はじめての万葉集

はじめての万葉集

日本に現存する最古の和歌集『万葉集』をわかりやすくご紹介します。

vol.24 急峻な生駒越え 






本文

 ようやく厳しい寒さを抜け、暖かな日差しが多くなってきました。気候が穏やかになると、どこかへ旅に出たくなりますね。現在は便利で安全な乗り物が整備され、誰でも気軽に旅を楽しめますが、古代の旅はとても危険なものでした。家に残した家族と、もう会えなくなってしまうかもしれない旅です。
 『万葉集』巻15には、天平8(736)年に新羅へ遣わされた使者たちが、その旅の往還で詠んだ145首もの歌が収録されています。右の歌はそのうちのひとつです。左注(『万葉集』を編纂した人が付けた注)に「しましく私の家に還(かへ)りて思(おもひ)を陳(の)べたる」(しばらくの間家に帰り、妻に気持を伝えたもの)とあります。このことから新羅へ向けて大和を出発したものの、難波津(なにわづ)で出航待ちの期間があったことから、一時大和の自宅に帰ってこの歌を詠んだと理解されています。一旦帰宅ができる身軽さから、使者のなかでも下級に位置づけられる人物が詠んだ歌と想像されます。
 生駒山はご承知のとおり、奈良県と大阪府との境をなす山です。この山には暗峠越(くらがりとうげごえ)、辻子越(づしごえ)、十三峠越(じゅうさんとうげごえ)などいくつかの山越え道がありますが、奈良時代にどのルートが一般的であったのか定かではありません。ただ「石根踏む」と詠まれるほどけわしい山道だったようです。それでも愛しい妻に会うためならば、生駒山を越えて来ることさえもいとわなかった、と詠む心情のなかには、本格的に旅が始まってしまえば無事に帰って来られるかわからないという不安が見え隠れしているように思います。ほんのわずかな時間でも大切な人と過ごしたいという切実な思いが伝わる一首です。
(本文 万葉文化館 小倉 久美子)

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暗峠(くらがりとうげ)

 日本の道100選と日本の歴史的風土100選に選ばれている、奈良街道として古来から人が往来してきた峠。大阪中心部と奈良を結ぶ最短路で、初瀬・伊勢参りの人も通りました。大和郡山藩が敷いた石畳が残っていて、往時の風情を感じることができます。

アクセス 近鉄生駒線南生駒駅下車 西へ約

 

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