きつける事ができるのか、と衝撃をうけた。その後、土門や入江泰𠮷をはじめ、国内外様々な写真家の作品にふれる中、東(とう)松(まつ)照(しょう)明(めい)の「日本」という作品集を目にして、さらに大きな衝撃を受け、自分の進む道を決めた。 大和という独特の風土の中で培われた感性が、私の写真家としての仕事の根底にある事は疑いようもなく、ヨーロッパやアジアの史跡、東日本大震災の被災地、そして蓮の花を撮る時でさえ、幼い頃に奈良で見た原風景を無意識のうちに対象の中に見いだし、私はそこにレンズを向けてきたように思う。 私を辛抱強く見守り育ててくれた「培養土」のような、故郷奈良。奈良に生まれ、奈良に住まう皆さんには、誇りを持って、故郷が日本文化の原点の地であることを自覚し、未来にそして世界に開かれた奈良を築き、受け継いでいってもらいたい。
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